【廉太郎ノオト】あらすじ・ネタバレ・読書感想文書き方と例文

こちらでは
2020年「第66回 青少年読書感想文全国コンクール」
高校生の部の課題図書です。
『廉太郎ノオト』の
・「あらすじ・ネタバレ」
・読書感想文の書き方のコツ・ポイント
をご紹介いたします。

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『廉太郎ノオト』あらすじ・ネタバレ・読書感想文おすすめ度 
『廉太郎ノオト』読書感想文・書き方例文とポイント 
【2020年読書感想文】高校生の課題図書 
うんちく・読書感想文の書き方の“こたえ”

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『廉太郎ノオト』あらすじ・ネタバレ・読書感想文おすすめ度

読みやすさ ★☆☆☆☆
感想文の書きやすさ ★★☆☆☆
こんな人にオススメ
・音楽が好き、詳しい
・伝記モノが好き
・読書好き

※動画での滝廉太郎と小説での瀧廉太郎は人物像や人生考察がずいぶん違います。
これは読書感想文なので本書を参考に感想文を書きましょう。

内容紹介
廉太郎の頭のなかには、いつも鳴り響いている音があった――

最愛の姉の死、厳格な父との対立、東京音楽学校での厳しい競争、孤高の天才少女との出会い、旋律を奏でることをためらう右手の秘密。
若き音楽家・瀧廉太郎は、恩師や友人に支えられながら、数々の試練を乗り越え、作曲家としての才能を開花させていく。そして、新しい時代の音楽を夢みてドイツ・ライプツィヒへと旅立つが……。「西洋音楽不毛の地」に種を植えるべく短い命を燃やした一人の天才の軌跡を描き出す。

「廉太郎ノオト」あらすじ・ねたばれ



「新聞屋様」と書かれた招待状がきた。
そこには“滝廉太郎君の遺作発表”とあり
ムカつくその名は、自分がいくら手を伸ばしても
届かないものをやすやすと手に入れたが
何も果たせぬままあの世に旅立った奴だ。
出迎えたのは、ベルリン留学し日本を牽引するバイオリニスト幸田幸
新橋銀座の給金労働者のような鈴木毅一
2人は新聞屋の事を憎々しいが、瀧の遺言で
“新聞屋さんに”この曲を聞かせて欲しいとあったという。

第一章

瀧廉太郎は幼い頃より10歳離れた姉・利恵との
琴の稽古が好きだった。
「栄えある瀧家」を誇る父・吉弘はそれを良ししないが
従兄・大吉がかばってくれていた。
11歳のころ父は地方赴任したが
労咳(結核)の利恵と小学校卒業前の廉太郎だけ
東京に残り2人琴を弾くが廉太郎の方がすぐ上達した。
姉は我が身を悲嘆し羨み
「もしあなたが音楽に関わり続けてくれたなら、
あなたの奏でる音色の中に生き続けることができるのに」と
最後の言葉をはき死んだ。
11歳の廉太郎が葬儀をあげ、姉の道具を全て燃やし両親のいる竹田に越した。

竹田の小学校では風琴(オルガン)を独学で弾きこなし
父に止められた大吉が送ってきたバイオリンも独学で
密かに城跡“岡城”で弾いた。
姉は音楽好きでも才能がなかったと哀れみ
『姉さんの分も音楽をやりたい』と涙した。
小学校卒業後の進路も大吉が父を説き伏せ
東京の音楽学校進学を決めさせた。

音楽学校入学前の1年間予科学校での選抜はきびしく9割落第する。
大吉の家で居候し勉強を習い生徒たちの熱気に意気がしぼみかけていた。
ある日上野山で小袖の少女が弾くバイオリンが
鳥のさえずりのような『G線上のマリア』に
実力の差に絶望しつつ、その凄みに鳥肌がたった。
少女には「不埒ね」と立ち去られたが
影響を受けた廉太郎のバイオリンは格段に上達した。

6月に東京音楽学校で予科卒業見込みのある
廉太郎と石野タカシ、杉浦チカは演奏会の聴講を許され
異国人ケーベルのピアノに口を利けなくなるほどの衝撃受けた。
才がないと嘆き、命数尽きかけた身を呪いながら死んでいった姉。
自分の志には死した人間の怨念がこびりついているのも自覚し
滝廉太郎・齢16.現役最年少の東京音楽学校本科生が誕生した。

第二章

本科1年廉太郎のピアノは出来は良いが平板で味気ない。
ピアノ自習教室には生活指導の草野キンに隅で見張られつつ
廉太郎、杉浦チカ、石野で集まる。
廉太郎だけ専攻楽器を決めかねていた。

その頃、バイオリン講師の幸田延が
留学から戻り凱旋後援会が開催された。
独奏、2曲目はクラリネット海軍軍楽隊教授吉本光蔵との共演
3曲目ピアノのケーベルとの共演に人々は息をのんだ。
ふと会場に上野山で会ったバイオリン少女がいると気づいた。

日曜日、キンも呆れぎみにピアノ室のカギを渡してくれ
1曲弾き終えると、後ろから幸田延が拍手をし
「筋がいい」だが間違えているとお手本を見せてくれた。
1年の秀才・廉太郎の存在を延は認識していて
専攻はバイオリン以外にした方がいいという。ただし
「人生の全て音楽にかけられるなら個人レッスンしてあげよう」
と延は廉太郎に重奏をしてくれた。

専攻を迷っていた廉太郎だが、杉浦チカから教わった
教会のアップライトピアノで「自分は協和音が好き」と
気づきピアノ専攻を決め、さっそく次の日曜に
幸田延を尋ね、彼女の兄の家に行くと
兄とは小説家の幸田露伴で、妹は上野山でバイオリンを
弾いていた少女・幸田幸だった。

幸田露伴から泊れと酒を飲まされ
幸は廉太郎が延と重奏をしたと聞き憤怒。
バイオリンを弾いて見せた音色は怒りであふれ
しかも廉太郎がそれに合わせて歌うと更に怒り
延の「2人合せて60点…幸は10点」に泣きながら奥に引っ込んだ。
「幸はよく見られたい思いが強く歪…協和音を作れない」
「君は自分がなさすぎる…個性を表に出せ」
延は廉太郎は幸と共に日本に西洋音楽を根付かせ
発展させてほしいと期待した。

廉太郎とチカ、石野、幸田幸も実力者として
12月の学内演奏会に選ばれた。
演奏会当日「あなたには負けない」と言い放つ
幸の重奏は激情が増し共演者も委縮して調和を失っていた。
幸の独奏には人に無理矢理聞かせる津波のような演奏でも
今日一番の拍手を得た。
反省会で小山は幸を称賛したが幸はうつむき、延の表情は不安があった。

第三章


授業で物足りなさを感じている廉太郎に
担任・小山作太郎は研究科の作曲講座の
受講するよう勧められていた。

美術学校とのテニス対決で活躍した廉太郎に
1年の鈴木毅一が廉太郎の作曲を小山が投稿した
音楽雑誌『日本男児』の楽譜を見たと声をかけて来た。
気に入らない曲の話題をふられ、しかも
「子供用唱歌を作りませんか?」との誘いも乗り気になれなかった。
直後には同年代の青年から「テニスとはいいご身分だ」
「お前の演奏はうわべを取り繕っているだけの張子だ」
と投げかけられ、彼がたちの悪い新聞屋であると知った。

延からはもう教える事はないと言われるが
自分は幸に届くレベルにないと訴えると
「課外授業をする」と称し、鈴木提案の男女混合テニスをすることに…。
そこに現れた本科3年の由比くめから幸と仲がいい事や
廉太郎の書いた『砧』はおもしろいがこれから唱歌は言文一致になると
立ち去った。
鈴木はくめを紹介した理由など尻尾をつかませない。

石野は居酒屋で「卒業後研究科に残りたい」と言い
廉太郎も親を説得した方がいいと言われ、3年ぶりに帰省した。

オルガン専攻の島崎赤太郎は「形から入れ」と洋服貸してくれたが
父・吉弘は2回り小さくなり覇気もしおれた老人になったが
「大分に戻り教育者になれ」という。
父の地平はあまりに狭く「音楽は己の一生かける価値がある」と
震え声で言うと、バイオリンを目の前で弾いてみろという。
『G線上のマリア』を弾いたが「理解できぬ」
「二度と敷居をまたぐな」と、学費は最低限しか出さない
もののとりあえずの許しは出た。
姉の墓参りをし、母は父も祖父の反対を押し切り今があり
「思う道で名を成せば認めて下さるはずよ」と
幾分か心が軽くなり東京に戻った。
大吉は「おじさんをどう納得させた?」と喜び
足りない学費も出してやると言う。

その日の延のレッスンには幸と島崎赤太郎、小山作太郎もいて
音楽学校独立で学費は作曲すれば出せると言う。
日本の音楽界のためにも2人の将来に期待していると
作太郎が言うと幸は廉太郎と同じレベルにするな、と
また重奏を挑んできた。
廉太郎は「G線上のマリア」で幸に追い詰められ
途中で指が止まり幸は勝ちほこり出て行った。
「斬りつけるような音に歯が立たない」というと
延は「この国に音楽を根付かせる人材が必要だが
幸は根ごとまわりを枯らしてしまう」
伸び悩む廉太郎の“幸と同じ高みに登りたい”に
延は日本で一番のピアニスト本郷の帝都大学、哲学科の
ラファエル・フォン・ケーベルに会わせた。

延の記念公演でピアノ重奏した異国人は
麹町協会のピアノで試された廉太郎に
「君のは演奏でなく傍観だ…楽器は人間の手の延長だ
頭でもある、目の前の楽器を己の一部として取り込まねばならない」
具体的なただし方は指導しないケーベルの事を
延は「ケーベル先生の言葉で背骨を作れ」という。

あと半年で本科終了の3年時にチカは結婚すると言い
「瀧君と行きたかったなぁ研究家」の言葉に草野キンは
「色男だね」と笑うが廉太郎は意味が解らずピアノの事しか頭にない。
キンがうっかりピアノの鍵盤に倒れ掛かり
大きな音が響いたことで体重を使っての演奏に気づき
『夜想曲二番』を汗だくで弾いた。
キンはあんぐりと口を開け涙を流し
廉太郎は答えを見つけた気がした。

廉太郎は主席卒業生総代として代表で証書を受け取り
答辞代わりのピアノを弾いた。
卒業式が終わりピアノ室には石野とチカがいて
チカは女学校教職に、石野は成績が及ばず研究科に
進めず学校赴任となった。
石野は泣き笑いで「音楽の頂に手が届かなった」
「音楽とのかかわり方を考える」との2人の未来が輝くことを祈った。
廉太郎は祝賀会に行く前に最終試験として延やケーベルの前で
ピアノを弾いた。
全身から汗がほとばしった演奏にケーベルは感動し
「君に期待する」と自身も音楽学校での講師を引き受けると決めた。
明治31年、滝廉太郎は19歳で研究科へと進んだ。

第四章


研究科となり翌日のケーベルの講義課題曲の練習中に
鈴木毅一があらわれ9月の明治音楽祭参加を激励し
講演が上手くいったらまた来ると帰った。

ケーベルからドイツ音楽重力奏法をものにしたと褒めるが
新聞各紙から「ケーベルの悪いところまで模倣している」
と厳しい反応。
雑音に耳を貸さず思索、哲学、技術の勉強を重ねよと
教授された時、研究科3年になった幸田幸があらわれた。
相変わらず辛辣な幸にケーベルは延からたのまれたので
「合奏をしてほしい」ピアノが主旋律のモーツアルトの
『ピアノとバイオリンのためのソナタKV380』を指定。
挑みかかる演奏の幸に「まるで2人の対話(口喧嘩だが)のよう」
と言いつつ「幸は今日これ以上レッスンして意味がない」と
突き放した。
泣きそうな顔で帰った幸の事をケーベルは
「天賦の才が溢れすぎ…彼女がすべきは技術を研ぎ澄ますことではない」
廉太郎には「幸の肉薄した実力者(当て馬)として期待している」
と言い幸がいるから廉太郎も成長できた事に喜びを感じた。

明治音楽祭では観客席の幸に気づき、
なぜか気の散りそうな演奏となった。
新聞屋からは「精彩を欠いてた」と言われるも
鈴木毅一からは出版社副社長を紹介され
「作曲集を出さないか?」と誘われた。
鈴木は自分は音楽の才は乏しいが、顔が広いので
こういう形で音楽に貢献できるし、東くめも参加するという。
ケーベルは廉太郎の伸び悩む原因「旋律の弱さ」を
作曲で埋められるかも作曲活動を奨励した。

その頃、下宿先の大吉一家と麹町に引っ越し
大吉は謝りながら自転車を買ってくれた。
また新聞に「東京音楽大学が留学生を予定している」と
記事が出て候補者に瀧廉太郎の名もあった。

学校より事実だが小山は辞退し
島崎は本場パイプオルガンを学びたいという。
「まだ日本で学ばなきゃいけない事がある気がする」
との廉太郎に幸は
「乗り越える事…技術ではなく心持とか態度とかーそういう部分の傷でしょ」
と見透かし「わたしに足りないモノは日本じゃ見えない
邪魔だから辞退して」と立ち去った。

新聞屋からは
「幸田延教授が妹可愛さに国費留学候補にねじ込んだ」
となれば男の心象も悪いしいいネタになると
怨念を言ったとおり各新聞で特集では
女は不適格と差別的論説も掲載された。
結局廉太郎は留学辞退した。

ピアノ室で鈴木毅一がピアノを弾いていて
「私は万につけ、8割がた腕はあげられるが
2割突き詰めるられない器用貧乏」と
作曲参加の返答を聞いてきた。
受託してから、2人で出版社に顔を出し
結婚して東になった由比くめの旦那の提案で
子供向け歌唱集を作ろうと誘われる。
「口語体で身近なテーマの歌唱を瀧君のような
新しい感性を持った人と組んで作りたい」という。
また幸を心配し彼女の立派な家系から受ける重圧に
密かに苦しんでいると聞かされる。

その幸はひと月後、留学生に選ばれた。
廉太郎は延の家にお祝いに行くが
幸は新聞のバッシングに落ち込み荒れていた。
廉太郎は「音楽家は音で語らったほうが早くないですか?」と
『ピアノとバイオリンのためのソナタKV380』の
重奏に誘った。

しおれていた幸のバイオリンは次第に熱があがり
廉太郎は天才の二文字が頭をかすめ「ずるい」と
思わず口を突いて出て妬みが指先に宿りピアノの
音色がシャープで清涼なものに変わった。

幸の目にも光りが戻り
「あなたの留学祝い確かに受け取った。
深く考えるのがバカバカしくなった。
あなたは自分が伸び続けると信じているんだもの」
「屈託がないから近くにいると腹立たしくなるけど
…音の鳴り響く場だけは純粋だと信じられる」と軽やかに出て行った。

延は一皮むけた幸の事に礼を言ったが
廉太郎も彼女がはだかる壁だったおかげで
成長できたとの思いがあった。

帰り道また新聞屋に声をかけられ
血が逆流する思いだったが
「あの記事の主筆の本音
“なぜ女に留学できて、俺ができないんだ”
って汚い感情は、真実としてこの世に転がっているんだよ」と
いやらしく笑い消えて行った。

幸は出発日時も伏せていたが
鈴木が調べ廉太郎と2人おしゃれして見送りに行った。
「必ずや幸さんに追いつきます」
「まさか餞別が果たし状なんてね」
幸はさっそうと留学へ旅立った。

第五章

研究科2年、廉太郎はピアノ講師に任命された。
講師であっても若い廉太郎は年上で横柄な態度の生徒に
辟易する事もある。
東くめは「ものを教えるのは自分の声の届かない生徒を
許すことでもあるから」諭しつつ
廉太郎の曲は明るい長調の音階が少なく
哀愁が強いと指摘する。

作曲作業も右手の旋律の弱さの改善にならず
ケーベルから「心の問題」と突き放され
鈴木毅一も年明けから宮崎師範学校で
教職に就き、資金問題で学校を辞める生徒もいるので
責める事は出来なかった。

鈴木不在で出版社とも廉太郎が組曲『四季』を
進め「秋」の作詞者がみつからないと話していると
ピアノの練習がしたいと美しい少女が来た。
教員になったチカから有望株の教え子・柴田環に
ピアノを教えて欲しいといわれていたが
繊細な音色のピアノを弾く彼女こそが柴田環だった。
その優秀さから「特別扱い」の是非が問われたが
「強弱が弱さ改善のドイツ流演奏技術を使っていない」
との指導も「はしたないじゃないですか」と環はいう。
廉太郎は自分に言い聞かせるように
「変わる事を恐れちゃいけない」と教えた。

小山に呼ばれ応接室に行くと
幸田延、島崎赤太郎、校長の渡辺龍聖がそろい
「瀧君10月より3年官費でのドイツ留学」を
学校雇人として行く事を命じられた。
制作中の『幼稚園唱歌』『四季』を下りれないと
説明し半年延期の4月に行くことになったが
本音では自己の旋律の弱さを克服していないことに
ひっかかっていた。

大吉は留学話を喜び、新橋のビアホールに連れて行った。
「おじさんもおまえのことを許してくれるさ」には感激したが
正直に天井にぶつかっていて、大吉はそんなことはないかと相談した。
大吉も打ちひしがれることもあるが、家族の支えと
「設計が好きで、理論や理屈を守った上で己の創意工夫できるのがいい」
と、また仕事に行くと別れた。

帰り道、人だかりのさわぎの中で新聞屋が芸人と
三味線をめぐりもめる声が聞こえた。
若い衆を連れた親分然とした男がやってきたので
つい新聞屋をかばってしまった。助ける義理はないが
「あなたの三味線を持つ手があまりに優しかったから」と
答えた。

新聞屋は舌を打ち千住の裏長屋の自宅へ連れ帰った。
幼い妹と病弱な母、家宝の三味線を見せられた。
新聞屋の家系は元は藩のお抱え三味線師だったが廃藩置県で
路頭に迷ったが三味線は仕込まれたという。
その腕は本腰を入れたら舞台に立てるほどで
裕福な音楽学校生に敵対心を露わにするのも
音楽への熱意も持て余す鬱屈した思いからの行動が理解できた。
新聞屋は音楽は金持ちの余技というが
廉太郎は音楽が貧富の差を分断するものに思えなかった。
「僕はいつか西洋音楽をこの国に根付かせます」
鼻であしらわれたが生活のために手を荒している
新聞屋の妹のような少女にも届けたいと決めた。

ついに『四季』秋の曲の作詞も頼まれてしまい頭を抱る廉太郎に
即興で弾いた曲を環が譜面に起こさないのはもったいないという。
また学内で作曲公募を行うようだと教えられ一月後
小山からロクな作品が集まらないから参加して欲しいと懇願される。

追い詰められる廉太郎はピアノの前に座るのも憂鬱になり
重圧で胃痛も感じる。
バイオリンを持って『荒城月』の詩の紙を取り出し
竹田の岡城で一人バイオリンを弾いた日々を思い出し
廉太郎は、かすかに姉の代わりに音楽を学んでいる自負があった。
だが上野山で幸の演奏にあこがれたあの日から自分の音楽を
志すようになったのだと思い出し
「だから僕の旋律を形にしたい」と思った時
廉太郎の霧が晴れ、留学に行く決心がついた。

大吉に言うと「謝らなきゃならないことがある」と
廉太郎に協力してきたのは大吉を利用しようとした吉弘への
復讐心のためだった。
今は廉太郎の成長が楽しく利用したことを謝りたかったといった。
廉太郎は大吉に感謝しかないが、大吉の背中は小さくなっていた。

ケーベルは廉太郎の右手のクセが治った事に驚き
環が勧めた曲を『メヌエットロ短調』と名付け弾いて聞かせた。
ケーベルは「君は面白い、作曲家としてやっていける」と
世界最高峰の一角であるドイツライプツィヒ音楽院の入学推薦状をくれ
「最高峰の学府は、最高の人材がそろう場所だ」と応援された。

東くめも廉太郎が長調ばかりの曲を作った事に驚き
『お正月』は特にいいと絶賛しすべての作曲を終えた。

第六章


留学した廉太郎は児童文学者の巌谷小波に会い
「覚悟して行くといい、夢の場所は、夢であるからこそ光り輝く」
との真意を飲み込めなかった。

数か月、定宿ホテルで音楽院受験に供え
その間、ベルリンの幸田幸に会いに行くと
かつて幸田延と共演した海軍クラリネット奏者・吉本光蔵がいた。
幸は早速重奏に誘い幸は大きな壁を越えていて
吉本は「鳥肌が止まらん」と絶賛
幸は涙を流し廉太郎に
「右手の弱さを克服したのね…あなたほど音楽的な人見たことない」
帰る廉太郎に幸は温かな響きで「またやりましょう」と言った。

二か月後、音楽学校に合格したが唯一
対位法だけが新鮮以外は授業は退屈で同級生のレベルも低く
ピアノが上手い集団に声をかけても『東洋の野猿風情』と
差別され、友人を得ることができなかった。
休みにはオーケストラや歌劇、楽曲発表の多さと
転調の違いに黙考したり
バッハが音楽監督を務めた音楽の聖地トーマス教会で
教会の庭の鼠色の石を記念に拾った。

数か月して体調に異変が起きた。
起き上がれなくなり、医者にかかるが大学病院から
入院を命じられた。
幸田幸が見舞いに来た時、一瞬愁いの表情をし
いつもと違う調子で帰って行った。
その後、巌谷や吉本、領事館職員も見舞いに来て
三か月たち夏になっても床を離れられず
官費留学生となった島崎赤太郎が来て
廉太郎に「帰国命令が来た」と告げた。
「僕が死病にかかっているから?」に島崎は沈黙で答えた。
廉太郎は姉と同じ労咳(結核)だった。
誰もいなくなった病室で叫んだが
はきだした血に死が迫りつつあるのを自覚した。

退学し、島崎が帰国準備を進め現地法人が見送りに来た。
船の中ではトーマス教会の石ばかりながめて
イギリスでの寄港中
ケーベルに哲学を学んだ姉崎正治と
『荒城月』の作詞家・土井晩翠との対面で
廉太郎作曲から落城の情景が浮かんだといい
音楽は異なる文化の者同士や国を超えて繋ぐ力があると知り
土井からは今後も曲を書いて欲しいと言われた。

帰国した大吉の家では腫れ物に触る扱いを受け
日々、縁側で体を温め過ごすなか幸田露伴が訪ねて
「君自身のために曲を作った方がいい」と勧め
「死ぬくらいで胸を張るな」「音楽は君に与えられた櫂」だといい
京調ばかりの曲になりそうだと言っても
「君の人生のための作曲に誰に文句を言われようが関係ない」に
廉太郎は体が軽くなった。
露伴はさようなら、またな、とも言わず
「実りある創作を」と帰って行った。

身辺整理に自筆楽譜を焼き音楽校の定期演奏会に
ブカブカのズボンに人力車で行き
環からその若さと才能にまぶしさを感じ
小山とはまだ人生が続くかのような社交辞令を交わした。
音楽学校に戻った鈴木毅一と幸田延もいて
環のソプラノ独唱は見事なものだった。
帰り際ケーベルから「君はもう戻らないつもりだろう」と
見透かされたが、音楽に関わり続けると言う廉太郎に
目を何度もしばたたかせ「よき音楽の日々を」と
露伴と似た言葉をもらった。

10年自分を育てた人々と音楽学校に別れを告げた時
一番会いたくない新聞屋がそこにいた。
『結局おまえは何もはたせず終わるのか』その声は湿っぽく
廉太郎は努めて明るく「でも死ぬまで音楽を手放しません」と
別れ、数日後『別れ歌』と名付けた四部合唱の楽譜を鈴木に送った。

2日後、大吉が卒中で倒れまもなく亡くなった。
妻の民からは廉太郎をもう養えないと言われ
思い出がすべて灰になると思うと涙がこぼれたが
朝もやの中、大分の実家に戻った。

すっかり老いた両親も腫れ物のように扱われ
吉弘に古ぼけ出ないともあるがリードオルガンを用意してもらった。
体調はさらに悪化したが山のように作曲し
小学校で曲を歌って聞かせたりする日々のなか
母がトーマス教会の石を捨ててしまい
やり場のない思いを心の奥底に沈めた。

大分にも教会は仏教寺院の伽藍洞で
廉太郎はがっかりしたがそこの
リードオルガンで作った曲を弾きながら
バッハは死後評価されたのは楽譜があったからで
楽譜さえ残れば永遠のものとなる…抗いたいと願い
奪われる体力の中、作曲に明け暮れ
哀調、希望と未来を歌う三部作でなる
己の人生23年のような曲を作り
布団から離れられなくなった。

廉太郎の夢の中ではドイツ語で向こうの仲間たちと
議論しあっていた。
『長調だの短調だのない新たな音楽が生まれるんじゃないだろうか』
無調の音楽。
目覚めて、この思いつきが神の声のように響いた。
最後の楽譜に、この曲の最低音を書き足し
曲のタイトルは無念、心残りを意味する『憾(カン)』とした
音楽の頂点にそびえる扉を開けなかった恨みをこめた。
『憾』の原稿、ラインベンゲルのバラードの楽譜
『幼稚園唱歌』冊子を手紙と共に封筒に入れ
鈴木毅一宛てに封をした。

僕の人生に意味はあったのだろうか。
答えは出ない。
耳を澄ますと、甲高い音“水琴窟”の音が響いてくる。
そうだったのか、きっとこれば僕の目指す音だったのだ
と一人言ちた。



鈴木と幸が奏でた廉太郎の『憾』には
一人の青年の人生が切り取られていた。
新聞屋は「この曲が瀧のすべてなんですかい。だとすりゃ
何も残さない人生だったて事じゃないですか」
思いのほか己の声が弱弱しく自分で驚いていた。

幸は「わたしがそうはさせない。瀧君のいた意味を私たちが
絶対に見つける。」決然と覚悟を決めた幸の顔があった。
鈴木は新聞屋に『幼稚園唱歌』の冊子を渡し
「『約束は果たした』と伝えてくれ…と。
あなたも瀧さんの生きた意味を見つけて下さい」と言われた。

家に帰ると妹の鶴が『お正月』の歌を楽しげに歌い
病床の母が笑い声をあげていて、貧乏たらしい部屋が
驚くほど温かだった。
学校で習ったその歌は『幼稚園唱歌』に乗ってたもので
鶴はこの歌が好きだと言う。
「あいつ、やりやがったのか」新聞屋は流しの総菜を買いに
表に出て湿った鼻を軽く鳴らした。

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『廉太郎ノオト』読書感想文・書き方例文とポイント

【読書感想文の応募要項】
・高校生の部 本文2,000字以内
(作文用紙400字×5枚)

 
読書感想文コンクールの入賞した子は
原稿用紙5枚2000字きっちりに書きます。

 読書感想文の書き方

    ・この本を選んだきっかけ
    ・簡単なあらすじ
    ・感想、疑問点など
    (特に面白かったところ、感情が動いたところ)
    ・自分の意見、似たような経験談
    ・本を読んでの意見
    (本を読んで学んだこと、自分の意見、今後の生活に生かしていく。など)

あらすじは簡単でもいいですが
・自分がどう感じたか?
・本を読んで何を感じ、今後にどう生かすか?
は重要です。
また「似たような経験」の自己開示がある感想文は
なぜか評価が高いです。

【廉太郎ノオト】感想文例文2020文字】

「自分がこの世に生まれた意味」「自分は何者であるか」
多くの人は自分自身をなにかのカテゴリーに当てはまる事を
望むように思います。
それは「夢をかなえる」ことは自己実現欲求であり
自分が望む「何者になるか?」で人は自分の人生の意味を
見出していると思います。

この物語は滝廉太郎という一人の青年が
自他ともに認める音楽の才能があり
音楽で大輪の花を咲かせると誰もが信じて
疑わなかったハズが、突然の病で夭逝した
その無念のなか、彼は何を残し成し遂げることができたのか?
を知る物語です。

「声優になりたい」「官僚になりたい」と
手の届きにくい夢もあれば
「なりたいものは何もない」という人もいます。
この作品の音楽家を目指す若者たちの時代は
西洋音楽を学ぶのは裕福な家庭子供であり
そもそも文化的に進んだ環境にいなければ
西洋音楽を知る事もない選ばれた人達でした。

姉の影響で琴を弾いていた廉太郎は生まれ持った
音楽への天才的な感で、念願の音楽学校でも
特待生的な待遇とチャンスに恵まれます。
彼の悩みは「姉のかわりに音楽をしているのではないか?」
という遠慮が右手の旋律を弱くしている
心の問題による伸び悩みでした。
ですが、この時点で同級生たちとは悩みのレベルが違います。

女だからという理由で進学できず結婚させられる者
才能が足りず、進学をあきらめる者
学費を用意できずあきらめる者
圧倒的な貧困で音楽に携わる事すら出来ない者

廉太郎は唯一父が音楽を学ぶことを良しとしませんが
従兄の大吉が圧倒的な味方となり後ろ盾をしてくれます。
また廉太郎を日本の西洋音楽の先駆者にすべく
多くの教師陣の期待と国からの官費でのドイツ留学と
才能が道を切り開くような強運がありました。

才能はあれど音楽の道が開ける事のない新聞屋は
廉太郎たち音楽学校の生徒とはかけ離れた貧困層です。
親子代々の三味線を続けることが本来の自分らしさで
あるはずですが、病弱の母と幼い妹との生活を
維持することしかできません。

努力とは関係なしに自分がいくら手を伸ばしても
届かないものをやすやすと手に入れたのに
何も成し遂げなかった廉太郎にむかむかするとの
新聞屋の怒りの感情は「才能があれど道すら開けない」
が故のねたみも理解できる気がしました。
彼ののあざけりは醜くあっても
「俺だって音楽がしたい」「真摯に音楽と向き合ってくれ」
と音楽を愛する者のの悲鳴が込められていたのだろうと
同情してしまうのです。

また新聞屋が感じた廉太郎への富める者の甘さは
残念なことに当たっていたようです。
ケーベルの言った「最高の人材がそろう場所」で
廉太郎は人種差別の壁で拒絶されます。
日本での周囲からの特別扱いと打って変わった
拒絶感は実力とは関係なく太刀打ちできないもので
最高の人材たちからの拒絶が廉太郎を死病にした
ように感じました。
一方の同時期に留学しているライバル幸田幸は
1年留学しただけで成長のあとが見え
常に孤高の中で戦っていた彼女のような頑なさが
もし廉太郎にあれば悲劇は起こらなかったのではないか?
病床でドイツ人と音楽を語り合う夢など
見なかったであろうとも思われます。
なにかを成し遂げるのなら拒絶の中で戦う強さも
必要な時もあるのだと思いました。

廉太郎は人生の最後に
『憾(カン)』という音楽の頂点に立てなかった
自分の不運に恨みをこめた曲を作ります。
それは三小節にわけた彼の人生を語るもので
「自分はここにいた」という究極の自分らしさを
表現したものでした。
そうまでして自分の存在を世に残したいと
強く思う人がやはり歴史を作るのであり
「夭逝した天才・滝廉太郎」は愛する音楽で
人々の記憶に残るという究極の創造的活動欲求を
ついに満たして旅立ちそれを知っているのは
「あいつ、やりやがったのか」と
言った新聞屋だけだったのでした。

廉太郎にアドバイスをくれた児童文学者の巌谷小波は
「覚悟して行くといい、夢の場所は、夢であるからこそ光り輝く」
と、経験者としての助言をくれています。
巌谷から見ると、廉太郎は夢見る青年で
ドイツでの留学生活の厳しさや
仮に無事に留学を終え音楽家としての道を歩んでも
夢には覚悟が必要だと教えたのでしょう。

夢がかなう事は素晴らしい事です。
でも夢が現実になると、それは生活と日常になります。
仕事を通じて得られる喜びよりも
仕事を成し遂げる苦しさの方が何倍も大きく
大吉の言う通り仕事の中になにかしらの
楽しみを見つけないと夢の持続は難しいのだと思います。

夢を持つ、自己実現する、何者かになるのは
現実的にはいばらの道なのかもしれません。
ですが、命懸けでなにかに取り組んでいる人や
自分の生きた証を後世に残した人に人は
尊敬と憧れを抱きます。
それは自己の存在を世界に認められたい
生存欲求からくる性なのでしょう。

自己実現達成に必要なものは
才能、運に加え強い信念です。
私はこの滝廉太郎という人物の人生は
短命でも悲劇ではないと思います。
音楽の世界へ閃光のごとく輝いて散った
花火のような人生。
彼の名は彼が触れ合った当時の音楽家たちよりも
強烈に語り継がれる存在となりました。
続ける苦しみではなく、一瞬で燃え尽きても
永遠に語り継がれる滝廉太郎という人は
幸せな人だったと思いました。

【2020年読書感想文】高校生の課題図書

「フラミンゴボーイ」あらすじと読書感想文オススメ度

こんな人にオススメ

 
読みやすさ 
感想文の書きやすさ  
 

作品概要
歴史のひとこまを力強く描く感動作品

一人のイギリス青年が、一枚のゴッホの絵をきっかけに
訪れた南仏カマルグで、原因不明の高熱におそわれ動けなくなる。
辺りにはフラミンゴが無数飛んでいた。
気を失った後、助けられた家で不思議な話を
聞くことになる。

第2次世界大戦の末期
南仏の田舎町カマルグにもナチスはやってきた。
そこで何が起きたのか………?
それは、フラミンゴと話ができる不思議な力を持つ少年と
ロマの少女の物語だった。

【編集担当からのおすすめ情報】
『戦火の馬』など、数々の児童文学書賞を受賞している
マイケルモーパーゴの新作長編。
モーパーゴは、現代英国児童文学を代表する作家として、2018年に勲章を授けられている。
戦争をテーマに多くの作品を執筆。
本作品は、フランスの南部、フラミンゴの生息地カマルグが舞台となっている。ナチスが侵攻してきたフランスで、何が起きたのか・・・。フラミンゴを愛する少年とロマの少女の物語。

ロマ・・・「ジプシー」が差別的な呼び方だとする考えでの呼称の一つ。

「キャパとゲルダ」あらすじと読書感想文オススメ度

作品概要
「写真」は生きるための切符だった。
激動の1930年代、スペイン内戦を世界に伝えた
ロバート・キャパとゲルダ・タロー。
カメラを武器に革命に身を投じた若き二人の青春物語。

生きるためにーふたりは戦場へ向かった。
激動の1930年代、スペイン内戦を世界に伝えた
二人のカメラマン、ロバート・キャパとゲルダ・タロー。
カメラを武器に革命に身を投じた若き二人の青春の物語。
キャパはゲルダに写真を教え
ゲルダはキャパを戦場カメラマンとしてプロデュースした。
激動の1930年代、夢と理想に燃え、カメラを武器に闘った若き二人の素顔とは…?

【キャパとゲルダ】あらすじ・ネタバレ ・読書感想文書き方と例文

読みやすさ ★☆☆☆☆
感想文の書きやすさ ★☆☆☆☆
こんな人にオススメ
・写真が好き
・マスコミジャーナリスト志望
・世界史が好き、詳しい
・国際貢献事業に興味がある
・男女共同参画に興味がある


読書感想文の書き方の“こたえ”

過去の読書感想文課題図書なら、感想文を書いた人も沢山います。

入賞作は審査員が気に入る読書感想文は
先生方が「良い」「書いて欲しい」と思うこたえとは
生徒が真剣に本のテーマを考えている…
「とても正しい優等生な意見」です。

時に本の内容と似たような
「自分の恥ずかしい失敗談」などの
自己開示もあるとより一層
「素直でよろしい」とされます。

そして本を読んだ感想と
自分の経験を照らし合わせて
よりよい品行方正な考え方を身に着けたか?
それが「読書したうえでの学習効果」にあたります。

自分なりの意見があっても反抗的だったり
「いいと思います」「すごいと思います」などの
単純な感想ではいい点数をつけてくれません。

何をいいと思うのか?
前年の課題図書の読書感想文全国コンクールの
入賞作品を参考にすると書き方のコツが身につきます。

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