「その扉をたたく音」読書感想文あらすじ・ネタバレ・感想文書き方のコツ

「その扉をたたく音」

瀬尾 まいこ (著)
出版社 ‏ : ‎ 集英社 (2021/2/26)
発売日 ‏ : ‎ 2021/2/26
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 216ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4087717410
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087717419

内容紹介
29歳、無職。
ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路は、ある日、利用者向けの余興に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの演奏を耳にする。
音色の主は、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく――。
人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。

こちらでは
2022年の「第67回 青少年読書感想文全国コンクール」高校生の課題図書「その扉をたたく音」の「あらすじ・ネタバレ」と読書感想文の書き方・大ヒントと例文をご紹介いたします。

【読書感想文2022高校生課題図書】あらすじ例文・おすすめ課題図書紹介と選び方


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「その扉をたたく音」あらすじ・ネタバレ・こんな人にオススメ 
「その扉をたたく音」読書感想文の書き方の大ヒント 
「その扉をたたく音」読書感想文・例文とみんなの感想 
 
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「その扉をたたく音」あらすじ・ネタバレ・こんな人にオススメ

読みやすさ ★★★★★
感想文の書きやすさ ★★☆☆☆
こんな人にオススメ

・漠然とした悩みがある
・ゆずれないものがある
・やらなきゃいけないことはあるけど、動き出せない
・音楽が好き
・目標がない

 
「その扉をたたく音」登場人物

宮路:29歳.
ミュージシャンへの夢を捨てきれず、資産家で市議の親の仕送りで怠惰に生きているニート

渡部:25歳。若くして人生を達観した「そのかぜ荘」の介護士。宮部いわくサックスの天才でセッションに誘われる。中学時代駅伝をやったことがある。

宮路父親:資産家で市議会議員。息子に厳しいが、高校で高級ギターを与え、就職しないと言った宮路を追い出したが仕送りはしている

バンドメンバー
麻生:ドラム 村中:ベース 香坂:ボーカル

「そよかぜ荘」
水木静香:90歳の入居者のおばあさん。乱暴で口も悪く、宮路の性格を見抜き“ぼんくら”と呼んで使い走りにする

本庄:ギターを教えて欲しいとウクレレを持ってきた、真面目に練習するおじいさん

「その扉をたたく音」あらすじ・ネタバレ


いた、天才が。いや、ここまできたらもはや神だ。どうしてこれほど能力のあるやつが、こんなところにいるのだろう。真の神は思いもかけない場所にこそ、現れるものなのだろうか。

老人ホーム「そよかぜ荘」に「わけわからん曲」と全くウケないギターをボランティア演奏した宮路は、神がかったサックス演奏した介護職員・渡部セッションしたくて「そよかぜ荘」に通うようになる。

宮路はミュージシャンになる夢を諦めず大学卒業後も定職に就かず、資産家の親の仕送りで無為に過ごし、もはや何になりたかったのかも不明になった29歳。だが高校のかつてのバンド仲間の結婚や仕事で悩んでいる姿に、置いてきぼりを感じ、5か月後の30歳にはもう音楽をやめなければいけないとは思っていた。
渡部に“グリーンデイ”の『ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ』(夏は終わる。無邪気なままではいられない。九月の終わりに起こして欲しい)を強引に吹いてもらい、宮路は感動するが「音楽には興味が無い」とか「僕には宮路さんと違って仕事があるから」と相手にされないが友達にはなれた。

それに入居者のばあさん・水木静江に“ぼんくら”と呼ばれつつも、老人たちの使い走りの「息子」扱いで施設に出入りしやすくなり、預かった金よりうっかり高いハンドタオルを買ってきて「しまった」と思ったりもしたが、本庄さんというおじいさんが「ギターを教えて欲しい」とウクレレを持ち出してきたので、大義名分で堂々と週1度「そよかぜ荘」に通うことになる。

はれて友達となった渡部と飲むと、祖母と2人暮らしで余裕がある家庭の子に見せたくて吹奏楽部に入りサックスをはじめたけど、ひょんな事で駅伝で走ってからサックスに熱心になったという。
宮路は逆に金持ちを鼻にかけていると思われないために、高校まで息をひそめていた。でも「世界に広がる音楽を!」と誘うので「お金持ちは羨ましい」と言われる。カチンときた宮路は“金持ちの苦労”と“音楽のすばらしさ”を語り泥酔し家に送り届けてもらった。




老人たちへの買い物もよく考えて選ぶ宮路は評判が良く、ウクレレスターターセットを買って習得してほめながら教え、本庄さんも練習熱心なので上達が早く、2人で「上を向いて歩こう」の演奏会をしようと盛り上がる。そよかぜ荘をスッキリした気分で帰るが、うっかり渡部を誘う目的を忘れかけていたのを思い出し、熱心にセッションしたいと説得。9月の第3週のリクレーションの時間に発表することになった。

渡部は淡々とはしているが、デスクの上に飾ってある“中学時代にもらった絵”を見るたびに「もう少しやれそうな気がして」といい、宮路の高校の時のような“心を弾ませるもの”が詰まっているのを感じた。宮路も「もう少しやれそうな気」がしてきていた。

初練習のセットリスト決めで、渡部は駅伝をやってからサックスが以前より楽しくなり、祖母が苦労して買ってくれたことに応えるためにも練習したと聞く。
父親は仕送りはくれるが「働かないなら出て行くべき」と言われ宮路は泣きそうになったが、ギターをやりたいと言えば、その店で一番いい10万近くするのをすんなり買い与えてくれた。その親父の気持に思いをめぐらせたことが無いから、これに見合う音が出せないのか?と。それでも高校の時のような今の心躍らせる時間が続けばいいと思った。

本庄さんは練習に熱心で、「上を向いて歩こう」の歌声も心にしみるほど上手い。
買い物は水木のばあさんが全部金を出しているのが気にかかった。
宮路は金持ちの子で小学生の時、うっかり友達におごったことでパシリにされ、純粋に友達として見てくれる奴がいなくなった“金で友情をなくす経験”から、中学まで目立たない特徴のない人間として振る舞った。
だから高校で「音楽をやれば仲間ができる」と思いギターを始め、クラスの仲間でバンドを組みかけがえのない青春をすごすことができた。

買い物の金をもらえと水木のばあさんに言うと、「もう人間関係を考える年でもない」「毎日が快適ならいい」という。




渡部は丁寧に辛口だけど練習は楽しく、家庭問題や恋人には祖母を受け入れてくれる人がいいとの思いや、渡部は強引に駅伝に誘って絵も描いてくれた美術の先生みたいに、宮路も本庄さんにウクレレを上達させていて奇跡を起こすタイプだといわれる。高校時代バンド仲間との楽しい関係は、「パシリのイメージを払拭できてなかったのは自分だけだった」と気づいたり、音楽以外の友情を満喫した日々を思い出した。

だがその次のレッスンの日、本庄さんに認知症が発症し「泥棒」とはげしい罵声を浴びせられた宮路はショックで泣いてしまう。
水木のばあさんは「ぼんくらが落ち込んでいようが、現実世界は動く…ここはぼんくらの住む世界じゃないだろう」と“何かおもしろい小説”という買い物リストを渡してきた。
小説は考え抜いて10冊買って、読んでおもしろかった『赤毛のアン』星新一の『妄想銀行』にした。
次の週、本庄さんは平常でいつものように練習し「上を向いて歩こう」が完成した感動で、80過ぎのじいさんと盛り上がり、二人は何度もセッションした。そして本庄さんは次に坂本九の『心の瞳』が「わたしと先生の事みたい」だからセッションしたいといい、宮路も「絶対にやろう」と何度も言った。
だが翌週、本庄さんは認知能力がおとりコミュニケーションが取れない人のいる3階の部屋に移動していた。

落ち込む宮路に渡部は、宮路の甘さや入居者に対する責任をきっぱりと話し
「自分がかわいそうで泣いているのか?」
「どれだけ自分を大事にして生きてきたんですか?」
「宮路さんが歌ってうっとりするために、ぼく担がれてるんじゃないですよね?」
「気持ちよくなりたいなら、カラオケに行ってください」

と狙って冷酷な言葉を投げ続けたが『東京ブギウギ』はわざと陽気に吹いて明るい気持ちにさせられた。
音楽をやっている時は楽しさで、父親に拒絶され所在ない自分への不安が薄れるが、本当は父親は音楽より息子の目的の無さを危惧していることや、それでも現状を変えられないのは宮路自身が音楽をとおして、人とたくさんの感情にあふれる経験にしがみついていると、わかっていた。




9月18日の演奏会当日。
演目は『東京ブギウギ』『ジョニー・B・グッド』『心の瞳』『上を向いて歩こう』
宮路は演奏しながら「父親が宮路自身が自分の足で歩けることを望まれ応援されている」とわかっていたことや、本庄さんが「『心の瞳』がどうして二人の歌と言ったのか?妻に先立たれても途方に暮れず、ここで姿勢を正し前を見ていた」と気づき、歌の歌詞の意味から“自分以外の人との時間を共にすることで何をもたらすか?”を最後まで分からせて欲しかったと泣いていた。
でも最後の『上を向いて歩こう』はみんなでメチャクチャな合唱に宮路はゲラゲラ笑った。
そしてやっと渡部のサックスにあんなに惹かれたのかわかった。渡部の音楽は自分のためじゃなく、目の前の人に向けられていた。人と交わり、彼自身の内面の濁りや汚れが削られているから、澄んでいたから、俺を引っ張り出したのだと。

ステージが終わると水木のばあさんが牛乳パックで作ったペン立てを「正直いらないだろうけど」と言いつつくれ、宮路は大切に持って帰った。
翌週の買い物を届けに行くと水木のばあさんは「9月は終わるんだ。もう来なくていい。ぼんくらも私も起きる時がやってきた…無邪気でいるのは終わりだよ」と言う。水木のばあさんは入院するのだ。
宮路の祖母が検査入院の緩やかな生活で3週間で亡くなったことから、強く反対したが聞く耳を持たず振り切って部屋に戻ってしまった。渡部からは「だいぶ無理していたようだ」という。そして宮路宛の手紙を渡された。

ぼんくら息子へ

ぼんくら。もうバカで単純で陽気な振りをするのはやめな。
・・・宮路が高齢者に寄り添うことができ、相手の気持ちを思いやり買い物するヤツが何も考えてないワケがない。無邪気でいるのは終わりだ。・・・老人ホームに入った時点で人生が終わったと思ってたが最後の四か月は最高だった。
忘れたくない。そう思える日々が送れてよかった。ありがとう。 水木静江
 

 
宮路の演奏を小ばかにしてからかいつつ、介護に自尊心が傷つき惨めさで死にたい思いだった時に“ぼんくらをみて前向きになれたこと。でも現実世界は動き、少しずつ認知症の症状や粗相もはじまり、忘れたくない記憶も消えること。その前に、宮路に伝えたい思いがしたためておくことにした、という。手紙のなかの言葉は、宮路への最後のメッセージがあった。 


エピローグ

渡部が水木のばあさんの葬儀に誘いに来た。
宮城はあの手紙から二週間近く引きこもり、もう泣く力も残ってなかった。高齢者の死というごく普通の現実を受け入れられない、世間知らずだと気付かされた。
渡部は「時がいろんなことを解決してくれるんは、ちゃんと日常を送っているからですよ」そして利用者の死が仕事で慣れていても耐え難い悲しみだといい「ぼくを葬儀場に一人で生かせないでください」との言葉に完全に目が覚めた気がした。俺だけが真ん中にいた世界はもう終わったんだ。

葬儀は告別式だけの簡素なもので、2人の息子を育て上げたなど大嘘で、身寄りはなく宮路と渡部、介護の前田さんしかいなかった。前田さんは棺のなかに、いつも使っていたブラシ、お気に入りの帽子、赤毛のアンシリーズ9、最後に一番の宝物だと“高級タオル”を入れてあげてと言われた。
水木のばあさんは「宮路さんにもらった高級タオルと自慢してた」というが、俺が買ったんじゃない、親父の金だ。
俺、すぐ動き出すから。俺が体と頭を動かして手にした金で、ばあさんに持っていてもらえるものを、ちゃんと贈るからと顔をしっかり見て誓った。

2週間で三十八件受けた面接はバイト経験もないので、全滅していた。
葬儀の翌日、父親に仕送りを断った。「ずいぶん時間がかかったな」と笑う親父も目覚めるのを待っていてくれたとわかった。「そよかぜ荘」に忘れ物を取りに来たが、もう歌いには来ない事ことにした。そして渡部がデスクに飾った絵を描いた人が好きだと気づき言い訳にせず、勝負してみろとはっぱをかけた。

渡部は「最後に3階に上がってみます?」と誘ってくれた。
しんとしたフロアからウクレレの音が聞こえた。その響きは俺が一緒に作ってきた音で、何の曲かわからないが、最高の音だった。

いた、天才が。どうしてこれほどの能力のあるやつが、こんなところにいるのだろう。俺の心を揺さぶる音。それはいたる場所で奏でられている。

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「その扉をたたく音」読書感想文の書き方の大ヒント


【読書感想文の応募要項】
・高校生の部 本文 2000字以内
(作文用紙400字×5枚)

 
 
 読書感想文の書き方

青少年読書感想文全国コンクール審査基準
    ○ 応募規定にあっているか
    ○ 発達段階に応じた適切な本を選んでいるか
    ○ 読書のよろこび、楽しみが感じとれるか
    ○ 広い視野から作品を評価しているか 
    ○ 登場人物の心情や、作品の語っているものを的確にとらえているか
    ○ 著者の論旨を的確にとらえているか
    ○ 事実と著者の意見とを区別してとらえているか
    ○ 自分の意見・感想を率直に述べているか
    ○ 自分のことばで表現しているか
    ○ 発達段階に応じた考え方が表現されているか
    ○ 規定の文字数を十分に生かし、自己の思いを表現しているか
    ○ 読書によって得た自己の変革がみられるか
    ○ 規定の文字数を十分に生かし、自己の思いを表現しているか

 
・作者の物語で言いたいことは何か?のコツを押さえる

小説にはかならず「テーマ」があります。
そのテーマにそって、自分の意見などの感想と結論を書きます

・適度な自己開示を込めて書く

読書感想文には「成長のあとがみられる」と高評価になります。
・感想、疑問点など
(特に面白かったところ、感情が動いたところ)
・自分の意見、似たような経験談
・本を読んでの意見
(本を読んで学んだこと、自分の意見、今後の生活に生かしていく。など)
特に、主人公のやらかしと似たような自己開示や体験、そして成長を書くと高評価です

「その扉をたたく音」読書感想文大ヒント!作者の言いたいこととは?

作家・瀬尾まいこインタビュー「誰かと関わろうとする限り、素敵なことが待っていない人生なんか絶対にないので。私はそう信じています」 より

(宮路は)自分の殻に閉じこもっていたので、社会を知らないから成長もできず、結局大人にもなれていないんですよね。しかも、ぼんぼんなので、いまだに親から仕送りをもらいながら生活しているという。いいご身分ですね(笑)。
(渡部は)宮路と渡部を対比的に描こうとか、ことさらドライな人にしようと思ったわけではないんです。長く老人ホームに勤めて、これまでたくさんのお年寄りに接しながら介護に携わってきたので、面倒見がよくて現実的な考え方をするお兄さんは絶対いるだろうなぁと思って。

(2人のかけあいを面白おかしく読んでもらいたい)
宮路・・・前のめりにバンド結成を持ち掛け「音楽は思いを自分の演奏に乗せられるんだぜ」「老人ホームで演奏するんじゃなくて、もっと広い世界で」とか、言葉遣いだけは大物ミュージシャン
渡部・・・「ぼくは地名を叫ぶことに喜びを見いだせそうにないです」と、超冷静で(笑)。宮路と渡部の絶妙にかみ合わないやり取り

(高齢者とのかかわり方)
水木のばあさんから「ぼんくら」といじられても、そのうち気の利いたアイテムを選んだり、世話焼きな一面を見せ始める。本庄のじいさんにウクレレを教えるようになったり、だんだん入居者たちの輪に溶けこみ始める
週に一度誰かが会いに来るのって、お年寄りからしたらすごく楽しみだと思うんですよね。それに、老人と会話するにあたっての速度とか、声の大きさとか、大事じゃないですか。そのへんのさじ加減が自然と身についている宮路には、一目置く・・・ほっとけない兄ちゃん化する宮路。

(「青春」を描くということ)
(宮路)他者との触れ合いから宮路の心もゆっくりと動き出して、無風だった日常が少しずつ色づいていく。ひとりの男性が殻を破ってどんどん世界に進んでいく様子
いつも胸がギュ~ッと締め付けられるような感じっていうか。嬉しくて楽しくてハラハラドキドキしてたかと思えば、落ち込んでウジウジグズグズする。何をやってもうまくいかなくて、焦りもあるんだけど、とりあえず前に進んでかなきゃならない……そんな青春の煌めきが、宮路には29歳にしてようやく訪れたが、経験には年齢関係ないというか、もちろん大人になればそういう機会は減るけど、その揺れ動きがあれば、中学生だろうと30歳手前の男だろうと青春だし、青春小説になると思うんです。

(老人ホームが舞台)
ほのぼのとした交流だけではなく、人生の終わりが近づいた人々に訪れる現実
死ぬという老人ホームとって、それは当たりの現実に、戸惑ったり傷ついたりし、宮路にとっての現実に裂け目を入れていく…このままじゃダメだ、でも何をどうしたらいいかわからない……という、宮路のジリジリとした焦燥感
『そして、バトンは渡された』で本屋大賞をいただき、書店員さんが必死で本を売ってくれている姿を見ながら「小説を書くことは仕事じゃない」なんて言うのは無責任だなぁと思いました。いま書くことが楽しいのは、趣味ではなく、仕事だという意識でやっているからこそだと思うんです。

(偶然の音楽と動き出す人生)
音楽を聴くと、何もない状態から突然胸が震えたりするじゃないですか。それくらい音楽の力って大きい。
アメリカのパンクバンド、グリーン・デイの『ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ』のフロントマンのビリー・ジョー・アームストロングの父親を亡くした悲しみが綴られていて、宮路の置かれた状況や心境とも完全にシンクロしている宮路へのメッセージにできた。

(他者と関わることの意味)
ひとりでいても人生は変わらないけど、誰かと関わることによって絶対に動き出す何かがありますよね。素敵なことが待っていない人生なんか絶対にないので。私はそう信じています。でも何より、この物語は楽しく読んでもらうのが一番だと思って書いたので、読んでいただいた誰かの気持ちが、少しでも明るくなるなら幸いです。

「その扉をたたく音」読書感想文・例文とみんなの感想

バンドマンは女の敵とはよくいわれるが、この物語の主人公は“40歳の童貞男”並な奥手さ?いや自家発電もできないのだからよりキモチ悪さを感じた。
口は悪いけど、性根の悪い人は1人もいない世界観。だが、20代なのにSNSですら自分を発信せず、女に寄生して音楽活動するをする狡猾な向上心もない。
高校のバンド経験に固執する停滞した高等遊民はどう考えてもキモチ悪い。
実際は「やればできる子」だが、高校の逆転リア充経験より小中学時代のパシリ経験への遺恨を引きずるあたり、結局お坊ちゃんのプライドの高さを感じた。
日常にいる異常性のある人とは、いつの間にかできたほくろが、気が付くと腫瘍になっていたような感じで、攻撃性や圧倒的不快感を感じさせないが「それ大丈夫?」な状態。この主人公のように一見正論だと思わせるような事情の「困った人」と思わせながら、実際は市民の税金から得た父親の給与で生きている、遠くにいる迷惑なぼんくらなのだと思う。
この作者の作風はやさしい人ばかりと言われるが、作者自身、日常の危ないほくろに気が付かないぼんくら?もしくはそれを気が付かせない策士かもしれないと思った。

29歳無職の主人公が老人ホームで見つけたものは…瀬尾まいこさん最新作は一歩を踏み出す勇気をくれる物語
 瀬尾まいこさんの小説はいつも、とても優しい。でもただ優しいだけじゃなくて、主人公も読んでいる人も甘やかさないピリリとしたスパイスが効いている。その塩梅があまりに絶妙だから、読み終えたときには傷ついていた心がわずかに癒され、自力で一歩を踏み出してみようという勇気が湧いているのだと思う。最新作『その扉をたたく音』(集英社)の主人公・宮路はだいぶ甘ちゃんだけれど、それでも、その読後感は変わらない。
 宮路は29歳、無職。実家から毎月ふりこまれる20万円の仕送りで生活する彼はギターを片手に音楽の夢を追い続けている。といってもデビューのアテがあるわけでもなく、物語の冒頭で彼が演奏する舞台は老人ホーム・そよかぜ荘。観客である老人たちは白けた雰囲気を隠そうともしない。そんな宮路の前に現れたのが、ホーム職員の渡部。彼の吹くサックスは老人たちだけでなく宮路をも魅了し、そよかぜ荘に足しげく通うことに。
 この渡部と宮路のやりとりが、読んでいてまあ、ハラハラする。家庭の事情で小学生の頃から祖母と2人暮らしの渡部には、仕事をさしおいて夢を追いかける余裕なんてない。それなのに「才能がもったいない」「一緒にもっと広い世界に出よう」と宮路はうるさい。初対面の入居者の老女・水木にぼんくら呼ばわりされるのも当然の無神経さだし、キレずに応対し続ける渡部との、人間としての出来の違いがきわだつばかり。その応対能力の高さに、介護士の仕事のなんたるかも垣間見える。
 渡部もただの好い人ではなく、本人に向かって「ばかだと思ってる」と言い放つし、必要のないことは容赦なく聞き流す。それでも、仕事相手でもなんでもない宮路を切り捨てようとはしない姿に、彼がこれまで積み重ねてきたのであろうあきらめと、ばかで甘ちゃんで自分とは真逆の人生を歩んでいる宮路へのほのかな憧れが伝わってくる。作中では渡部の心中がセリフ以外で語られることはないけれど、だからこそ、よりいっそう2人の対比がきわだって、物語は深みを増していくのである。
 自分がどんな人間かなんて、ひとりきりでいるうちはわからない。たとえ気の合わない相手だったとしても、誰かと触れあい言葉をかわすなかで、自分が何に驚き何に笑い、そして何に泣く人間なのかが見えてくる。そよかぜ荘で出会った水木に指示され、宮路はいつのまにか老人たち相手の買い物係・レクリエーション相手としてこき使われることになるのだが、文句を言いながらも宮路はいちいちきまじめに対応していく。あきらめが悪くて頑固だけど、押しに弱くて流されやすい。無神経だけど、情にはもろい。そんな宮路の人としての“かたち”が浮かびあがっていくにつれ、妙にほだされ肩入れしてしまうのだけど、それはきっと、水木も渡部も同じなのだろうと思う。“先”の見えている老人たちと関わるには、あまりに傷つきやすくて覚悟のない彼にあきれながらも、いつのまにかそのしょうもなさに癒され、心が奮い立たされていく。
 こういう背中の押され方もあるのだ、と思う。〈ぼんくらが落ちこんでいようが、現実世界は動くんだよ〉というのは水木の言葉だけれど、誰かと触れあっても触れあわなくてもどのみち世界は動いていくし、大切な誰かは生きて死ぬ。だったら、関わったほうがいい。言葉も、歌も、心も、すべて自分と誰かを動かすほうに使ったほうがいい。ものすごく些細な力で、そこになんの“意味”もなかったとしても。
 なぜ渡部のサックスがあれほどまでに胸を打ったのか、その答えに宮路がたどりついたとき、読者もまた一歩を踏み出す勇気をもらっている。

何も目的意識を持たず、ただ生きている青年が、知らないうちに自分の行動が他人の生きる力になっていることに気づき、生かされていくところに胸打たれました。家族とか他人とかの垣根を超えた、人を大切に想う気持ちは自然と生まれるのだとあらためて感じました。

無邪気でいるのは終わり
ミュージシャンの夢をあきらめきれない若者が、老人ホームで出会った人々との関わりから自分の足元を見直していく。
読みやすく、著者の作品らしいじんわりとおだやかな気持ちになれる作品。ただ何か物足りなさもある。予想通りの展開だったり人間のきれいな面だけの描き方で、良い話ではあるのだけどどこか見たことのある印象が残る。

30歳手前で、無職、バイトもしない。生活費は親からの仕送り。という主人公。世間知らずで、ナルシストぎみ。人生への考えは甘い。だけど何も考えていない訳ではない。悩みもある。老人ホームでの経験から前を向こうとする。どんな人にも優しくスポットライトを当てる瀬尾まいこさんらしいお話。

有限に時間があるわけじゃないと、今更ながらに気付かされた。わかってはいるんだけど。 宮地くん、起き上がれてよかった。

瀬尾まいこの世界観でした。特に大きな出来事はおきないんだけど、人と人との繋がりが時間が立つにつれて生まれ、その繋がりに気づくことで主人公に変化が生まれ動き出す。

人は誰かに必要とされることで力が出るし、自分が誰かの人生に役立つ事で、生きる力にもなる。人生に迷う青年の扉をたたいたのは、人生の末路を迎えた老人たちとの触れ合いだった。偏見なく、人の内面を見れる水木のおばあさんと本庄のおじいさん。もう水木のおばあさんの手紙には号泣。その心の扉をたたく音は、誰の人生にも必ずある。きっと特別ではない些細な日常の中に。自分と正面から向き合ってくれる人がいれば、人生に光を見出すことができるのかもしれない。寂しさの向こうにはちゃんと光が灯っていることを気付かされる一冊でした。

今回も心が温まる物語でした。
ただ、温まるだけでなく「病気」「老い」「別れ」など心が冷える部分が突然押し寄せてくる瞬間もあり、現実そのものであるような気持ちにもさせてもらいました。
「自分以外を中心に置けるか」。それが大人と子供の違いでしょうね。

 
 
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「その扉をたたく音」読書感想文の書き方【例文つき】

入賞作品集(過去の入賞作品まとめ一覧)
 
 

読書感想文の書き方は経験者から学ぶ!

読書感想文の入賞作は審査員の合格基準に達した書き方をしています。
一言で言うと「読書したうえでの学習効果が感じられるか?」です。
参考になる入賞作は大いに参考になります。
昨年の入賞作2点を参考に、書き方のコツを学びましょう。

内閣総理大臣賞 <高等学校の部> 

◆河西俊太朗 長野県 松本深志高1年
「流れる水のように」・・・「水を縫う」(集英社)から

「水を縫う」読書感想文あらすじ・ネタバレ・感想文書き方のコツ

 
 
文部科学大臣賞 <高等学校の部>



◆北林愛里咲 富山県立富山中部高2年
「世界を変えるために」・・・「わたしはマララ 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女」(学研パブリッシング)から

入賞作を読むと読書感想文の雰囲気がわかりますので読んでみることをお勧めします。
「わたしはマララ」のように映像化されている作品もありますので、映像を見てから本を読むと、グンと読書感想文は書きやすくなります。

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