【うつヌケ・ネタバレ】うつになるタイプと抜け出す16パターン
作者、田中圭一氏は主に手塚治虫の絵柄(ほかにも本宮ひろ志や藤子不二雄、永井豪、西原理恵子、水木しげる、松本零士など)で下ネタギャグを展開する明るい作風の漫画家さんです。
2017年1月に出版された本書は作者、田中 圭一氏自身の10年間うつに苦しんでいた経験から出版された作品です。
田中氏は10年間のうつの寛解のきっかけが「1冊の本との偶然の出会い」でした。そんな経験から「マンガという形で“うつの人が偶然出会う一冊”を書いて世に出したい」と企画出版された作品です。
「2017年ユーキャン新語・流行語大賞」に「うつヌケ」も流行語としてノミネートされました。
うつは軽度から重症に至るまで日本国内に約100万人いる国民病と言っても過言ではない病です。
心の病ですから目に見えない分、完治や寛解の判断も難しいものです。
実際にうつ病になった人やうつ病の人と関わることのある人も大変な思いをしていると思われます。
仕事や勉強、人間関係など何かとストレスの多い世の中で、自分の心の健康を保つ事にも注意を払わなければならない時代です。
心当たりがある人もない人も、うつについて知る良いきっかけとなる一冊です。
こちらでは
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【うつヌケ・ネタバレ】うつになるタイプとうつから抜け出す16パターン
【うつ病】なる理由となった時の治療・対処方法
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【うつヌケ・ネタバレ】うつになるタイプとうつから抜け出すパターン
本書では田中圭一氏本人の経験とうつ病経験者17人のインタビューを漫画で紹介しています。
うつの症状
うつ寛解のきっかけ
(うつになる)その他外的要因
うつからの復活
※その他外的要因の有無は個人差があります
※うつからの復活…全員がうつが完治した訳ではありません
うつ病には一定の法則「じぶんが嫌い」という自己否定感の心理があります。自己否定する理由は人それぞれで、現状の自分に我慢できなかったり、過去のトラウマが原因だったり様々です。そんな自分自身を呪う思考を変えることが課題のようです。
■田中圭一氏の場合
職業:漫画兼サラリーマン
うつの原因:合わない仕事の会社に転職し、努力しても業績不振。自己嫌悪からうつ発症
うつの症状:恐怖、不安、脳が濁った寒天に包まれているような頭がボヤけた状態。医者を転々とするドクターショッピングをする
うつ寛解のきっかけ:
自分の「うつ」を治した精神科医の方法(河出書房新社)という1冊の本
自分に合わない仕事からのリストラ(退職)
その他外的要因…台風(気圧差)ホルモンバランス、血行、体温など(個人差)でうつ状態が再発する
うつからの復活:季節の変わり目のはげしい気温差でうつがぶり返す事に気づいた事で気持が安定し寛解していく
■照美八角氏の場合
職業:ゲームクリエイター
うつの原因:業績も良くまかされたプロジェクトが失敗=自己実現の失敗とプライドの喪失
うつの症状:自己実現への強迫観念、周囲の思いやりに気が付かない、ダウンし休職、復帰したが退職後自殺場所を探し全国放浪
うつ寛解のきっかけ:退職し壊れる前に逃げた。元ライバルが自分を認めてくれていた事への気づきと自身復活
■折晴子氏の場合
職業:編集者、「うつヌケ」担当
うつの原因:幼少期の親との関係によるトラウマ
状況が行き詰まると自分を引き算(我慢)する癖。傲慢なのに低い自己評価。仕事でヒットを飛ばした後、パワハラめいた暴君となるも業績不振となり自ら営業部への移動で後悔
うつの症状:不眠、早朝覚醒、じんましん、胃潰瘍、耐えられない不安感
うつ寛解のきっかけ:営業部への移動で編集者経験が生かし自己客観視したこと、念願の文芸編集部への移動
うつからの復活:登山の変わりやすい天気の変更を精神の変化に照らし合わせ気分の変化を受け流す認知をした
■大槻ケンヂ氏の場合
職業:筋肉少女帯ロッカー
うつの原因:元来ネガティブ思考。自己実現欲求は高い。思い付きのバント成功が不安を招く
うつの症状:バンドがヒットしたこと。不信と恐怖、社会事件からパニック障害、不安神経症、うつ、ヒポコンドリー性基調者※、心気症※、
うつ寛解のきっかけ:「うつ」=自分のエネルギーが心の闇に集中する事と気づき。気持ちを紛らわす(プラモデル、空手)
その他外的要因:空手で前向きになる一方、上級者の試合を見て恐怖心を抱くなど一進一退
うつからの復活:人と接すること、投薬と森田療法※
心の故障を治すくらいの気持ちで医者に行く
性格も含め自分を変える行動をする
うつを克服した人もいると認識し本で情報収集
時間が薬になると思う
※ヒポコンドリー性基調者…生への執着と死への恐怖が極端に強い性格
※心気症…自分が不治の病などと妄想に取りつかれる
※森田療法…あるがままの自己を受け止め、自分を俯瞰する視点を持つ
■深海昇氏の場合
職業:編集者
うつの原因:仕事の成功に自分の実力への疑心暗鬼、交際女性のウソ
うつの症状:休職し双極性障害Ⅱ型※で女性を口説くなど突発的行動をとる。不安と緊張
うつ寛解のきっかけ:ドクターショッピングをして改めて最初の医者を信頼することを決め腹が座る。投薬と時間
うつからの復活:西洋医学を信じ少しずつ治ったことを実感
※双極性障害Ⅱ型…長い「うつ」と短く軽い「そう」を繰り返す。突発的行動が目立つ
■戸地湖森奈氏の場合
職業:元高校教師、演劇サークル脚本担当
うつの原因:脚本のダメ出しとつつかれ役、学校の教育方針の不信と同調者を得られない状況
うつの症状:体が動かない、飲酒しないと寝付けない、死んだ目になる。投薬するも休職と復職を繰り返す
うつ寛解のきっかけ:カウンセリングで「理解者(支援者)が欲しい自分」の気持ちに気づく
うつからの復活:支援制度を使っても生き延びたいと思えるようになった
■岩波力也氏・姉原涼子氏の場合
職業:岩波氏/総務・姉原氏/営業部長
うつの原因:岩波氏/一人部署の激務と上司の不理解・姉原氏/反抗する部下
うつの症状:
岩波氏/気力ギリギリで働き上司からパワハラを受けていると感じた
姉原氏/ストレスの原因の部下にいちいち反抗されると感じた
うつ寛解のきっかけ:うつ中には物事の受け止め方、勘違い、自己の不理解と気づく
岩波氏/上司は自分に心配と恐怖を感じ、上司自身も心を病んだ
姉原氏/部下が不器用な性格で実は自分に憧れていたと知った
■佐々木忠氏の場合
職業:AV監督
うつの原因:幼少期から続く波乱万丈の人生。そのトラウマから突如発症
うつの症状:不安、孤独、息苦しさ、体の重さダルさ、気力がすべて失われる
うつ寛解のきっかけ:霊感の強いAV嬢から子供時代のトラウマを癒す事を進められる
うつからの復活:自己暗示(呪文を唱える)3歳の時、母と死別した自分自身を癒す作業、気血を流す治療法
■宮内悠介氏の場合
職業:小説家
うつの原因:プログラマー時代の管理職が向いていなかった
うつの症状:文字が読めなくなる、重度の肺結核、体が動かなくなる
うつ寛解のきっかけ:プライドを捨て10年音信不通の母親に助けを求め仕事を辞める
うつからの復活:治療中に小説家デビューし自信を取り戻す、健康的なナルシズムを取り戻す
その他外的要因:大勢の人前に出るとうつリターンする
■鴨川良太氏の場合
職業:ライター
うつの原因:元来メンタルが弱く被害妄想が強い。うつを自覚していない最も多いタイプ
うつの症状:被害妄想と周囲の誤解で動けなくなる一方で人に必要とされると寛解
うつ寛解のきっかけ:3,11で不安悲壮感が強くなった所を妻に怒鳴られて寛解
うつの復活:自分を客観視してくれる人が側にいたこと
■ずんずん氏の場合
職業:元ブラック企業OL
うつの原因:ブラック企業での労働環境、権威に対する恐怖心・社畜体質→「父が怖い」という成育歴
うつの症状:ミスが増える、文字が読めなくなる、自分を責める
うつ寛解のきっかけ:コーチングで「父に愛された自信がないのが原因」と言われる
うつからの復活:父から愛されていたことを知ったこと
■まついなつき氏の場合
職業:エッセイスト・占い師
うつの原因:自分で責任を抱えこみ、キャリーオーバーすること
1回目:出産願望を否定される
2回目:新たな相手と授かり婚・全てが順風満帆のまつい氏に反し夫は失業状態。引きこもった夫を言葉で追い込み離婚。シングルマザーのキャリーオーバーと夫への罪悪感でうつ再発。
うつの症状:子供を見て涙が出る、嘔吐、胃痙攣、パニック障害、子育てと仕事が出来なくなる
うつ寛解のきっかけ:子供も近所の人もさりげなく気を使い助けてくれた。
うつからの復活:自分の責任を減らしていった事
■牛島えっさい氏
職業:元コミケ準備会スタッフ
うつの原因:
1回目/心の支えの人の死、責任感、プレッシャー
2回目(双極性障害)/そうの時期に会社設立。失敗し借金でうつ再発
うつの症状:不安感、恐怖心、幻聴、自殺未遂、双極性障害判明
うつ寛解のきっかけ:趣味と理解のある家族
■熊谷達也氏の場合
職業:小説家(元中学教師)
うつの原因:自覚のないうつ「ステルスうつ」、両親が不仲だった
気仙沼の中学教師時代~仕事好き、頑張り屋、ストレスを見て見ぬふり
小説家時代~3,11被災地を舞台の小説を書き続けるうち「人々の記憶が風化」を感じうつ再発
うつの症状:突然布団から起きられなくなり1か月休職
うつ寛解のきっかけ:退職し一気に回復。小説家に転身。2度目のうつで気仙沼の元生徒に期待されていると知った事
■内田樹氏の場合
職業:フランス哲学研究社
うつの原因:責任感が強い、義理堅い、離婚、トラブル後の責任への重圧
阪神淡路大震災で被災後、落ち着いた半年後に再発
うつの症状:不眠、激しい無力感、震災のフラッシュバック、記憶の混濁、激しい自己否定感
うつ寛解のきっかけ:「葬式と結婚式を休め」で楽になる、趣味の合気道で脳を休ませ体に主導を置く
■一色伸幸氏の場合
職業:脚本家「うつから帰って参りました」2007年出版
うつの原因:原因不明
うつの症状:前ぶれもなく風景から色が消える感じ、治す気力、自殺の気力もなく寝たきり、「死にたい」ではなく消えてなくなりたいと思う
うつ寛解のきっかけ:2年間寝たきり、何もしない生活で少しずつ回復
うつからの復活:うつになってから10年後。徐々に仕事で自殺やうつ病事態を客観視する仕事ができるようになった
最後の一色伸行氏いわく「うつは心のガン」と言い、その症状の一つが「自殺」で「その人の心の寿命」と考えるべきと言います。一色氏はそう考えることでうつ病患者の家族や周囲の人に自分を責めないために「うつの正体」を知ってほしいと手記「うつから帰って参りました」を書いたといいます。
「彼女が死んじゃった」2004年漫画家・ドラマで残された人の思い
「配達されたい私たち」2008年小説・ドラマでうつ病の主人公が生きる意味を見つける物語
と、うつを客観視する事、時間がうつの薬になることを伝えています。
【うつ病】なる理由となった時の治療・対処方法
本書ではうつ経験者の16人の体験談が紹介されました。作者田中圭一氏はうつになる根本的理由は「自分を嫌いになること」と断言しています。自分嫌い=自己否定の感情が沸き起こる原因は人それぞれです。
うつの出始めの症状…何らかの理由や発端から
・自分が悪いと思い込む
・自信を失う
・自分を嫌いになる…などで自己否定感や絶望感からうつ症状が出始める
うつになりやすい人
・生真面目
・気が小さいが前向き
・責任感が強い
・自己顕示欲が強い
・幼少期などで辛い経験がトラウマ的にある
・繊細
・能力が高い部分がある
うつの症状の現れ方(個人差あり)
・不安、恐怖、不眠、無力感、孤独、ダルさなど様々
・人の話や文字などが頭に入らなくなる
・電車を乗り過ごしを繰り返し、目的地になかなかたどりつけない
・風景がくすんでグレーに見える
・買うものの色がやたらハデ
・被害妄想が強くなりイジメや責められているように感じる
・希死念慮
・うつ以外の症状(双極性障害、パニック障害、不安神経症、うつ、ヒポコンドリー性基調者、心気症など)
うつになった時の対処方法
①仕事・学校・その他人間関係
・仕事を辞める、休んだ方がいいタイプ→仕事をプレッシャーに感じている。自分を否定する仕事。
・仕事を続けた方がいいタイプ→仕事で自分を必要とされると感じる、達成感や仕事で自分の肯定感を感じられる
仕事を辞めるか続けるかは「その仕事・職場が自分を傷つけるかどうか」の判断で決まります。
労働条件の過酷さで肉体疲労からうつを発症する場合もあります。学生や家族、人間関係など属しているコミュニティが原因なら「辞める、休む、逃げる」という判断も視野に入れましょう。
②自分を癒す
・他人に気を使うぐらい自分にも気を使う
・自分を傷つけない
・どんな自分でも肯定できる
・辛さやトラウマを乗り越える作業(カウンセリングや心理療法など)をする
例〉子供のころの苦しい「自分の本心(感情)」を認める
③自信をつける
・小さな達成感や絆を感じられるモノを見つける→趣味、運動、家族、ペットなど
・些細な事でも「必要とされている」「役に立っている」と感じる瞬間を持つ
うつトンネルの出口
・周囲から「自分が必要とされている」と感じる
・自分が何が辛かったのか原因がわかる
・自分を客観的に見れるようになる
・自分の考え方の良し悪しも理解、修正できるようになる
・うつとの付き合い方がわかるようになり徐々に寛解していく
こんな医者はNG
「うつは一生もの」などうつ症状がある時に不安や絶望感を抱かせる発言をする
精神科医で「マンガでわかる心療内科」の原作者ゆうきゆう氏のうつ病アドバイス
うつになりやすい人の共通項(ネガティブ思考)
・認知が歪んでいる~ものごとを悪いほうに捉えがち
・いつも悪いことが起こる(悪い方向)に考えるクセがある
ネガティブ思考を治すには?
・物事を「客観視する」クセをつける→日記などを書く
①客観的事実:主観的感想=1:1で日記に書く
例〉起こった内容:それを自分はどう感じたか
②時間をおいてから(例えば1か月ほど)読み返し客観視する
時間を置くことで、事実内容を冷静に捉えられる
状況が変わっている事もある
その時の悩みがさほど大きなものではないと実感できる
一度良くなったうつがぶり返す「うつ突然リターン」との付き合い方
うつがぶり返したら無駄な抵抗はしない
・気分が落ちた時は「自習時間」その時にふさわしい事をする
・うつは若くエネルギーのある人ほど起こる。加齢でうつ症状も落ち着く
・うつの悩み自体を無理に解決しようと考えない
・新しい趣味など持つ
・ネガティブなのは危機回避能力なので自分は優秀と思う肯定感でよい
人は本質的に自己生命保持の願望「自己愛」があります。
・自分が好き
・肯定されたい
・必要とされたい
うつ病の場合自己愛が未成熟である場合もあります。
自己愛が未成熟→ありのままの自分を受け入れ愛することができない状態
自己愛の成熟→自分を肯定して愛することができる状態
さらに成熟した自己愛→自分以外の他者にも愛情を注げる
またうつ病は大きく分けると2分類され、双極性障害は更に3分類されます
大うつ病(大うつ病性障害)…抑うつ状態のみが出現
双極性障害
双極Ⅰ型→そう状態と抑うつ状態の両方が出現
双極Ⅱ型→抑うつ状態と「軽い」躁状態の両方が出現
特殊な「ラピッドサイクラー(急速交代型)→旧名「躁うつ病」躁の状態と抑うつ状態の2つの極端な気分の波が1年に4回以上あらわれるのが特徴
本来のうつ病である「大うつ病」と診断された人の五割強に何らかの人格障害(10タイプ)が認められていて、人格障害がベースでうつ病を発症するケースが多く、昨今の「うつ」の増加は、自己愛障害を抱えた人が増えていると言われています。
うつが再発する「自分嫌い」の原因「自己愛」は誰でも持ち合わせています。
「自己愛が未成熟でうつ…恥ずかしい!死にたい!!」なんて思わなくても大丈夫です。
全員が「自己愛未成熟」かどうかは定かじゃありませんが、日本には100万人のうつ病持ちがいるのです。
ダメな自分を認められる自己愛を成熟させて、自分嫌いを卒業しましょう!