【かみさまにあいたい/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント

こちらでは
2019年の「第65回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校中学年の部(三年生・四年生)の課題図書
『かみさまにあいたい』の「あらすじ」と読書感想文の書き方のポイントをご紹介いたします。


「かみさまにあいたい」(ポプラ社)
著者:当原珠樹・作 酒井以・絵
本体価格:1,200円 ページ数 183p
ISBN978-4-591-15849-4

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『かみさまにあいたい』あらすじ・ネタバレと感想・こんな子にオススメ 
『かみさまにあいたい』読書感想文の書き方のポイント

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『かみさまにあいたい』あらすじ・ネタバレと感想・こんな子にオススメ

【出版社内容情報】
死んだおばあちゃんとの約束をはたすため、
「神さま」との交信を竜也と試みる雄一だが…。
ひみつの友情と成長の物語!大好きだったおばあちゃんに、うそをついたまま永遠の別れを迎えてしまった雄一。
ひょんなことから、同級生の竜也といっしょに、「神さま」との交信を試みるが……。

心の傷を抱えた少年たちのひみつの友情と成長の物語。

読みやすさ ★★☆☆☆
感想文の書きやすさ ★☆☆☆☆

こんな子におすすめ
・大切な人や知り合い、など死んでしまった経験のある子
・やさしい子
・親子関係が上手く行ってないと思う子

【作者のねらい】
・友達との出会い、経験の中での何を感じ成長するか
・ウソをつくと、どんな気持になるか?
・傷ついた時、どうやって気持ちを切り替えるか?
・家族とケンカしたらどうやって仲直りするか?

毎年、読書感想文コンクールの課題図書に選ばれる作品のジャンルに「友情モノ」があります。
本書はそれに該当します。

【かみさまにあいたい】~あらすじ・ネタバレ~

【登場人物】
藤本雄一:おばあちゃんに「あるウソ」をついたまま永遠の別れを迎えた事を悔やみ、約束した「強くてまっすぐな男」になることを夢見ている。
主体性がないので強引な竜也に最初は振り回される
小松崎竜也:同じクラス(一人学級崩壊)の問題児。母子家庭でネグレイト気味のさみしさを「神さま」が癒してくれたのでまた交信したいと雄一を誘う
佐藤ナンシー:通称殺人鬼。隠れ家の所有者でドイツと日本のハーフの形成外科医
竜也の母:離婚で母子家庭で看護師。ナンシーと同じ病院勤務で常に忙しい。

①プリンのおそなえ
半年前に死んだおばあちゃんのお墓参りに来た雄一は、偶然同じクラスの竜也と鉢合わせる。
②竜也のこと
竜也は授業態度も悪く先生も手を焼く問題児。
ある日、抜け出した竜也のために自習になったところを雄一は河川敷の草むらに竜也がいることに気づく。
③竜也のひみつのあな
雄一が河川敷に行ってみると、竜也が穴の中にいた。
昔、神様と会ったことがあり「神様は女で、やさしそうで一緒にいるだけでほっとする、幸せな感じ」
になるのでまた会えるように交信しているのだった。
だが交信できずにクラスメイトに八つ当たりし、
神様のイラストを見せながら息詰まってるとぼやくので
「神さまって天国にいるから高い所いけば?」とアイデアを出したところ
神さまに横断幕を掲げることを雄一もなぜか手伝う事になった。
聞こえてきた、保育園の『お帰りの歌』におむかえが一番最後でイヤだった事や
今もいつもひとりだと話した。
④かくれ家へ
横断幕作りのため、放課後に竜也の知ってるかくれ家に行く事にした。
途中、やめた柔道教室の前を通りバツが悪い雄一は亡くなったおばあちゃんが
柔道好きでいつも見学に来て、帰り道にコーラを買ってくれてたことを思い出しブルーになる。
⑤第一発見者
かくれ家は洋館で古めかしく不気味だったが
横断幕を作りながら竜也が神様と会った時の話した。
3年前、誕生日なのにお母さんが夜勤で帰らず一人こたつでTVを見ながら眠ってしまった。
その時、金縛りにあいながら女の神さまが現れ
頭をなでながら「いつもそばにいてあげたい」
みたいなことが聞こえて、朝起きたら好きなカステラがあった、と。
竜也はどこにも居場所がないから神さまのいる天国につれていってもらいたい
というのが願いだった。
雄一は死んだおばあちゃんにうそをついて、期待にこたえられなかったので
「強くてまっすぐな男になる」が願いだった。
完成した横断幕をかけている時、偶然頭がい骨を見つけ、あせっていると
家の持ち主らしい外人のような女の人が現れ、ごまかしながら逃げた。
竜也は「相手は殺人鬼でしゃべったら殺される」と二人の秘密にすることにした。
⑥大混乱
翌日、頭がい骨のことでボーッとしていた竜也は神さまの絵をクラスの男子にからかわれ激怒し、止めに入った雄一は大たい部骨折した。
⑦なぞのお医者さん
入院になった雄一の主治医はあの洋館の持ち主・佐藤ナンシーだった。
しかも竜也の母親はこの病院の看護師でナンシーと知り合い。
竜也は毎日のように放課後遊びに来て、ノートまでとって来てくれた。
ナンシーから竜也の母親が仕事でネグレイト気味なのを悩んでいると聞いた事を雄一は話せなかった。
⑧だれにもいえない気もち
マンガを読みに行こうと竜也と小児病棟と行くと担当看護師の母親に
「小児科患者以外、立ち入り禁止」「患者の小さい子は夜一人でねなくちゃいけないのよ」
と怒られる。
竜也は「小児科の患者でなくても、夜ひとりでねなくちゃ行けない子供もいるんだぜ」
「どうぞ患者様を大事にしてくださいね」と嫌味を言った。
日頃『いい子にしててね。…あっちで待っててね』と母親は言うが
「いい子ってなんだよ。あっちてどこだよ、おれは、いったいどこにいればいいんだよ」と
雄一に気持ちを吐き出した竜也。
雄一もおばあちゃんの事でトラウマがあり
ナンシーに、認知症になったおばあちゃんを柔道教室に連れて行くのが
恥ずかしいので「今日は柔道の日じゃない」と毎回嘘をついて騙し
連れて行かないまま死んでしまった事で自分を責めている事を話した。
ナンシーは「亡くなった人は、空のどこかで私を見ていてこの気持ちをわかってくれている」と
雄一を安心させた。
そして雄一が退院する日、二人を横断幕を完成させることを名目にかくれ家に泊まりで招待してくれた。
⑨ふたたびかくれ家へ
二人でナンシーの家に行くとナンシーが籐のイスを斧で叩き切る姿に唖然とする。
横断幕もうまく取り付けることもできた。
ナンシーが休憩に竜也のお母さんが作ったカステラを出してきて、食べた竜也は言葉を失う。
雄一は「カステラの神さまって竜也のお母さんだったりして」というと竜也はいきりたった。
ナンシーが壊した籐のイスは亡くなったお父さんのモノだがバーベキューのタキギにしてしまった。
なぜかと言うと、昔お母さんが「天国のお父さんに送ってあげる」と
家族でお父さんの服を燃やした事でお父さんも喜んでいるような
思い出が永久保存されたような気持ちの整理ができたからだった。
その日から神さまとか天国とか目に見えないものを信じられるようになった、とナンシーは話した。
雄一は大事な誰かの事を考えると、人はお祈りをせずにいられないんじゃないだろうかと考えていた。
竜也は横断幕も燃やして神様に届けて、願いを心に永久保存しようと言い出した。
竜也は「もう一度会いたいです。会いに来てください」と空に向かって叫び
雄一は手を合わせて「強くてまっすぐな男になれますように」と
頑張る事を近いおばあちゃんに空から見守ってくれるよう祈った。
雄一は竜也にお願いするだけじゃなく、自分でも何かしなくちゃいけない気がするから
もう一度柔道をやることを話し、竜也は天国にはオマエと遊べなくなるから行かないかもと、照れくさそうに笑った。

~大人から見た感想と解説~1912文字

「傷ついた心の癒し」がテーマのこの作品
傷ついたといっても片や自分の見栄のために結果傷ついた子と他者によって日頃から傷つけられている子というジャンルの違う問題を扱っています。作者自身その自覚があるのか?着地点がぶれて完成した作品のように感じられます。
キャッチ―なタイトルや装丁にひかれて本書を選び、感想文を書くには非常に難しいと思われます。

主人公、雄一は亡くなった祖母に自己保身のためにウソをついて騙したまま死んでしまった自責の念に苦しみ、自分を恥じています。
柔道好きで教室に付き添ってくれた祖母を「認知症になった姿を見られるのが恥ずかしい」との理由で連れて行くのをやめたからです。その後柔道も続けられなくなってしまいます。

母子家庭の竜也はガサツで乱暴で学校でも問題児。そうなった理由は母親のネグレイト気味な仕事優先の生活にあります。幼いころから夜勤看護の仕事を優先させるため孤独感から竜也はグレているのです。一度だけ「神様の愛」に包まれた幸福な記憶から今は死んでもいいから「天国につれていって」と願っています。

二人の共通点は「本の紹介では心の傷」と言い、ナンシーの存在からも喪失感としたいところでしょうが、本当の共通点は孤独感だと感じ取れます。
ただし、雄一はおばあちゃんの死というより嘘をついたことによる自己嫌悪による孤独感です。
純粋におばあちゃんの死を悼んでいる喪失感より「プリンのおそなえ」も生前のおばあちゃんへの報われない懺悔に近しく感じられます。
竜也は母親と親子間の愛情や信頼関係の喪失です。小学3年生ですが小1から放置されることが多く、小児科看護の仕事を優先させている事が竜也にとっては理不尽さを感じ、心の溝は深まるばかりで重症の孤独をこじらせています。児童養護施設に預けられても仕方がないレベルです。

ナンシーという2人の心を癒してくれる存在に出会い
竜也の母親が本当は竜也にもっと愛情を示したいと思っている事を伝えた事で、「天国に行きたい」という希死念慮や自暴自棄から解放されそうな予感を感じさせます。竜也は自分は母親に愛されていると感じ取ることで孤独感を払拭します。
雄一はナンシーの言う「亡くなった人や神様の存在を信じていて、こちらの気持ちはわかってくれている」などの「気持ちの整理の仕方」について聞き、亡くなった大切な人の事を思うと祈らずにいられないのが自然であることや、約束を果たすには神様に願うだけでなく、自分で動く事が大切だと気付き前向きになるのでした。

「心の癒し」に何が必要か?との気付きを求めるのでしたら「許し」になるのだと思われます。
竜也は母親を許すことで、恨みという孤独から解放されました。
雄一は自分の罪を許す事と祖母との約束を守る為に目標に向かう前向きさを身につけました。
「許す」とは怒りの執着から自分を解放する事です。いつまでも怒り続けることは自分を不幸にすることで孤独を生み出します。「許し」は相手を許すだけではなく、結果自分を幸せにすることなのです。

本書のナンシーの言葉から読者である小学生がここまで答えを導き出すことができるのか?甚だ疑問です。「許し」の理由づけとして「人は完ぺきではない」という概念も取り入れなければいけないからです。
竜也の母親を「本当はカステラを焼くような愛情を持っているから」とネグレイトを許す
雄一の痴ほう症のおばあさんが恥ずかしいという理由で来ることを拒む嘘を許す・・・なぜなら人は完璧じゃないから。
それに、きっと自分の事を愛している人、見ていてくれる人はいる、天国のおばあちゃんも見てるから孤独じゃない!祈れば通じるし大丈夫…というのも随分ご都合主義です。小学校中学年向きの課題図書とは言え、まだまだ自己中心性が生きるモチベーションである年頃の子に他者を許して癒される感覚を受け入れろ、そして読書感想文の課題図書がスピリチュアルテイストであることもいかがなものか?と首をかしげたくなります。

昨今では、学校で暴れる竜也の寂しさを周囲が理解し許し受け入れる。
痴呆症でも尊厳を守るために、おばあちゃんの柔道を見学したい自由を許す。
そういう社会になってきていると思われます。
残念ながら、ナンシーは竜也ではなく竜也の母親の理解者です。亡くなったおばあちゃんに関しては雄一が誰にも話してない一件ですので、尊厳は守られずに亡くなりました。ここから垣間見えるのは「弱者は丸め込まれる」という縮図です。
反骨精神をたぎらせる必要もありませんが、「許す」という行為は前後不覚になるか一程度の覚悟を持つかが必要になりそうです。
真面目に考査すると読書感想文にするには実に難しい作品です。

こちらのブログも参考になります。
『かみさまにあいたい』読書感想文の書き方の例文【3作品】
 

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【かみさまにあいたい】読書感想文の書き方のポイント

読書感想文・用紙と字数のルール その他の詳細

原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
文字数については下記のとおりです。
小学校中学年の部(3、4年生)本文1,200字以内 
※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

 
『かみさまにあいたい』の読書感想文のポイント
■自分が雄一・竜也の立場だったらどうするか?
■竜也は家や学校どこにも居場所がないと言った理由は何か?
■竜也はどうしたら居場所ができるか?
■雄一はどうして柔道を止めてしまったのか?
■「強くてまっすぐな男」とはどういう人か?

2019年第65回 青少年読書感想文全国コンクール
~小学校中学年の全課題図書~

【読書感想文2019】小学校3,4年生課題図書あらすじ・簡単おすすめ本の選び方


【子ぶたのトリュフ/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント(さ・え・ら書房)
著者:ヘレン・ピータース・文 エリー・スノードン・絵 もりうちすみこ・訳
本体価格:1,400円
ISBN978-4-378-01524-8
 


【そうだったのか!しゅんかん図鑑/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント
著者:伊知地国夫・写真
本体価格:1,300円
ISBN978-4-09-726777-5


【ハチごはん/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント
(ほるぷ出版)
著者:横塚眞己人・写真と文
本体価格:1,500円
ISBN978-4-593-56337-1

ちなみに2018年の課題図書は以下の通り

 
「すごいね!みんなの通学路」…通学路について(世界の、自分の)調べる
「森のおくから」…動物の行動、山火事についてなど調べる
「最後のオオカミ」…自分のご先祖様について調べる
「レイナが島にやってきた!」…友達との付き合い方と自分との対比 

「レイナが島に…」は「かみさまにあいたい」同様に友達との経験の中での成長物語ですが、内容は全く違います。そして「レイナ…」も読書感想文を書くには非常に難しい本でした。
ですが、昨年の課題図書の感想文を参考にすることはできますので、困った場合はお勧めします。

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