【手紙・東野圭吾】読書感想文例文・あらすじ(ネタバレ)と書き方と映画との違い

こちらでは
手紙」著:東野圭吾の「あらすじネタバレ」と、おすすめの読書感想文書き方・例文などをご紹介いたします。

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【手紙・東野圭吾】こんな人におすすめ(対象年齢)&ポイント
【手紙・東野圭吾】あらすじ・登場人物(ネタバレ)
【手紙・東野圭吾】原作と映画との違い
【手紙・東野圭吾】読書感想文の書き方のポイントとキーワード
【手紙・東野圭吾】読書感想文・例文レビュー5作品
うんちく~こんな作品もオススメ

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【手紙・東野圭吾】こんな人におすすめ(対象年齢)&ポイント

【出版社内容情報】
武島剛志と直貴は二人きりの兄弟だった。
弟の大学進学のための金がほしくて、剛志は空き巣に入り、強盗殺人の罪を犯してしまう。
服役中の剛志から直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。
しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる。
ある職場で疑いをかけられ、倉庫に異動させられた直貴のもとに現れた男性は、「差別はね、当然なんだよ」と静かに言うのだった――。
年月が流れ、家族を持った直貴は、ついにある決意をする。
人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。 

読みやすさ ★★★★☆
感想文の書きやすさ ★★★☆☆

こんな人におすすめ
・中学生~大学生、社会人も可
・犯罪心理に興味がある
・犯罪者の家族への差別の是非を知りたい
・犯罪を犯した人などが身近にいる
・犯罪被害者を助けたい気持がある。
などなど

【手紙・東野圭吾】読書感想文おすすめポイント

管理人がこの本を読んだ感想を一言で言うと途方に暮れるです。

主人公・直貴は殺人強盗した兄・剛志のために
「殺人強盗した犯人の弟」というレッテルから当たり前の幸せを手に入れることができません。

ですが、犯罪の動機は「直貴の大学進学費用のため」
直貴自身は才能もあり、誠実で努力し頑張っても、兄の存在が人生に暗い影を落とし続けます。

犯罪者の家族も罪は背負わなければいけないのか?
犯罪者の家族は犯罪被害者とどう接すればいいのか?
犯罪者の家族は幸せになってはいけないのか?

テレビのニュースで事件が起きると、多くの人は被害者の方の気持を思い
「犯人はヒドイ人間だ」
「なぜ家族は事件が起きる前に注意しなかったのか?」
「きっと家族もみんなロクでもない人間だ」
など
犯罪への怒りと共に犯人を取り囲む家族にも
憎しみと怒りの対象として冷たい目で見てしまう人も多いかもしれません。

この物語は決してフィクションとは言い切れません。
世の中のどこかには
加害者の家族、被害者の家族、そしてその人たちを取り巻く人々がいるのです。

東野圭吾の作風「答えのない問いかけ」に
読者は途方に暮れるのですが
どこかにある現実をどのように受け止めたらいいのか?
人生を考える、読んでおくと大人になれる作品です。

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【手紙・東野圭吾】あらすじ・登場人物(ネタバレ)

【登場人物】

武島直貴・・・高校3年生の時に兄・剛志が強盗殺人を犯す。
優秀だがあらゆるチャンスが「犯罪者の家族」の汚名と差別のため、幸せになることができず、苦しみながら生きている。
 
武島剛志・・・親代わりに弟・直貴を育て、進学費用のため窃盗だけのつもりが殺人を犯し服役囚となる。唯一の楽しみに獄中から直貴に月1で手紙を書いてくる。

白石由実子・・・直貴の同僚。なにかと直貴にアプローチしてきて心配し世話を焼きたがる。実は暗い過去があり直貴を自分と重ねている。
           
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中条朝美・・・直貴の恋人で裕福な家庭育ちの女子大生。剛志の事件の為、交際を反対される。

中条・・・中条朝美の父。大手医療機器メーカー役員で娘可愛さに金で2人を別れさせようとする。

嘉島孝文・・・従兄で親が決めた朝美の婚約者。

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梅村・・・直貴の高校の担任教諭。

倉田・・・直貴がリサイクル会社勤務時の季節労働者。直貴が大学の通信教育を受けるきっかけを作る。
福本・・・リサイクル会社の社長。
立野・・・直貴のリサイクル会社の時の同僚。

寺尾祐輔・・・直貴の大学通信講座の同級生。直貴を自分のアマチュアバンドのボーカルに誘う。

平野・・・直貴の大学卒業後の就職先「新星電機」の社長。直貴に真理を教えてくれる。

町谷・・・新星電機の1年先輩で同じ社宅に越してくる。

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緒方婦人・・・被害者。独り暮らしの資産家の老女。

緒方忠夫・・・被害者遺族。被害者の長男。

あらすじ(ネタバレ)

序章
武島剛志は八方ふさがりだった。
両親が早世し、親がわりに優秀な弟・直貴を養っているが
大学進学させる資金がない。
不器用で物覚えも悪い剛志は、肉体労働しかできないのに
腰と膝を痛めそのような仕事もままならなくなったのだ。

剛志はかつて引っ越し屋で働いていた時に行った優しい裕福な老婦人のいた緒方家を思い出した。
「少しぐらい盗まれても大した痛手でないだろう。むしろ自分のような人間だと知れば許してくれそう」
留守の家に忍び込み100万入った現金を見つけた。
脱出目前に直貴の好きな天津甘栗も持って帰ろうとリビングに行くと
留守だと思った緒方婦人と鉢合わせた。

恐怖で叫び声をあげ、警察に通報しようとする緒方婦人を剛志はドライバーで刺殺した。

剛志はすぐに逮捕された。

第一章 
「事件の動機は直貴の進学費用の為」と知り直貴は合点がいった。
2人は亡き母からは父の過労死後「これからは学歴だ」と
散々聞かされ2人に大学進学を強く説いていた。
その母も剛志がトラブルを起こした翌日に過労死し
剛志は高校中退し直貴を進学させることに躍起になった。

初めて面会した剛志に怒りとも悲しみとも言えない感情を抱いたが
被害者の家の前を通りかかった時、最も不運なのは緒方婦人だと気づくも
どうしても謝りに行く事は出来なかった。

担任梅村に知り合いのエスニック料理店のバイトを紹介されたが同級生にバラされ
自分の存在が客や店に『タブー』であり気を使わせる存在になったとクビを受け入れた。

剛志からの手紙は人に見られぬ様に、仕事に向かうバスの最後部席で読んだ。
事件により友達は去り、アパートを追い出された。
高校卒業後、最底辺のリサイクル会社の仕事を
梅村が探してくれて寮があるのでここに決めた。

剛志の刑期は約15年に決まり、刑務所から来る手紙には、青い桜の形の検閲印が押してあった。

第二章 

剛志からの手紙は、たわいもない事と
直貴にアプローチする同じ19歳の白石由実子はどうなったのか?
緒方家に墓参りに行ったか?の催促が書かれていた。

 
童貞のまま収監された兄に、白石の事を書いたのは軽率だったと反省した。

寮の同室になった倉田に兄の手紙を見られケンカになり、社長福本からも将来を考えるよう言われた。
倉田が大検をする事や、直貴も夢を捨てなくていい事、孤独な剛志に手紙を書くように言われた。
置いて行った参考書の中から大学通信教育の案内が出て来て、倉田の好意と感じ受けてみる事にした。

由美子はクリスマスカードや年賀状、バレンタインとアプローチが続き
直貴は面倒臭くなり「兄が刑務所に入っている。強盗殺人犯だ」と告げたが
その後も怯むことも壁も作らず声をかけ続けてきた。

4月から直樹は通信の大学生となり、スクーリングで一緒の寺尾祐輔から
なにかと直貴をあてされ、寺尾のバンドのライブに誘われ直貴も音楽にハマった。
寺島から無理矢理カラオケで歌わされた、直貴の歌声に
満場一致で「直貴をバンドに入れたい」と誘われた。

直貴は正直に「兄が刑務所に入っている」と話したが
寺島は「兄貴のこととおまえとどういう関係があるんだ。」
と、彼らは露骨に冷たく豹変したり、壁をつくることもなく
心底自分の声を求めてくれ直貴はバンド「スペシウム」のボーカルになった。

仕事、大学、バンドと仲間との日々は充実し
人気も上がり、由美子も応援に訪れたり
直貴に初めて訪れる青春の時間だった。

ある日「スペシウム」はついにレーベルの根津からメジャーデビューの誘いを受けたが
根津から「直貴はメジャーデビューさせられない」と言われ
メンバーの3人が寺尾は仲間を優先するから「自分からバンドを抜けるといってほしい」と言われる。
直貴は言われたとおりにすると伝え、悪夢から解放されたのはすべて錯覚だったと涙がこぼれた。

予想通り根津とメンバーの企みにも気づき寺尾は激昂したが、直貴が
「みんなは、兄貴の事件以来初めて心のつながる相手…大事な仲間から音楽を奪うなんてことはできない。」
「この社会から差別はなくならない」との言葉に
寺尾は悲しげに呻くように
「これまでおまえの兄貴を憎んだことがないが、今は心の底から腹が立つ、ぶん殴りたい」と言われ
「そうだな。俺もできることならそうしたい」と薄く笑って寺尾に背を向けて歩き出した。
 

第三章 

剛志からの手紙は
単調な収監生活で書く事がない事
6月から手紙の返事がない事や
通学過程に変えた事が誇らしいと書いてきた。

 
直貴は手紙を駅のゴミ箱に捨て、しかも手紙はもう保存していない。
明日をも知れない自分に比べ、剛志はやけに呑気に感じた。

転籍後、今は「BJ」というバーで身内はいないとウソをついて働いていた。
経営者は以前のエスニック料理店の店長に働きぶりについて電話したらしいが
店長は剛志の件は何も言わなかった。
彼らは、自分は関わりたくない…誰か別の人間が助けてやればいいのにーそれが本音なのだ。
ふつうの人間は自分のようなものを受け入れてはくれないのだ。

ある日、店に寺尾に聞いたと痩せてあか抜けた由美子が遊びに来た。
寺尾も月一くらいで店に訪れ、直貴の近況を聞いてくる。
由美子を口説き落としたい客の目の前で、直貴は由美子を冷たくあしらい追い返した。

直貴はいわゆる女にもてるタイプで自分の武器だと自覚しはじめた頃
ある日合コン誘われ中条朝美と出会った。
彼女とはひょんなことから打ち解けて仲良くなり
お互い惹かれる気持ちを止められず恋人になった。
楽しく幸せな日々が過ぎていき、朝美から「家に来て欲しい」と言われた。

朝美にも兄の事は隠していた。
裕福な朝美の家族が事実を知れば交際を認めるわけがない。
だが今のままでは自分は幸福な人生など送れない。
それを手に入れるには、何らかの力が必要だと確信していた。
兄貴の事は一生隠し続けなければならないーと直貴の中でそう気持が固まった。

剛志からの手紙には
直貴から手紙が来ず不安な気持や
母子3人でお花見に行った思い出話
レンコンの天婦羅や、猫を拾えなかったが元気でやってるだろうなどの思い出話
人生はなにかを選ぶ代わりになにかを捨てる事の繰り返しなんだな
ハガキ1枚に一言でもいいから欲しいと書いてあった。

 
直貴は読み終えてすぐに手紙を細かく破り、別の紙に包んで捨てた。
兄の手紙が忌まわしい過去に縛り付けられる鎖だと理解できず
公園の猫も翌日には死んでいたのを2人で見たのに美化する兄
幸せを選ぶために、兄貴を捨てると決めた。

できる限り身なりを整え、訪れた中条家で直貴は屈辱を味わう。
冷ややかな態度で両親は直貴を品定めし、呼び出した朝美のイトコの嘉島孝文と比較される。
強引に直貴を送る車中で孝文は朝美の婚約者だと釘を刺された。
翌日、朝美は憤慨し「自分の足で歩いているつもり」と高級な靴を履いて朝美は言う。
彼女を好きでも、剛志の存在なしでも中条家が朝美との結婚の同意は皆無だった。

中条家は直貴の身辺調査していると教えにきたリサイクル会社の元同僚の立野は将来、直貴にたかる気でいる。
店に来た由美子が言った「既成事実を作ったら勝ち」とのなにげない言葉を思い出し朝美を家に呼んだ。
だが、いきなり訪ねてきた孝文に見られた剛志の手紙の桜の印から嘘がバレた。

孝文が帰った後、朝美を押し倒したが激しく抵抗され穴をあけた避妊具も見つかり
「どうしてあたしに相談して、二人で乗り越えていこうっていうふうに考えられないわけ?」
「君はわかってない。世間ってものがわかってないし、自分のこともわかってない」
朝美は部屋を出て行った。

数時間後、朝美の父親中条が訪ねてきて、剛志の存在を隠した事に理解は示しつつ
手切れ金と交際の口止め料を渡そうとした。
しかも中条は土下座し、娘の為ならどんなことでもできるとし
「…事件以後、君は幸せだったかね?
…朝美が君と一緒になれば、その苦労をあの子も背負い込むことになる。
親としてはとてもできないのだよ」
直貴はため息をつき、中条氏の要望をのむと告げたが封筒の大金は受け取らなかった。

お決まりの結末にたどり着いただけだ、と自分にいいきかせた。
諦めることにはもう慣れっこになっていた。これからもきっと続く。
こんなことの繰り返しが、自分の人生なのだ…。

朝美と別れるため、由美子に恋人のフリをするよう頼んだ。
直貴は自分の立場が、結婚相手や生まれた子供にすら
同じ思いをさせ、引き継がせるものだと思い知ったと言う。
作戦は失敗に終わったが結局、直貴自身が朝美を拒絶し朝美と別れた。

第四章 
面接試験では「兄はアメリカに留学している」と嘘をつき
直貴は卒業後、有名な電器製品量販店に入社した。
就職を機に兄に内緒で引っ越したが新しい連絡先も梅村からバレてまた手紙が来た。
相変わらずの呑気な手紙に、直貴は唇を噛み便箋を引き裂いた。

由美子が就職祝いをしてくれた時、兄ともう連絡しないと言い
「兄貴のことがバレるたびに道を狂わされる。…いつかきっと俺は兄貴のことを恨むようになる。」
に由美子は黙り込んだ。
もう手紙が来ても読まず即座にゴミ箱に捨てた。

電器量販店の売り場で働き始めてから数か月後
店から新商品が根こそぎ盗まれる事件が起きた。
警察は内部犯の可能性も疑い、従業員個々の調査から武島剛志の存在がバレた。

1か月後、総務課長に呼ばれ真意を確認され従業員全員に知れ渡り同僚から距離取られた。
2か月後、犯行グループは捕まったが、直貴は物流部へ左遷された。
由美子は憤慨し社長に抗議の手紙を書くというが
直貴は「俺はもう見切りをつけた」
「俺の人生に、だ。俺はもう一生、表舞台には立てない。…もう諦めた」

新しい倉庫番の仕事中に背中から声がかけられた。
会社のトップ、平野社長だった。
「今回の人事異動は不当だと思うかね?」

平野は左遷に関与していないが「人事部の処置は間違ってないと私は思う」という。
「君はこう思っているだろうね。差別をされている、と。
…これまでにも不当な扱いを受けるたびに、君は苦しんで差別に対して怒りもしたはずだ」
「差別はね、当然なんだよ」と静かに言った。

絶句する直貴の表情を前に
「大抵の人間は、犯罪から遠いところに身を置きたいものだ。
…犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。
自己防衛本能とでもいえばいいのかな」

そして差別される側の人間は
「どうしようもない、としかいいようがないかな」と平野は言う。

怒りを覚えた直貴に続けて
「だから、犯罪者はそのことも覚悟しなきゃならんのだよ。
…罰を受けるのは自分だけではないということを認識しなきゃならんのだ。
君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ」
「殺人は、人それぞれの繋がりを無断で断ち切る事。
君のお兄さんはいわば自殺=社会的な死を選び、残された君の苦難も君のお兄さんが犯した罪」」
「(兄を憎むのは)君の自由だ。ただ我々のことを憎むのは筋違い
…我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる
……すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」

差別を正当化する意見を聞くのは初めてだった。
そして、直貴が急に同僚から距離を置かれたことを言い当てて
「君に対してどう接すればいいのか、みんなが困ったのだよ。
本当は関わり合いになりたくない。しかし露骨にそれを態度に示すのは道徳に反することだと思っている。
だから必要以上に気を遣って接することになる。逆差別という言葉があるがまさにそれだ」

「人事部の処置が間違っていないと言ったのは
…仕事以外のことで神経を使わなければならないようでは、お客さんに対して正常なサービスなどできない
…差別や逆差別といったものがなくならない以上、君を別の職場に移すしかない」

「君という人間が信用できないといってるんじゃない。
会社にとって重要なのは、その人物の人間性ではなく社会性なんだ。
今の君は大きなものを失っている状態だ」

だが平野は「社会的な死からは生還できる」
「方法は1つしかない。こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。
他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない。
君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりができれば、誰も君を無視できなくなる。
その第一歩を刻む場所がここだ」
自分にできるだろうか?と弱音を吐く直貴に平野は一通の手紙を取り出し 
「君はすでに一本目の糸は手にしている」と、ここに平野が来たのは手紙に突き動かされたからだった。

仕事を終えた直貴は、手紙の差出人由美子の元へ向かった。
留守の由美子の部屋の郵便受けに、桜の形をした検閲印の「武島直貴様」の表書きの手紙があった。
由美子が直樹に成りすまして文通し、内容は直貴と手紙で交流をしているような喜びがあふれ
出所後どうするかまで書かれた、希望に満ちたものだった。

由美子は謝ったが間違っていないという。
直貴は怒りながら「差別されたくないんだよ」と言った自分の言葉にハッとした。
由美子は「隠したって、現実は変われへんよ。…それやったら、立ち向かったらええのと違うの?」
直貴は、これまで自分が甘えてきたこと。
差別から逃げられないという前提で生き方を模索し、努力する決意したことを思い出した。
由美子に謝り、社長への手紙を感謝した。

由美子がどうしてこんなにもよくしてくれるのか?聞くと
父親の自己破産のために子供時代は借金取りから追われ
隠れるように生きてきて、今は父親とも会えない関係になった事。
「もう逃げるのは嫌なんよ。誰かが逃げるのを見るのも嫌。
だから直貴君にも逃げてほしくなかった。ただ、それだけ」
由美子の目から涙が一滴こぼれた。

第五章  

剛志の手紙は
直貴と由美子の3歳の娘の実紀の成長を悦び、実紀のことばかり書かれていた。

 
直貴一家は社宅でささやかな幸せを感じていた。
だが、隣に盗難事件の時に直貴の近くにいた1年上の社員だった町谷夫婦が引っ越して来た。
不吉な予感のどおり、町谷から近所の人々へ噂はあっという間に広がっていった。
じきに実紀が、公園で仲間はずれにされはじめ、近所の人たちもよそよそしくなった。
直貴は引っ越しを提案したが、由実子は「もう逃げないでがんばろう」という。

剛志の手紙は、花粉症とか実紀のこと、2人目を作れば?とか
刑務所の中には悪意など存在していないような、のんびりした事が書かれている。

 
最近手紙は由美子が書いていた。

実紀は保育園でも仲間はずれにされ、園内で問題になっていた。
おまけに剛志がじき出所し、直貴のところに転がり込んでくるとのあらぬウワサもあった。
会社でも疑われ事実無根と訴えても信用されない。
由実子のこれまでの人間関係への努力もムダになったのに剛志への返信を気にしていた。

平野社長と話す機会を得た直貴は、娘が直面している状況について相談した。
だが平野から返ってきたのは予想に反して厳しい言葉だった。
「厳しい言い方をすればまだ甘えている。君も奥さんもね。」
「逃げずに正直に生きていれば、差別されながらも道は拓けてくる。…しかしそれはやはり甘えだ。
自分たちのすべてをさらけだして、そのうえで周りから受け入れてもらおうと思っているわけだろう?
…心理的に負担が大きいのはどちらだと思うかね。君たちの方か、周りの人間か」

「正々堂々としているというのは、君たちにとって本当に苦渋の選択だろうか?
…非常に選びやすい道を進んでいるとしか思えない」
「答えなんかないよ。何をどう選択するか、なんだ。君が自分で選ばなくては意味がない」

平野を尊敬しているが、直貴は何が言いたいのかわからなかった。
思い悩んでいるとひったくり犯により由美子がケガをしたと連絡がきた。。
由美子は軽傷だが、実紀は意識が戻らず集中治療室にいて額には傷が残るという。
直貴は「絶対に犯人を許さない」と思った。

逮捕された前山繁一(21)はひったくりの常習犯だった。
数日後、前山繁一の両親が謝罪に訪れた。
前山夫妻が深々と頭を下げる姿に何を言えばいいかわからず
彼らの姿を見るのが苦痛だった。

謝罪に来た夫妻に大したもんだと思うと同時に自分はできなかったとも思った。
夫妻は悪くないが、許す気にはなれない感情にも気づき
…やっと社長から言われたことの意味が分かった
直貴は
「正々堂々としていればいいなんてのは間違いだってこと。
それは自分たちを納得させているだけだ。
本当は、もっと苦しい道を選ばなきゃならなかったんだ」
と、その夜直貴は兄に手紙を書いた。

今後は、貴方からの郵便物は一切受け取りを拒否すること。
理由は、家族を守るため。
事件により、これまで強盗殺人犯の弟というレッテルを背負い
さまざまなチャンスや幸福を諦め、不遇な目にあい
これからもそれなりの人生しか待ち受けていないこと。
それは娘の将来にもかかわることです。

これらの自分たちの苦しみを知ることが、貴方が受けるべき罰なこと。
この事を知らずして、貴方の刑が終わることがない事。
今後、弟であることを捨て出所後も関わろうとはしないでもらいたいこと。

 
絶縁の手紙を出した後、直貴は会社に退職届を提出した。

平野社長は
「犯罪者の兄とは縁を切り、自分たちの過去を知っている人々からは逃げ回るわけだ。」
「何が正しいかなんてことは、誰にも言えんのだよ…君が選んだ道は、簡単な道ではないよ。
これまでよりもっと辛いかもしれん」
兄を「赤の他人なので恨むも恨まないもない」という直貴に平野は皺だらけの右手を差し出し
「私にとってもいい勉強になった。君に出会えてよかったよ。」と感謝した。

新しい仕事を始めた頃、寺尾から連絡が来た。
バンドは苦戦し、風前の灯火だという。
直貴は兄と絶縁した近況を語り『イマジンだよ』と言った。
差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。
人間というのは、そういうものともつきあっていかなきゃならない生き物なんだ。
そう語る直貴から寺尾は直貴から目をそらしたが
剛志がいる刑務所への慰問コンサートを一緒にやらないか誘ってきた。

寺尾の誘いはいったんは断ったが
ひったくり犯の父親から手紙とディズニーランドのチケットが贈られてきた事に対し
由美子が、事件を忘れられない人が(自分たち以外にも)いると知れるだけで少しは気休めになる。
お兄さんの事件を隠せない人もいる。…ケジメをつけるべきだと言われた。

直貴は「緒方家」を訪ねた。
息子が応答し「あなたに見せたいものもある」とリビングに通された。
謝罪の言葉も、手土産も留守の妻子に知られたくないと受け取らず
線香もあげること断られたが、毎月剛志から送られてきた大量の謝罪の手紙を見せられた。

一通目の手紙には「弟に焼香してきてほしいと頼みました」と書かれ
次第に何らかの形で直貴の事を書いていた。
緒方は「正直なところ、私としては不愉快な手紙だったんだよ」
「いくら謝られても、母親を殺された無念さは消えない」
「弟の近況を伝えてくるのも忌々しく、刑務所にいながら幸せを満喫しているとさえ思った」
緒方は手紙を無視し続けてきたが、止めてしまえば事件を集結させることになる。
だから「手紙を書くな」と伝えなかった。

「そんな時、彼からの最後の手紙が来て、もう事件は終わらせよう、と決心した」と言った。
その手紙は直貴は読むべきだと思うし、君にやると言い
「直貴君、といったね。もう、これでいいと思う。これで終わりにしよう、何もかも」
「お互い、長かったな」
そういうと緒方は目を瞬かせ、天井を見上げた。

終章
直貴は慰問コンサートに参加することにした。
寺尾も由美子も何も詮索しなかった。
緒方から受け取ったあの手紙を読み
兄貴に弟の姿を見せるのはこれで最後なんだと言い聞かせステージに向かった。

『拝啓 
今日は重大なことを打ち明けたく、筆をとらせていただきました。
弟から家族を守るため、縁を切るといわれました。
このときの私の衝撃は
長年にわたって私の存在が彼を苦しめ続けてきた、という事実に震撼したのです。
またそういうことにまるで気づかなかった自らの阿保さ加減に、心底自己嫌悪を覚えました。

私はこんなところにいながら、何一つ更生などしていなかったのです。

同時に気づきました。
緒方さんへの手紙も、おそらく緒方さんにとっては
犯人の自己満足にしか見えない不快極まりないものだったに違いないと。
そのことをお詫びしたく、このような手紙を書きました。
もちろん、これを最後にいたします。
どうも申し訳ありませんでした。   武島剛志』

 
2人は『イマジン』というユニット名でステージに立つ。
目の前の坊主頭の中に剛志の姿を見つけた。
深くうなだれて、胸の前で合掌し、詫びるように。そして祈るように。
そんな剛志の姿を見た瞬間、直貴は身体の奥から突然熱いものが押し寄せてくるのを感じた。
直貴は胸の中で呼びかけた。
兄貴、俺たちはどうして生まれてきたんだろうな。
兄貴、俺達でも幸せになれる日が来るんだろうか。

前奏はとっくに終わっているが、直貴はどうしても声が出なかった…。
 
  

【手紙・東野圭吾】原作と映画との違い

原作と映画の違いは

主人公直貴
原作・・・バンド活動
バンドのボーカルとして活躍しようとしますが、レーベル側から後ろ暗い直貴の事情を案じられバンドを脱退します。
また、原作ではバンドの相方、寺尾は美青年という設定です。

映画・・・お笑いコンビ
高校時代の友人と笑いコンビを組んでいて、リサイクル会社の休憩時間にも練習したりします。
お笑いも良いところまで行きますがやはり、直貴が遠慮して相方に「自分の我儘でやめる」という誤解を解かないまま辞める事にします。
お笑いの相方は美青年ではありません。

恋人・中条朝美
原作・・・話し合いで別れます。

映画・・・父親にも説得されますが、直貴に会い気に来た朝美がひったくり犯に襲われ顔に一生残る傷を負い申し訳なさで別れることにします。

映画では恋人朝美が大けがをした事で直貴は加害者を恨むという気持を表現しています。またラストの刑務所への慰問はバンドではなく相方とお笑いライブをします。
『手紙』は何度も映像化されていますので、本を読まなくても感想文は書けそうですがうっかり原作にないあらすじの感想を書かないように注意です。
 
  

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【手紙・東野圭吾】読書感想文・例文レビュー5作品


 
読書感想文・書き方のポイント

下記の読書感想文・例文は「読書感想文の書き方のポイント」に合わせて書いています。

本と出会ったきっかけ
本の簡潔な説明
なぜ面白かったのか
心に残ったところ
本を読んでわかった事学んだこと変わったとこ

 

【手紙・東野圭吾】読書レビュー

その1~第三者の立場から
答えのない問いであると同時に、今まで自分が意識を向けたことのない問いだった。なぜなら「ひとごと」だから。 ハッピーエンドにはなり得ないのは自明だが、バンド、恋人、就職…その全てにおいて、直樹と共にかすかな希望を見て、その後すぐに奈落の底に突き落とされる。それを繰り返すごとに、さらに深い闇に落とされていく、そんな感覚だった。 だが、現実において私は今確実に差別をする側にいる。きっとこれからもそうするだろう。許すことは、きっとできない。それは間違いではない。だが正解はない。
————————————————————
その2~自分がその立場になったら
差別を他人事と思って見ていた。
しかし、直貴もまた、兄を捨てる、兄を差別する側に回らざるを得ない決断をした時
やっとこの物語の重さに気がついた・・・決して他人事ではないのだ。
人間は決してひとりでは生きていけない。
でも人と人との関わりは、優しいものだけではない。
自分が関わりたくなくても、関わらざるをえない付き合いもあるのだ。
自分がいつ差別する側、差別される側になるかもしれない。
「差別は悪」だなんて簡単にはいえない・・・・
そして、そこでとった直貴の行動・・・
決して安易なハッピーエンドではないけれど、
直貴の決意は精一杯誠実なものだったと思う。
だから最後は本当に泣けました。
————————————————————
その3~犯罪を犯す前に
罪を犯す。それはどういう事か。
被害者の家族、そして自分の家族をも苦しめる。
それでも世の中から犯罪は無くならない。
家族が罪を犯したら…。
それは、私には想像できないほど苦しいことだということがこの作品で心底伝わって来ました。
会長の言った言葉。
とても辛い言葉です。
理不尽とさえ思えてしまいます。
でも、直貴はそれを、いつのまにか受け入れて、
そして日常を過ごしていった。
兄を捨てる覚悟で。
直貴を進学させてやりたいがために、
わずかのお金のために人を殺めてしまった兄。
毎月毎月欠かさずに、被害者の家族と弟へ書き続けた兄。
その、大人なのに単純で、純真無垢な行動が、とても切なかった。
善悪の判断がつかない程、腰の痛み、そして精神的にも
追い詰められていたのでしょうか。
もう一呼吸おいて考えて欲しかった。
————————————————————
その4~被害者の立場に立って
これは犯罪の加害者を身内に持った者が蒙ることになった苦しみを、
社会的な意味でも、精神的な意味でも、彼等がどう乗り越えていくかということを描いている作品です。
実際になんらかの犯罪被害にあった方々にとっては
生理的に嫌悪感を抱きかねない内容になっていると思います。
この作品だけで考えると、犯罪加害者の身内というのは大変だなと思えるような内容です。
日本では受刑者の処遇はしっかりと配慮されても
被害者側に対しては「すずめの涙」程度しか割かれていないという
現実も頭に置いておかねばならないことだと思いました。
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その5~犯罪に関わった人の救いとは
加害者、被害者とその家族、第三者からの目から見ても何が正解なのか?
答えがない問題がこの物語のテーマです。
犯罪者の家族が罪を犯したわけではない
倫理的に差別はいけない
でも心情的にどうしてもその犯罪を思い起こさせ
恐怖心や怒り、疑心暗鬼など関わりたくない人になります。
平野社長は
「我々は君のことを差別しなきゃならない…罪を犯せば家族をも苦しめることになると犯罪者にそう思い知らせるためにも」と
家族もろとも社会的制裁を受けるのは当然と言い、それにどう対処するかの答えはないと言います。
恋人、朝美と別れさせるため父・中条が札束持参で土下座された直貴は
数年後、妻子を守るために、差別されてきた自分が兄を差別し絶縁するのです。
これにより剛志自身がやっと、罪とは自分の存在自体が罪になる事を自覚し
本当の自戒をすることで、被害者遺族が「もう終わらせましょう」
憎む気持を止めるのです。
きっと誰でもニュースで聞く犯罪は、いつも遠いところにあり
加害者の家族とも関わることのない別世界の問題と頭のどこかで受け流しています。
ですが、私たちの中にある正義感は見ず知らずの犯罪者に対して
ニュースやインターネットを通じて攻撃し排除する気持を表します。
たしかに差別や偏見のない世界は想像の産物で
人間というのは、そういうものともつきあっていかなきゃならない
自分本位な生き物であると認めざるを得ないのでしょう。
その制裁を甘んじて受けることが犯罪を犯した人が背負う十字架です。
兄と絶縁した直貴も本当の意味で苦しみを乗り越えたのではないのかもしれません。
ただ、答えのないこの物語で真理と思えたのは
犯罪に巻き込まれた人はその憎しみを持ち続ける事で不幸になる事
苦しみから逃れたいなら、罪を許すか別れるしか救いはないのだろうと思いました。


なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫)
門田 隆将

内容紹介
1999年4月、山口県光市で23歳の主婦と生後11カ月の幼児が18歳少年・Fに 惨殺された。たった一人残された夫・本村洋は、少年法によって二重三重に守られた犯 人Fに果てしない闘いを挑んでいく。少年法を前に思考停止に陥ったマスコミや、相場 主義・前例主義によって形骸化した司法の世界など、本村の前には想像もできなかった 厚い壁が次々と立ちはだかった。絶望に打ちひしがれ辞表を出す本村に、上司は「労働 も納税もしない人間が社会に訴えてもそれはただの負け犬の遠吠えだ。君は社会人たり なさい」と説き、裁判で敗れた検事は「たとえ100回負けても101回目をやる」と 語りかけるなど、さまざまな人たちが、絶望の淵を彷徨う本村を支えていく。日本の司 法を大変革させることになる歴史的な光市母子殺害事件の陰で展開された知られざる人 間ドラマ。9年間にわたって事件を追いつづけたジャーナリスト門田隆将が差し戻し控 訴審判決の翌朝、広島拘置所で犯人Fから吐露された意外な言葉とは――。2010年 秋放送、WOWOW「ドラマWスペシャル」(江口洋介主演)の原作にもなった感動ノンフィ クション。

本作は現実に会った事件の被害者遺族である本村洋さんの戦いが記されたノンフィクションです。
あまりにショッキングな事件と残酷な法律の現実に、心が打ちのめされる内容ですが
この事件をきっかけに日本の司法が大きく変わり、日本人の犯罪に対する意識も変わった大事件です。
「手紙」では犯罪者側の事情をくみ取りたくなりますが、本作ではやはり遺族の苦しみを思うと
犯罪者を許せなくなります。
どちらも社会の一員としては犯罪に対する考え方の指針となりますので、読書必須の書です。

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