【犬部!】あらすじ(ネタバレ)と感想文・映画「犬部!」キャストと実話のモデル
映画「犬部!」はノンフィクション作の映画化です。
「犬部!」あらすじ
青森県北里大学に実在した動物保護サークル「犬部」を題材に、林遣都と中川大志の共演で描いた青春ドラマ。が原案子どもの頃から大の犬好きだった獣医学部生・花井颯太は、目の前の命を救いたいという一途な思いで動物保護活動を続けてきた。そんなある日、心を閉ざした1匹の実験犬を救ったことをきっかけに、動物保護サークル「犬部」を設立。同じく犬好きの同級生・柴崎涼介ら仲間たちと共に動物まみれの青春を駆け抜け、やがてそれぞれの夢へ向かって羽ばたいていく。16年後、獣医師となっても熱心に保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという報道を受け、かつての犬部のメンバーたちが再結集するが……。主人公・颯太を林遣都、相棒の柴咲を中川大志が演じる。
映画「犬部!」
公開日:2021年7月22日(金)
出演:林遣都 中川大志 大原櫻子 浅香航大 ほか
監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原作:片野ゆかのノンフィクション「北里大学獣医学部 犬部!」
こちらでは
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映画「犬部!」のキャストとノンフィクション「犬部」のモデルはどんな人?
「犬部!」原作小説のあらすじ・ネタバレ
「犬部!」読書感想文・感想
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映画「犬部!」のキャストとノンフィクション「犬部」のモデルはどんな人?
映画 犬部!のモチーフになっている、ハナ動物病院の太田先生のザ・ノンフィクションがA.B.C-Z 今夜はJ’s倶楽部 #nhk_jsclub の前日、CSでOAがあるみたいです!
塚ちゃんがウイン君を引き取るきっかけになったドキュメンタリーなので観られるかたは是非観て欲しいhttps://t.co/VjsoKVTKnM— yubi (@yubittermaruko) June 26, 2021
映画「犬部」は北里大学にある実在の動物愛護サークルがモデルとなっています。
そのサークルを設立したのが当時、北里大学の獣医学部に通う学生で現在、東京杉並区で「ハナ動物病院」を開業されている太田快作先生です。
北里大学での学生時代、当時は保健所にいる動物を払い下げ「実験動物」として学生たちの研究動物として学び、最期は安楽死させていたそうです。当時から太田さんにとっては、その過程を受け入れることができず、教授に相談し単位を取得には欧米の大学で行われていた「動物実験代替法」※を用いています。
※「動物実験代替法」とは犬や猫の手術を見学し最後は教員の監督の元で執刀し実習の代わりとする方法。
太田快作さんは「動物と出会ってしまう」体質でした。
子どものころから動物好きで、学生の一人暮らしなのになぜか困っている野良犬や野良猫を見つけてしまうので保護し里親への譲渡活動をする人でした。ですが実験動物は殺される命なので雑な扱いを受けるのがつらく、せめて、散歩をさせたり、少しでも良い時間を与えたいという太田さんに賛同する人が集まり「犬部」が結成されました。
太田先生は現在も「獣医師が動物保護の先頭に立つべき」と考え、休みの日のほとんどを、野良猫の避妊去勢手術や、多頭飼育崩壊の犬の治療などに当てています。
2020年にフジテレビの「サ・ノンフィクション」で「花子と先生の18年~人生を変えた犬~」が放送されたことで「ハナ動物病院」への問い合わせが多くなってしまったのでなかなか診療予約も難しくなってしまったようですが、太田先生は現在も動物保護の啓もう活動に尽力されています。
犬部は現在も「北里しっぽの会 愛好会」として活動中でホームページで飼い主を募集しています。
映画「犬部!」のキャスト
林遣都、ギャップがたまらない新カット💕
獣医師役に挑戦した主演映画『#犬部!』📸くしゃっと笑顔、真剣な表情…🐾✨https://t.co/K8e510rXH4#林遣都 #中川大志 @inubu_movie @KH_s_info pic.twitter.com/ICBIw1AI1j
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) July 1, 2021
花井颯太(はないそうた):林遣都
(原作:太田快作)
「犬のためなら死ねる」というほどの“犬バカ”で、「犬部」を設立する主人公・花井颯太。動物愛護をライフワークとしており、保護動物と一緒に暮らしている。多くの動物を救うため、愛護活動サークル『犬部』を設立する。
柴崎涼介(しばさきりょうすけ):中川大志
犬部メンバーで颯太の親友で犬部の設立に協力する。颯太に負けず劣らずの“犬バカ”。卒業後は動物愛護センター職員という道を選ぶ。
佐備川よしみ:大原櫻子
颯太の心意気を慕う”猫好き”。研究者の道へ進む。
秋田智彦:浅香航大
大学で教授の助手を務める。実験犬を逃してしまったことで「犬部」メンバーと出会い、ともに活動する。卒業後は、父の動物病院で獣医師として働く。
田辺桃子:川瀬美香
かつて保護犬を飼っていた学生。颯太を頼り病院を訪れる
深沢さと子:安藤玉恵
獣医師となった颯太の病院の看護師医療関係者。しっかりもので颯太も頭が上がらないことも…
中越真利子:しゅはまはるみ
地元青森の動物保護ボランティア団体の代表「犬部」ができた頃からの協力者
田原優作:坂東龍汰
大学の研究員となったよしみの後輩
門脇光子:田中麗奈
柴崎が所長を務める動物愛護センターの職員
秋田秀作:酒向芳
秋田智彦の父。動物病院院長で獣医師としての動物保護に消極的
久米尚之:螢雪次朗
元ブリーダーで多頭飼い崩壊している
安室源二郎:岩松了
獣医学部教授
原案:片野ゆか
監督:篠原哲雄
草の上の仕事(1993年)
月とキャベツ(1996年、エースピクチャーズ、西友)
悪の華(1996年)
洗濯機は俺にまかせろ(1999年、ボノボ、スターボード)
きみのためにできること(1999年、日活)
はつ恋(2000年、東映)
死者の学園祭(2000年、東映)
張り込み(2001年、JRSS)
女学生の友(2001年7月、BS-i、東宝)
命(2002年、命製作委員会(TBS、東映、小学館、TOKYO FM、朝日新聞))
木曜組曲(2002年、光和インターナショナル)
けん玉(『Jam Films』内の一編・2002年)
オー・ド・ヴィー(2002年、オー・ド・ヴィー製作委員会)
昭和歌謡大全集(2003年、光和インターナショナル、バンダイビジュアル)
天国の本屋〜恋火(2004年)
深呼吸の必要(2004年)
Female【フィーメイル】 「桃」(2005年)
欲望(2005年、光和インターナショナル)
地下鉄(メトロ)に乗って(2006年)
クリアネス(2008年2月16日公開 ゼアリズエンタープライズ/ドーガ堂)
山桜(2008年5月公開 東京テアトル)
真夏のオリオン(2009年6月13日公開)
つむじ風食堂の夜(2009年11月21日公開)〜Cine Musicaシリーズ第7弾〜
ラムネ(2010年5月29日公開)〜エイベックス・ニュースター・シネマコレクション Vol.2〜
恋の正しい方法は本にも設計図にも載っていない(2010年10月2日公開)
小川の辺(2011年7月2日公開、原作:藤沢周平)
スイートハート・チョコレート(日中合作、MZ Pictures、2016年日本公開)
種まく旅人 くにうみの郷(2015年5月30日公開、松竹)
起終点駅 ターミナル(2015年11月7日公開、東映)
花戦さ(2017年6月3日公開、東映)
プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜(2018年3月3日公開、アニプレックス)
ばぁちゃんロード(2018年4月14日公開、アークエンタテインメント)
君から目が離せない Eyes On You(2019年1月25日公開、アトリエレオパード)
影踏み(2019年11月15日公開、東京テアトル)
癒しのこころみ〜自分を好きになる方法〜(2020年7月3日公開、イオンエンターテイメント)
犬部!(2021年公開予定、KADOKAWA)
脚本:山田あかね
<テレビ>
すばらしき仲間(CBC、ディレクター)
石坂浩二のスーパーアイ(TBS、ディレクター)
ギミア・ぶれいく(TBS、ディレクター)
ザ・ノンフィクション お金がなくても楽しく暮らす方法(2014年、フジテレビ、演出)
むっちゃんの幸せ ~福島の被災犬がたどった数奇な運命~(2014年、NHK総合)
ザ・ノンフィクション 生きがい 1000匹の猫と寝る女(2015年、フジテレビ、演出) –
オイコノミア 人生というゲームに勝つ!(2016年、NHKEテレ、構成・演出)
ザ・ノンフィクション 会社と家族にサヨナラ ニートの先の幸せ(2017年、フジテレビ、構成・演出・プロデューサー)
ザ・ノンフィクション 犬と猫の向こう側(2018年、フジテレビ、プロデューサー・演出・構成) – 第45回放送文化基金賞番組部門・テレビドキュメンタリー番組・優秀賞受賞
又吉直樹のヘウレーカ! 魚も迷子になりますか?(2018年、NHKEテレ、構成・演出)
家族になろうよ 犬と猫と私たちの未来(2019年、NHK・BSプレミアム)
ザ・ノンフィクション 好きなことだけして生きていく~元ニートの再々再々出発~(2019年、フジテレビ)
ザ・ノンフィクション 花子と先生の18年(2020年、フジテレビ、プロデューサー・演出・構成)
<映画>
クリアネス(2007年、脚本担当、監督:篠原哲雄)
闘茶 tea fight(2008年、脚本担当、監督:ワン・イェミン)
すべては海になる(2010年、監督、脚本)
犬に名前をつける日(2016年、監督、脚本、ドキュメンタリー)
犬部!(2021年、脚本担当、監督:篠原哲雄)
主題歌:Novelbright「ライフスコール」
『犬部!』原作のあらすじ・ネタバレ
原作者、片野ゆかさんによる『北里大学獣医学部 犬部!』は全18話の短編ノンフィクションです。
映画登場人物たちそれぞれのエピソードや犬部ができていく過程、動物たちのエピソードや悲しい現実もつづられています。
また原作の単行本、文庫本、キミノベル版、ジュニア版、コミカライズされた『犬部!ボクらのしっぽ戦記』や『ツヅキくんと犬部のこと』もあり、小学生でも楽しめて、読書感想文図書としても読みやすく書きやすいおすすめ本です。
『犬部!』原作のあらすじ
1・黒毛3兄弟
「犬部」があるのは北里大学獣医学部の十和田キャンパス。正確にはサークルで部室なし、活動費は部員の自腹です。犬部初代代表は太田快作5年生。初めての新入部員は自称〈犬バカ〉の池田聡だった。部室は太田の一人暮らしのアパートで太田が保健所から引き取ったハナコと常時15匹前後の犬や猫が保護されていた。
2・ルンルンの奇跡
太田は道を歩いているだけで困っている動物に「どういうわけか出会ってしまうタイプ」で動物を引き寄せてしまう。
試験の前日に保護したが暗く無表情な中型犬にせめて楽しい気分になってほしいと「ルンルン」と命名した。だがその犬は保健所から払い下げられた「大学の犬(臨床研究室の犬)」とわかり、そこの教授に太田は「生体解剖で単位を取りたくない」と動物実験代替法という前代未聞の申し出を認めてもらった大きな借りがあった。これ以上、教授に迷惑をかけられないとその犬は研究室の車で連れて行かれる時、大声で悲鳴をあげて「行きたくない!」と鳴き声に太田は号泣し落ち込んだ。
ところがルンルンは太田のアパートに逃げ帰って来て、教授も例外的にルンルンを見逃してくれた。そして奇跡が起きた。ルンルンの譲渡募集のポスターを見て「行方不明のうちの犬では?」と見つけられなかった飼い主が電話してきて、初めてルンルンはヒンヒンと喜びの感情を体じゅうで表現した。このうれしい経験は獣医学部生に絶対必要だ、とサークル活動を始めることにした。
3・犬部員ハナコ
犬部の活動は朝と夕方、太田のアパートに融合し散歩、食事、掃除などして授業に行き、夕方また散歩が毎日続く。最初20人入っても夏休みごろには2,3人になる。後先考えず困っている動物を連れて来るし大変だが、動物たちと新しい飼い主との出会いは初めて触れる感動の世界だ。
犬部には太田が保健所から保護した犬ハナコがいて、母性本能お強い優しいリーダーとして保護された犬猫に生活のルールを教える頼もしい犬部のNo.2だ。ある日保護した犬が帝王切開で出産したが育児放棄となり、資金不足でミルク代の捻出に行き詰っていると、なんと出産経験のないハナコから母乳が出て代理母をつとめてくれた。
4・初めての卒業
太田から犬部専用携帯をもらいその日から池田は犬部の窓口になってしまい、四六時中の電話には「動物を引き取って」とか授業中で出られないのに怒る人もいるが、引き取り拒否して説得した人が「避妊手術をする」と連れ帰った母子の犬が保健所にいたこともあり、電話の向こうに命があるから理不尽にも怒ることはできない。
保護した犬や猫の譲渡先が決まることを「卒業」と言っている。ホワイトはてんかん持ちで、感情が麻痺し人間とのコミュニケーションがわからない何もうつらない目をしていた。そこでもっと人とふれあう経験をさせようと毎回譲渡会に連れて行き貰い手は決まらないが、いつの間にかノンビリした優しい顔の犬になった。
5・オッチャンの愛犬
交流のある動物保護団体から、多頭飼いしながら失業し賽銭泥棒でつかまった男性から40匹の犬の保護を頼まれて大至急向かった。
犬たちはガリガリに痩せ、保護団体との相談で弱っている犬を部員が連れて帰ると釈放された男性に「盗まれた」と訴えられ一部教授から犬部はトラブルメーカーと認識されてしまった。多頭飼い崩壊するのはブリーダーで失敗するか、保健所でかわいそうと引き出した動物が去勢手術をしないで増えるケースが典型的だ。
オッチャンと話し合いで子犬は譲渡し去勢をすることになったが再犯してまた捕まったため「釈放される前に去勢避妊手術をしてしまおう」と世話になっている動物病院の協力で手術台までオッチャン自宅の庭先に担ぎ込み手術し、「釈放される」と連絡が入ったので術後ケアの必要な犬は車の出せそうな知人友人にも頼み込み連れ出した。
太田が最終学年になり、池田が二代目代表になった。新入部員募集が必要だがこの活動は動物に対してヒドイ考えする人間と会い知りたくなかった思いを山ほどする。勧誘に躊躇もするが動物たちの為に新入部員が必要だ。ちょうど保護したウサギがいたので「ウサギもいるよ」とビラに書くと、釣られてはいったのがクールな大山だった。
6・ウサギに呼ばれた男
大山は元は土木工学科卒、金融業界で数か月サラリーマン経験したがやさぐれた世界で退社し、再受験して獣医学部に入りなおした変わり種だった。ウサギ以外飼ったことがなく、犬猫の勉強や金融業界時代の悪行の懺悔もあり“善行”を積もうと入部した。だが犬部の組織として欠点が目につき、だてに金の怖さと力を知る大山は自分の役割を見つけ活動にのめり込む。
大山と同期入部の渡邉に、オッチャンの家から生後半年で保護された極度のビビりのあずきの預かりを頼まれ譲渡できるか?あやしく太田は心配したが渡邉は自宅に帰りどんなに汚されていても「アズキのおかげで床がピカピカになった」というおおらかな新人が入った。
7・犬部で一番気の長い話
渡邉はアズキに「かまわない作戦」をして4か月過ぎると自分から近づくようになった。好奇心と恐怖心半々で“後ろ走り”して逃げる。アズキが落ち着いてきたので新たな犬と猫も面倒を見ることにして、それはアズキにはいい効果で他の犬といると落ち着くようだった。
11月下旬にやっとリードをつけて初めての外に出て、毎日1歩ずつしか増えない散歩をし、正月も帰省せず下痢をしやすい体質でフードに悩んだりしたがアズキの気持や可愛さが分かるようになったので譲渡会に出すことにした。だが客がいない会場についたとたん渡邉に助けを求めるアズキに渡邉は飼い主になることを決めた。
8・運命のニャンたち
保護する動物の譲渡先が決まらないのは保護活動自体成り立たなくなる。が「この子は自分と巡り合う為に犬部に保護されたのかも」とどの部員も思いがこみ上げることがある。引き取り手がいないと譲渡条件が自然と厳しくなって部員が飼うケースは珍しくない。
市川育美は退部部員から白黒のオス猫プチ朗を引き継ぎ、イクメンで社交的で大らかだが譲渡会で声はかからないことにホッとして自分が引き取り、山本佳奈は交通事故で下半身に麻痺が残り自力排泄できなくなった猫・夢優を傷だらけになりながら介護した。テレビ干渉が趣味の夢優を「猫のなかでも特に頭がいい」と溺愛している。
9・誰も知らなかった危機
大山は犬の「カシコさ」を知り超ビビりのはぐを世話して譲渡が決まるとうれしいのに、寂しくてどれだけ愛おしかったのか、改めて強く思いがこみあげた。
卒業、就職を控えた太田はこれまでの活動にボランティア団体に依存している面が大きく、プロの獣医師の必要性や自分が愛護の世界で活躍できる方法を探りたかった。それに残された後輩たちが続けられるのか?自分が解散を言えば終了できる、と考えていたが後輩たちの真剣さにふれ、自分の杞憂で愚かだったと気付いた。太田は組織トップにならず日本の動物愛護システムを変える為に“現場”が行くところだと決心した。
10・あたった予感
ホワイトの譲渡が決まらなかったが、一般のQさんと言う方が預かりを申し出てくれた。だがQさんは何度かホワイトを脱走させ近所の人が雨の中さまよっているのを見たともいう。Qさんに注意しても聞き入れてくれず正式に引き取りたいと言い出し、池田は気が進まなかったがお願いすることにした。
大山が世話しているコロは咬み癖が治らず4度で戻りしてきた。自宅預かり中にコロがウサギの栞に飛び掛かる寸前を止めた一件から、身勝手な犬猫の飼い方している人を理解できなかったが、今の環境が自分が栞に無理強いしていたのでは?と愛護ってなんだろう?と疑問に思うようになる。
定例ミィーティングで安楽死問題は答えが出ないが、ある動物愛護管理センターの獣医師から「動物病院に攻撃行動があるので苦しみの少ない安楽死を頼まれたらどうするか?」に「安易に断ると保健所に持ち込まれて苦しみながら炭酸ガスの窒息死させられるならばどうか?」と問われると部員は誰も答えが出せない。 後日、池田の嫌な予感は当たりホワイトが死にそうだとQさんから連絡が来た。
11・キューピットのしっぽ
グッタリしたホワイトがなぜこうなったのかQさんは事情を話さず、すぐ動物病院に担ぎ込み敗血症で瀕死状態だったが抗生物質で一命はとりとめた。だが激しすぎるてんかん発作で獣医師からは安楽死の提案をされたが、池田が連れて帰り介護することにした。水を飲ませるのもやっとで流動食を与えやっと少し発作が落ち着いた。Qさんに問いただしても意味がないため犬部でひきとり体力も回復した。だが排泄コントロールができなくなり粗相した毛布でまた寝たり、エサへの執着が異常になったが栄養状態が悪かったらしく掃除機が壊れるほど毛が抜けた。
春が近づき発作の完治はないが前発作の段階で優しく声をかけると本発作を回避できることもある。もう譲渡はできないがスタッフ犬としてイベント会場で人気者となり、ホワイトが気に入った同じ大学の女の子が池田の彼女になった。
12・絵本になったコロ
太田が卒業で大山が3代目代表になり、アパート退去に50万以上かかり動物愛護にいかに金がかかるか示された。動物たちは新たな居場所に移動できたがGWすぎは出産ラッシュでまた保護動物が増える。大山は社会に新入部員確保と大学公認サークルにして施設や助成金が欲しかった。
だが太田が動物実験代替法で単位を取り、破天荒で過激な発言をしていたこともあり、犬部自体よく思わない教授もいた。大山は動物に関する法律的視点と動物愛護の社会的影響力ある活動でそれを断言できる組織にしたい考えた。
噛み癖のあるコロが理解と経験のある人への譲渡が決まった。コロの世話をしていたのは新入部員の岩木で彼は子供の頃から兄の暴力を受けながら育ち心療内科受診していたが、動物愛護団体で犬猫と触れ合う事でPTSDも緩和され犬部に入りたくて入学して来たものだった。
2年半も犬部にいてやっと幸せになれたコロの話を絵本にし、動物愛護の啓もう活動をしようということになった。犬部から動物の飼育基準や譲渡条件に「学生がえらそうに」と怒る人、うちのネコに似た野良猫が増えるのがうれしいと言う人までいる。野良で生きる、捨てられる犬や猫がどれほど悲惨か?幼稚園児からたのしめる3種類の絵本を作った。捨てられた犬がハッピーエンドで終わる作品の最後には犬が「どうして置いて行かれたのだろう?いつまでも待ってる」とモノローグを描いた。
13・さようならいとしい犬
犬猫を飼うには通常に飼育費に病気になった時の医療費もかかる。学生たちは生涯で300万くらいかかるのも知っているので予防と早期治療と観察が必要と考える。
池田は愛犬ナナの血液の数値が気になり、後日詳しい結果で血液のガンだと判明した。免疫も落ちるので他の犬との接触は絶対禁止と言われ犬部を辞めるか悩む。
部内では電話係の池田がまったく出ないとクレームが入り、大山が理由を聞くと部員内にホワイトを引き受ける人が現れない事や以前犬のシェルターを愛護団体から借りた時もたった一人では無理な保護活動をさせたこともあった。
動物の命を優先するために無理とストレスがたたり、動物を不安にさせる悪循環。だがほかの部員にも余裕がない。
ホワイトは大山が見ることになりナナと2人抗がん剤治療の闘病生活になると、ペット葬儀について下調べが必要か?その時自分は冷静でいられるか?苦しくなったり、それでもナナは治療の甲斐あり4か月目で数値が正常値に近づいた。だが卒論研究室も決まりナナの為にもほかの動物を預かるのはやめた。
大山も上級生となり授業も忙しく1年したホワイトの世話を、2年Hに引き続いだがアパート住人から「犬の足音がうるさい」と苦情が入り、次に2年高橋渉が引き継いだが半年間ホワイト中心の生活に疲労と孤独がたまり、岩木が引き継いだ。
岩木も多忙で在宅時間も短くホワイトは以前より体調が悪くなった。そして夜中に発作を起こし安定したが、翌朝岩木が買い物中の30分間に発作で苦しんで死んでしまった。担当した部員も担当すると言えなかった部員も全員に責任があった。動物愛護の現場では必ず死に直面し、自分を責めてしまう。だが創設者・太田が導き出したひとつの考えい「自分たちが救わなかったらもっと悲惨な運命だったこと。この経験を次に生かす方法を探ること」だ。
14・ポッケのきもち
ポッケは3年の野村が担当したが、気難しく人にトイレの失敗が多く野村の帰宅直後に粗相してしまう。それでも一緒に暮らしているうちに野村になつき一緒の布団で寝る頃にはトイレ問題は解決した。
だが次に知らない人2,3人に囲まれるとキバを向くのがわかり、ポッケと散歩して仲よくならないと治らない。数か月たっても変わらず問題の多く譲渡希望者が現れない。かわいい子なのになにがあったと聞きたいと野村は思った。
1年以上世話をしても希望者が現れないので「次決まらなかったら自分の犬にしよう」と決めて譲渡会に出すと、4人家族の小4の女の子が「この犬カワイイ」とポッケを希望した。野村はポッケの欠点ばかりを強調して話したが、それでも家族は受け入れてあっという間にいなくなってしまった。3週間後には家族からポッケが幼い姉弟になつき見た目もゴージャスになって心配は杞憂でほろ苦い気持ちになった。だけど今でもポッケの最初の頃の気持が知りたいと野村は思う。
15・あの日のまえまで
犬部では首輪と迷子札を飼い主に配る啓発活動をしている。これこそが迷子の犬が戻れる効果的な方法だからだ。
オスのビーグル犬龍之介は首輪はしていたが氏名記入がなく、フィラリア陽性で元の飼い主は見つからなかった。だが飼い犬だったからかとてもいい子で、他に保護中の病弱な猫・小春にも優しく最初の担当伊藤から斎藤に代わっても1週間ほどで馴染んだ。2か月後譲渡が決まったがいい子過ぎてエピソードがないほど。
加藤が保護した犬も首輪をしていたが氏名がなく妊娠中だった。だが保護した近所で心当たりを探すと2日後に該当する家の飼い主が見つかった。
16・事件発生
ムックが部外者を噛んだと連絡が入ったが、最終学年でほとんど犬部に来ないKが最初から担当しているのでムックがどんな犬かほかの部員は知らなかった。
ところが相手は全治2週間で病院治療が必要で、連絡も事件の数日後の報告で当時の代表・名護は苛立ちながらKに状況を聞くと興奮し何が原因か不明だが頂点に達すると噛むという。名護はムックの元の飼い主に事情を聞こうとするがムックに関わる過去データは一切なく、犬部の誰が対応したかすら不明だった。卒論で忙しい大山が2種類あるうちの元の飼い主や保護した人の連絡先の「カルテに書いてあるだろ?」と言うと、名護をはじめ3年生以下は誰もカルテの存在すら知らないと判明した。
犬部は無期活動休部にした。友好的な外部の人は心配したが一刻も早く部内の態勢を整えなければならない。池田や大山は「わからないのに質問しない」指示待ちしかしない後輩たち苛立った。だが彼らが手探りで活動していた頃と状況は変わり、公認サークルで部員も40名と情報共有が難しくなっていた。
名護は就任してから、新人生用の勉強会の企画を立ち上げ春から毎月末の勉強会を順調にこなしていたが7月にこの事件が起きた。学生の立場で責任がとれるのか?「責任が取れる」と断言しなければ安楽死を選ばざるを得ない。だがムックの情報は集まらない。
5,6年生の池田や大山は保護動物の為に自己犠牲は当然と考えていたが3年生はどこかで線引きが必要と言い、大山には「動物の命は救いたい、でも自分の生活を犠牲にしたくない」に「覚悟がないなら解散したほうがいい」と意見した。だがそれに対し意見する後輩は現れない。
その中で提案されたのがボランティア部員制度の廃止で正規部員と違い、部費の支払い免除やミーティング譲渡会の出席義務のない自腹で動物の自宅保護をするメンバーで卒論の頃になると切り替える者が多くなっていた。
池田と大山はそれに反対し犬部を去ることになった。だが大山は大学近くに下あごの腫瘍が原因で捨てられていた楓子を保護していた。捨てた飼い主に怒りはあるが、でも助けることができたので「あの場所に捨ててくれてよかった」という思いもあった。大山は個人的に愛護活動は続けようと犬部を去った。
17・踏めない一歩
無期休部中だがまだ保護している動物がいる。
ムックの世話は榎本が担当することになった。動物行動学の先生に相談すると「器の小さいタイプ」と診断され、トレーニングと薬で興奮状態の回避を試みた。問題行動は「恐怖心の転換行動」では?と気が付き、それに対するトレーニングの効果が現れた。
3年の氷室は引っ越しで置き去りにされた3匹の猫エイズの子を預かり、1匹は若いので引き取り手が決まったが残り2匹は大人で特に推定8~9歳のエフは元野良猫らしく社交的な兄弟猫アイと「2匹一緒」に引き受ける条件をつけた。そのため1年も預かり「情が沸くのでは」と聞かれるが自分よりいい条件の家に引き取られることを願い、自分が引き取るのは考えないようにしている。
活動が再開できない事は、それだけ消える命もあるということだった。再開するために何が必要か?
最終話・そして、ここから
市川は「自分は愛護に向いていない」と結論した。入部してから20数匹猫を中心に一人で保護譲渡してきたが、生まれ育った地元での野良猫がいる環境の良さを感じて育った為、「自由を謳歌して育った猫5~6才で路上で最期をむかえることがそんなに悲惨なのだろうか?」との考えは今時の愛護精神と相まみえない。そして潔癖で排泄コントロールできない動物は受け付けなかった。先輩から「どうして犬部にいるの?」や「動物愛護は、ちょっとオカシイくらいじゃないとできない」と言った太田の言葉が刺さった。だが個々人で異なる意見の重なる部分を整理するために残ることにした。
話し合いを重ね翌春に向け再開の目途がたち地元の愛護団体に挨拶に行くと「団体名を変えたら?」と提案された。部員たちに愛着のある「犬部」の名称変更に抵抗があったが「犬だけなの」との問い合わせ多かった。
だが再出発にあたり「北里しっぽの会(旧犬部)」と新しい名称にした。まだ手探りの段階だが、ようやく動物を救えることになった。
小説「犬部!」読書感想文・感想
⿻────────⿻
🎬#映画犬部
🐶ストーリー(4)
⿻────────⿻ニコを連れ戻しに来た教授は
颯太とニコの友情とニコの生命力に心を打たれて譲渡するが、
颯太は「これはあくまで特例。俺は1匹も殺したくない!」とサークル「犬部」の構想をぶち上げる。#いぬぶのあらすじ pic.twitter.com/3igOSfNn5o— 映画『犬部!』公式 (@inubu_movie) July 1, 2021
動物系の話となると、「感動系」「お涙頂戴」と想像できるのですが「犬部!」はそれだけではなく愛玩動物の代表、犬と猫が人間の自己都合で捨てられたり虐待される現実や人間の非業を感じた作品でした。原作自体は唐突に最終話のエピソードが終わり、後日談はあとがきで知るしかないのですが、愛護活動とはやめるわけにいかない活動ですのでこれからも様々なトラブルが生じるのだと思います。
特に考えさせられたのが、最終話の市川の言う「自分は愛護に向いていない」と結論したエピソードです。彼女は野良猫を肯定する一見非難を受けそうな考えの人でしたが、ただ「自分には能力がない」と認めることは潔い事であり、ペットを飼う事を安易に考える社会の予防にはペットを飼う能力の判定や注意事項をもっと普及したほうがいいのでは?と思いました。
また地域に野良猫がいる生活を人間が片目をつぶって受け入れる努力のできる町ならば、たとえ飼い猫より短い寿命の一生でも、それも猫の幸せの形なのかもしれません。幸不幸はたとえ動物であっても他人が決めるものではないでしょうから。
2004年に始まった「犬部」が紆余曲折ありながら、創設者の大山氏もライフワークとなった動物愛護の活動で全国的に有名になり、このたび映画化の運びとなりました。
この世界の弱者で最も庇護すべきものとは、声を上げることすらできない人間の都合で命が左右される動物なのかもしれません。動物を愛でる、愛護できるのは人間に余裕がある証拠です。
世界には犬食が食文化である国や、虐待や殺処分を躊躇しない人間は山ほどいます。その人たちには動物は命ではなく道具だから、おそらくどんなに法律で裁かれると伝えても理解は不可能でしょう。
ですが犬や猫にどうしても愛情を感じてしまい、動物たちが幸せになることが自分の幸せと感じるのは人間ならではの美しい感性です。
映画ではどのエピソードがストーリーになるかわかりませんが、原作は「犬や猫かわいい!」「林遣都クンかわいい!」「中川大志くんさやわか!」というだけの作品ではなく「犬猫を取り巻く厳しい環境をどうするか?読者に動物愛護を考えてもらいたい」という作品です。小さなお子さん夏休みに楽しめて、動物愛護の意味が伝わる作品になるといいなと思います。