【もうひとつの屋久島から/あらすじ・ネタバレ】読書感想文書き方のコツ・ポイント


もうひとつの屋久島から~世界遺産の森が伝えたいこと
(フレーベル館)
著者:武田剛・著
本体価格:1,500円
ISBN978-4-577-04625-8

こちらでは
2019年の「第65回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校高学年の部(5,6年生)の課題図書
『もうひとつの屋久島から~世界遺産の森が伝えたいこと』の「あらすじ・ネタバレ」と読書感想文の書き方のコツ・ポイントをご紹介いたします。

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『もうひとつの屋久島から』あらすじ・ネタバレ・こんな子にオススメ 
『もうひとつの屋久島から』読書感想文・書き方例文とポイント 
『もうひとつの屋久島から』読書感想文・その他指定図書 

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『もうひとつの屋久島から』あらすじ・ネタバレ・こんな子にオススメ

【出版社内容情報】
1993年、日本で初めて世界遺産に登録された屋久島。この自然豊かな島のいたる所で、その11年前まで広大な原生林が伐採されていた事実があった!屋久島の過去・現在・未来にせまる、渾身のドキュメンタリー。

著者・武田剛
1967年生まれ。立教大学文学部卒・山岳部OB。1992年、朝日新聞入社。富山支局員、東京本社写真部次長、編集委員などを経て、2012年に退職した後、世界自然遺産の屋久島に移住。新聞社時代には、2003年末から1年4カ月間、45次南極観測隊に同行して、昭和基地で越冬取材。帰国後、地球温暖化をテーマに環境取材を始め、グリーンランド、ネパールヒマラヤ、北極圏カナダなどを取材。現在、朝日新聞と鹿児島放送の屋久島駐在。『地球最北に生きる日本人』(フレーベル館)では、第53回児童福祉文化賞、第57回産経児童出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 
読みやすさ ―
感想文の書きやすさ -

こんな子におすすめ
・左翼系の家庭の子
・悲観的に考えてしまう子 
・もののけ姫が好きな子 など

【作者のねらい】
・「まちがっている」と思った事に対して意見を言える人になってほしい
・えらい人にひとりで意見したい時、議員や弁護士、報道機関の力を借りる方法を知ってほしい
 

【もうひとつの屋久島から】~あらすじ・ネタバレ~所要時間11:58

プロローグ
作者・武田剛氏は朝日新聞時代に、南極と北極危険地帯を取材中出会った北極原住民のように暮らす大島育雄さんの「色々な所を訪ねると、たいせつなものを放り投げるような気がする」に感銘を受け、日本の極地「地球上の最果ての地」屋久島の自然を守り語れるようになりたいと家族を説得して移住した。

一章・屋久島で暮らす
・日本一雨が降る島
屋久島は東京23区の8割ほどの広さで、公共交通は1日1本のバスのみ。ガイドブックに「1か月に35日雨が降る」と書くほど降水量が多く民間企業で水力発電している。台風シーズンの停電、電話もTVもネットも通じず情報源はラジオのみ。停電の不便さも慣れれば冷蔵庫の食品をダメにしない知恵もつく。
・太古の森
屋久島の豊富な雨は、島の大半を太古の森でおおい、その2割が日本初の世界自然遺産に登録され「弥生杉」など様々に命名された何千年も生きる長寿の杉がある。
杉の寿命は通常五百年。屋久島の杉が長生きなのは島が花崗岩のでできているので土に栄養が少ない分、根を横に伸ばしゆっくり成長し、年輪が細かく幹が硬くて強い木になるからです。千年以上の杉を屋久杉と呼び、江戸時代に切られ放置された切り株は今では高級な工芸品材料です。
・山ばかりの島
屋久島は1800m級の山が8つあり、島の横断道路がないので移動が不便さだ。島民の住む住宅地は木々で海が見えないし、隣家と近く電線も丸見え。その理由は木々や住宅密集することで台風の防風林にするため。そして電線がない所に家を建てると電柱設置50万は自己負担となるからだ。贅沢を言わなければ買い物もネットもつながり夕方には朝日新聞の朝刊が届き、高校も1校あるので問題ない。
・「屋久島支局」を建てる
移住2年2014年に海を見渡せる高台に山林を買い、山林を切りはらい、4か月大工の緒方さんを手伝いながら家を作った。
ところが屋久島の情報ばかりでは売れないと出版社の編集者に言われた頃、退社後、そのテレビ局幹部になった先輩から、そのテレビ局の「屋久島駐在をやらないか」と声がかかり、さらに朝日新聞鹿児島総局からも「屋久島通信員」として記事を出せるようになった。双方とも同じ朝日新聞グループ会社。

二章・屋久島での取材はじまる。
・大人気の巨大杉
2015年3月の取材でツアー登山者は「出来たら幹に触りたい」という。30年前、著者が来た時は縄文杉に触れたし、展望デッキもなかった。縄文杉に触れなくなったのは1996年に展望デッキができてからで、世界遺産登録ご登山者増加で縄文杉が弱り始めたからだ。
縄文杉発見者・地元役場観光担当、故岩川貞次さんは「大岩杉」と名付けたはずが地元・南日本新聞に「縄文時代の生きた証人」と書いた事で「縄文杉」と呼ばれ「客寄せパンダ」になった。
・ウミガメが命をたくす砂浜
5月はウミガメの産卵期で貴重なアオウミガメも来る屋久島では保護団体とボランティアがふ化の保護活動に取り組んでいる。こちらも観光客による弊害があったが2009年に国と地元が観察ルールを作り保護活動が展開している。人員・資金・後継者不足が課題。
・伝統の山岳信仰「岳参り」
屋久島には集落ごとの山岳信仰(年2回春と秋に「奥岳」の神に豊漁豊作・無病息災を祈る)「岳参り」がある。
「浜砂」を竹筒に入れ、榊で身を清め、海から3時間かけて山に登り山頂で儀式する。一時50年も途絶えていたが2005年に「宮之浦」集落は復活させ、神道と法華宗読経の神仏習合の形で信仰している。
・世界で屋久島だけの花
屋久島在住40年のカメラマン山下大明さんといると新種の花と出会える。「菌従属栄養植物」というキノコの菌から栄養を取る新種の花なのだが、場所は自然保護地域外の人里に近い森で「開発は最低限にしてほしい」と言う。
・日本中の気候と植物が集まる森
屋久島が世界遺産になれた理由のひとつに、亜熱帯から冷温帯の植物が島の西部に連続(垂直分布)していることにある。「屋久杉が世界自然遺産だと思った」と誤解する人が多く、西部の林道では島特有の固有種「ヤクシマザル」や「ヤクシカ」が頻繁に表れ研究者なれしているので逃げない。だがかつての伐採で森が減り、農作地に出てきたシカの「獣害」対策に年に数千頭駆除をしているが、島特有の絶滅危惧種の針葉樹「ヤクタネゴヨウ」は約2500本しかない「レッドリスト」の絶滅の懸念がある。
屋久島はかつて国有地の原生林を伐採していたが、1970年の反対運動で止めることができたので瀬切川の北側から世界自然遺産になれたのだ。この大伐採の歴史こそが「もうひとつの屋久島」の話になる。

三章・屋久島の森の歴史
・江戸時代の伐採
かつて屋久島の産業は屋久杉を切る林業だった。それは「屋久杉自然館」で知ることができる。
屋久杉は豊臣秀吉に命じられた島津氏がそのすばらしい特性を発見し、ポルトガルとの貿易にも使用されていたので1500年代の終わりから伐採はあったとされる。油分の多い屋久杉は防腐・防水効果があり高級屋根板として使用され、薩摩藩の統治では年貢を屋久杉で納め藩は米俵一俵で安く買いたたき、西郷隆盛や大久保利通の明治維新の財源だった。
最盛期の江戸時代、島民は「岳参り」の風習から伐採にためらいを感じはじめ、藩は儒学者・泊如竹に島民の説得された林業での伐採享受で如竹は「屋久島聖人」とされ、屋久杉は5割から7割減少した。「如竹を聖人と言えるのか?」の疑問に自然館・鎌田さん曰く「儒学者だからむしろ切り過ぎないように注意していたのでは?」とひかえめな仮説を立てた。
・大正から昭和への大伐採
かつての伐採集落跡には杉を運ぶ「安房森林鉄道」の線路やその集落には街の痕跡もある。明治時代、森の8割が「国有林」になり、島民優先に伐採職を提供し、島を一周する道路インフラを整え7千haの森を島民の「共有林」に提供。1912年伐採基本方針「屋久島国有林経営の大網」では樹齢千年以上の屋久杉は伐採禁止だったが1937年日中戦争、ついで第二次世界大戦で木材需要により伐採されるようになった。さらに戦後は復興と高度経済、マイホームブームで全国的な木材不足を当時、各新聞社は「国有林を切って木材不足解消せよ」と林野庁をあおり結果、屋久杉伐採を林野庁が認め、チェーンソーという文明の利器が大伐採して森を切り開いていった。
・立ち上がる青年たち
1967年先の故岩川貞次さんの縄文杉の発見と島の大伐採の話も同時に全国に伝わった。
東京や大阪の大都市で反対運動が立ち上がり屋久島出身の当時、気象庁勤めの兵頭さんと後輩で法政大学生の柴さんは明治大学で展示された「屋久島の住民を移住させなければ島の自然が守れない」との非難にショックを受けた。
1969年兵頭さんは島民の意見を聞きに行くと、島民の多くが林業で「東京にいるくせに」と抗議される。2人はそれぞれ仕事と学校をやめ島に戻り、兵頭さんは町議会選挙になり翌年「屋久島を守る会」を結成。1973年に「屋久杉原生林の保護に関する決議」を議決。伐採の中止を求めたが林野庁はその後10年切り続けた。
・現地視察から公開討論会へ
林野庁は「屋久島国有林の自然保護に関する調査団」派遣後、一部だけ保護地域にした。だが「屋久島を守る会」は1974年旧環境庁自然環境保護審議会の視察団に訴えた事で、視察団は伐採の現状を非難した。だが林業関係者は「屋久島住民の生活を守る会」が設立され「守る会」と衝突。視察の翌月、双方の代表者公開討論会が開かれたが平行線で終わる。
・告発の映画
「屋久島を守る会」から別れた「屋久島の自然を記録する会」は世論へ告発するために記録映画『屋久島からの報告』を製作。製作費は島民を個々から1枚千円の前売券を売り資金調達し、それが島民の意識改革にもつながり七百万集まった。
撮影は東京の制作会社の人がボランティアの取材班になり1976年から2年撮影の撮影し、アメリカの環境問題に関心のあるカントリー歌手故ジョン・デンバーさんに惨状を伝え曲の無料使用の許可を得て1978年に完成した。デジタル化作品を観ると前半の豊かな自然と後半の切り倒される屋久杉の対比が悲しく、当時撮影した杉浦誠さんは「屋久杉の大木は17分で切り倒され、倒れる瞬間中の空洞の幹から涙のように水が流れるのを見て泣けてきた」と話した。映画の反響は大きかった。
・大自然の反乱
大伐採が続いていた1979年島北西部の永田集落で台風による大災害が起きた。土石流に集落が飲まれ死者は出ないが200件以上が水につかった。原因はやりすぎた伐採による山地崩壊にあり、3年後被災住民は国に損害賠償を求めたが却下された。
・ついに伐採が止まる
反対運動から10年。国が「植生の垂直分布」の地域に伐採の手を伸ばそうとしているのをヤクシマザル研究の当時京大大学院生・丸橋さんらが気づき、研究者として「守る会」に情報提供してきた。
そこで貴重な「植生の垂直分布」を守りたいという名目で1982年、国会議員や自然保護団体、報道に訴えかけた。すると議員たちが国会質問で垂直分布の保護をせまり、島の町議会で各町議に訴え、伐採中止を求める請願書を賛成多数で採択した。それを受けて、国は原生林伐採中止を決定。翌1983年瀬切川上流域を国立公園に指定した。2人で始めた反対運動を10年かけて、島民と国を動かした事は大きな自信になったと言う。

四章・屋久島の課題
・受難続きの縄文杉
毎年秋、縄文杉は樹木医による「定期健診」を受ける。
2015年の健診では「養分が多すぎ」との事。傷んでいる部分もあるが枝先は葉が茂り過ぎなのは過保護にした結果だ。
縄文杉が観光客により弱ったので保護をすると、増えすぎた葉に雪が積もり大枝が傷んだのだ。今度はヤクシカよけのネットを張り、周辺に低木や下草を生やし養分の分散をさせるなどで調整しているという。
縄文杉が人気になったのは伐採中止の翌1983年に「7200歳です」と旧環境庁が女子高生と縄文杉をポスターにしたことだ。観光客は1990年には10万人になり多くの人が縄文杉見学に訪れることで傷むようになった。1996年縄文杉前に展望デッキが設置され九死に一生を得たが、当時の関係者は日本初の世界遺産の集客力を予想できず、入山者数制限の「環境キップ制度」は屋久島観光関係者の同意を得られず見送った事も要因だ。
だが縄文杉の6本の大枝の中は空洞でじきに折れる時期に来ているという。縄文杉がたおれたら観光収益減少で島の経済は傾くだろう。
・山のトイレ問題
登山者の急増により現在2つのトイレが整備されている。1つはくみ取り式で2008年から人力で700キロのし尿をおろしている。その費用は当初募金だったが赤字が続き2017年より登山者に入山協力金~二千円を集めるようになった。トイレの形式について様々な意見があるが解決には至っていない
・山小屋に管理人を
屋久島の山小屋は無人で無料でつかえるが掃除やごみは登山者の責任なのにマナーが非常に悪い。ゴミもトイレもそのままなのが「よくあること」と山岳ガイドはパトロールと掃除をする。山小屋に管理人の常備について国と県の関係者からはその議論は出ない。
・屋久島の将来を担うガイド
屋久島はエリアが小さいのに200人もガイドがいる。屋久島は登山の旅先として1位であるのでガイドも集まるが質の低いガイドもいてクレームや悪い評判も口コミで広がり屋久島の評判が落ちる懸念がある。屋久島町は2016年から「屋久島公認ガイド」認定を始め、質の高いガイドの差別化できる制度を始めた。
・観光の質を高める
2008年1日の入場者数を制限すべきと言う声が高まった。だが入場制限は島民も対象になってしまう。だが屋久島より後に世界遺産に登録された知床や小笠原諸島は入場制限を最初から取り環境保護の成功している。現在、屋久島は入込客数が減少しつつあり1日強行の10時間縄文杉見学登山コースは過酷すぎて観光客満足度の低い意見も聞かれる。管理人在中の山小屋設置で2日間の登山コースにすれば解決するのだが改善されない。

エピローグ
観光客は屋久島は守るべくして守られたと信じている人も多いが、日本発の世界遺産はたった数人で始まった反対運動で奇跡的に守られた森なのである。
それは外から見えない島の暗い部分で「負の歴史」を抱える屋久島には自分の意見を言い続ける大切さを次世代に伝える力があると感じるようになった。過去の戦争もマスコミは政府の都合がいい情報だけを伝え、学校でも軍事教育をしていたため多くの国民は「正しい」と信じ反対意見は広がらなかった。学校でのいじめも同様に、戦争もイジメも声を上げていたら防げたかもしれない。屋久島の森が守られたのは反対の声を上げたからだ。森の歴史は後になって教訓を与えてくれた。
北極では温暖化で海が凍らず犬ぞりが使えず、狩猟も難しくなった。二酸化炭素の増加が原因だがその多くがアメリカ・中国・日本などだ。地球は丸く、ひとつにつながっているのだから世界で起きる問題を自分の問題として考えるようになった。
ぼくは「もうひとつの屋久島」からその大切さを学んだ。

あとがき
そんな「正論」を言われたら子供達が困るのではないか…という先生や保護者の意見もいただきます。
「寄らば大樹の陰」といいますが、集団や組織の上に立つ人に、反対意見を言うと左遷されるなど人生が狂う事もあります。
黙っている方が平穏ですが、自分の意見を言わなければその先どんな結果が待っているのか。
屋久島の森の歴史はそれを明確に示していると感じ、子供達にも主張する大切さを学んで欲しいと願っています。
ですが反対意見を形にしたいなら、議員や弁護士、報道機関などの力を借りることも必要で、本書にはそのやり方の答えも書いています。

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『もうひとつの屋久島から』読書感想文・書き方例文とポイント

 

~大人から見た感想と解説~(3998文字)
この本は小学校5,6年生の課題図書ですが、小学生にこの本は難しいですし内容的にも考え方にかたよりがあり過ぎて、課題図書としてふさわしいとは言えません。
屋久杉の伐採に関しても、政治的、歴史的にどういう背景があったからか?多面的にモノを見れず、作者の思惑通りに「森を守れてよかったです」「悪いと思ったら弁護士やマスコミに訴えます」と考えるようになっては非常にマズイです。なぜなら現代は「カラフル」多様な考えを受け入れ調和するのが主流で、一方的な正義の追及は真の平和になるとは言いづらく全員が幸せじゃないと問題解決ではないからです。

ジブリ映画「もののけ姫」の舞台は屋久島です。
屋久杉伐採の問題は「もののけ姫」と同じ「環境保護派vs産業開発派の戦い」がテーマですが、中立の和解交渉するのがアシタカですので「守る会」の考え方とは全く違います。この本で感想文を書く場合「もののけ姫」も観てから比較検討するとグッと感想文は書きやすくなります。

下記の読書感想文・例文は「読書感想文の書き方のポイント」に合わせて書いています。
課題の必要文字数は1200文字です。

本と出会ったきっかけ
本の簡潔な説明
なぜ面白かったのか
心に残ったところ
本を読んでわかった事学んだこと変わったとこ

 
読書感想文・例文(3998文字)
本と出会ったきっかけ
抽象的な本のタイトルに「屋久島のもうひとつとは何?」とピンとこなかったのですが、昔、登山の経験など一つもないのに屋久島に行った事を思い出し手に取りました。「山ガール」なんていない時代ですから、10時間かけて登る屋久杉見学登山に自信がなく、楽なトレッキングコースに行きガイドの人には「別に屋久杉登山は素人でも大丈夫ですよ」と言われ後悔したのを覚えています。
ですがさすが「もののけ姫」の舞台になっただけあって、その原始の森は霊感ゼロの私でも、空気の濃さ感じとり、写真にはちゃんと『木霊(コダマ)』が写っていました。
トレッキングがこんなにおもしろいのだと知り、夢中で写真を撮っていたら、立ち入り禁止の場所があると注意されたり、翌日は車で島を周遊するとシカやサルにバンバン出会ったり。でもそれ以外はなにも娯楽も名物もない島なのだなとも感じました。現在、観光が島の収入源の屋久島の歴史や本当が書かれているのがこの本です。

本の簡潔な説明
この本は日本の極地を語れる男になりたいと屋久島に移住したライターが語る、屋久島の黒歴史です。
世界自然遺産の屋久島が歴史的には杉の伐採地であった事。希少な屋久杉伐採の自然破壊反対派とほぼ林業の島民+林野庁との10年の戦いで、屋久杉伐採禁止を勝ち取り世界自然遺産になったのはいいけれど…登山観光客の急増で樹齢2000年以上の屋久杉が傷みだしたり、観光客の山小屋のマナーの悪さでウミガメ産卵への悪影響への問題が生じるなど新たな問題。そして観光地としてのサービスの悪さや屋久島ブームが終わり、観光客減少傾向に不安を感じている現状を語っています。
ですが作者の武田氏が一番言いたいのは「たった数人で始めた反対運動でも勝利を勝ち取ることができる」「相手が強者でもそれに屈してはいけない。」「勇気を出してまちがっていると思う事に『やめてください』と言わなければいけない」例えば戦争とかイジメとかもだ。と、まちがっていると思ったものに立ち向かおうという事です。

なぜ面白かったのか
この本の面白かったところや勉強になった点がいくつかあります。ツッコミどころが多すぎるのです

・作者自身も「海が見えるところに家を建てたい」と山を切り開き、家を建てた事への罪悪感がない
・「国有林の木材を林野庁は国民に提供しない」とマスコミが世論としてたたき縄文杉の伐採に至った事。
・伐採禁止になった後、島民の林業の人たちが失業しどうなったかはふれていない
・世界自然遺産になったのに、逆に観光客の制御ができずに環境破壊されたこと
・屋久島ガイドで改善できる問題を話し合う気もないと国や県に責任転嫁しているところ
・反対運動する人は島で議員になり、著者は新聞社お抱えライターという安全地帯から文句をつけている
・本書の目的が小学生とその保護者対象のプロ市民養成の指南書だったところ

都合の悪いことの話は広げていません。文章と言うのは著者の意見を述べるものですからそれも当然なのですが「ウソはつかないけど、言わない」事もあるので、誰かの意見を闇雲に信じてはいけないと言うのがよくわかる本だなぁと感じました。

心に残ったところ
特に心に残ったのは、あとがきの「ひとりで意見をしても相手にされない…議員や弁護士、報道機関の力を借りる事も必要です」と政治と思想の世界へのいざない、反対運動する事を強くうながしている時点でアウトです。
もちろん屋久島が世界自然遺産になったのは日本人として誇らしい事です。ですが作者のすすめる方法も「守る会」のやり方も相手を敵にして戦う方法であって、和解してWin-Win(ウィン ウィン・双方が利益を得られる方法)ではないのです。
「屋久島住民の生活を守る会」という失業した林業の人たちのその後は本書では一切語られていません。
杉の伐採は江戸時代から続く伝統的な仕事で、屋久杉と屋久島の自然に学術的な価値があると島民は誰も知らなかった事です。自然保護運動は環境保護派の外人の曲を借り、映画で島の現実を知らない東京の議員や大都市のノンポリな市民を味方にして、林業の人々は伝統ある仕事を否定されアイデンティティを傷つけられ、ずいぶん追い込まれ「イジメられた」ように思います。
屋久島は「もののけ姫」の舞台です。アシタカは「森とタタラ場、双方、生きる道はないのか!」と共存Win-Winを願いますが「守る会」は戦うだけです。
屋久杉を守るためには林業の人々の仕事を奪うのは仕方がなかったのでしょうか?もう少しやり方はなかったのでしょうか?新しい仕事を提供する方法を取ればこの活動は10年もかからなかったのでは?と思うのです。この物語は「守る会」の成功を美談のように言いますが、林業の人々には苦渋の物語です。これも「もうひとつの屋久島」の暗黒面です。敗者にも家族や生活があるのです。

その後、自然遺産をメインにした観光業の島となりましたが観光客を責めるばかりで、するべき改善策を国や県の責任にして取り入れようとしない島の関係者たちにかなり疑問を感じました。なぜいつも誰かのせいにするのでしょう?
観光客はその島の良いところしか見ていません。マナーの悪さを自覚しない人もいるのが人間です。観光とはサービスの売買なので、客がわがままで甘えがあればそれに対応するか、サービスの提供を辞めるかどちらかしかないのです。
山小屋に管理人を置きたいと言う改善策に、国や県の指示がなければできない理由は本書には書かれていません。10時間もかかる登山時間の改善もできず観光客減少の一途たどっている現実。今回、この本を読む限りでは屋久島の人々に「何かを改善する事へのアレルギー、田舎特有の閉そく感の強さ」があるように感じました。
身近な例で例えるなら、高齢ドライバーによる交通事故問題です。事故が起きるたびに日本人全体が怒りに揺れ、現役世代vs高齢者の縮図が出来上がっています。
今の現役世代ももちろん年を取り、将来自分の免許を取り上げられるのをわかっていても反対しています。交通機関のない田舎の人は車が生命線というのは充分に理解できます。ですが現在の屋久島の抱える問題と高齢ドライバー問題に類似点を感じるのは「当事者はいつも自己中で責任転嫁してみんなが幸せなる方法を取り入れない」という事です。


本を読んでわかった事学んだこと変わったとこ
この本を読んでわかった事、学んだ事は「あなたの正しいは本当にすべての人の幸福になるのかよく考えよう」というです。
作者は子どもたちに「しっかりと『自分の意見』を持ち、ときには、それを主張することの大切さを、この世界自然遺産の森から学んで欲しい」と言いますが、その『自分の意見』が「木を見て森を見ず」ではダメだという事です。

樹齢千年以上の屋久杉の伐採を林野庁が進めたのは、世論としてマスコミが木材不足を煽り立てからです。その結果「拡大造林」という政策をとり一斉に全国の国有林が伐採され、その時に屋久杉も伐採されました。「木をよこせ」と世論が騒いだから国は追い立てられて希少な屋久杉を切ったのです。
将来への木材供給の為、同時期に杉を中心とした針葉樹が植栽されたものの、木材の輸入緩和政策で大量の外国産材が入って来て今度は木材があまります。結果、国内の木材は価格下落で林業自体が立ち行かなくなり、林野庁も膨大な赤字を抱えることとなりました。これは国民の税金による負担です。
いま日本の山林は当時植林された寿命500年の杉の木が茂り、日本中の人々を花粉症にしています。こうなった責任は表面的な問題しか見ずに「木をよこせ」と言ってあおったマスコミにあるのに知らんフリです。
この時の日本人は気長に木材が手に入るのを待つべきでした。社会と共存しようと言う少しのガマンが必要だったのです。よく調べもしないで間違った主張をした報道機関・マスコミは国民が少し待てる気持になるように、優しく説き伏せるのが仕事だったのです。
「屋久杉を守ったのは正義じゃないか!」「まちがいを指摘して自分の正義を貫くことの何が悪いのだ?」という意見もあるでしょう。ですが、不思議なもので誰か一人だけが得するとそのしわ寄せは、必ず自分も含めた全体を覆うのです。

先に「もののけ姫」の話をしましたが、もののけ姫を作った宮崎駿監督は、この本で語る屋久島の歴史も日本の花粉症の原因もわかっていて「もののけ姫」を製作したような気がします。
アシタカ「わからぬ…だが共に生きることはできる!!」
モロ「ファッファッどうやって生きるのだ。サンと共に人間と戦うというのか」
アシタカ「ちがう!!それでは憎しみをふやすだけだ」

現実の屋久島にアシタカがいればもっと早く森を守ることができ、縄文杉も傷まなかったかもしれません。

誰かが言う問題提起や、自分が感じた「間違っている」は自己中心ではないか?よく検討し、みんなが幸せになる方法を優先しないと「憎しみをふやす」ことがあるのです。世の中や人々は常に変化します。常に新たな問題は生じるのですから何かを変えたいと思うなら、最後まで改善した結果の責任をもつ覚悟が必要なのです。
「もののけ姫」の最後のセリフはサンとアシタカの敵、ジコ防の言う「いやぁーまいった、まいった。バカには勝てん」というものです。作者、武田氏の憧れた北極の大島育雄さんは温暖化で環境が悪化し原住民が半減しても、誰かを責めることも、訴えることもなくそれすら受け入れるという伝統の生活を続けています。環境破壊は悲しく恐ろしい事ですが、自然と共に生き、自然と共にほろびる覚悟で生きる事も一つの美学のように感じます。
私たちは誰かの言うひとつだけの意見に惑わされず、いろんな角度のいろんな意見を公平な目でみて最善を選ばなければなりません。全員が幸せじゃないと、自分も幸せになれないのが人間の運命なのです。幸せになりたければ地球と人類全体に対して愛と冷静さ、調和の心が必要なのです。

『もうひとつの屋久島から』読書感想文の書き方のポイントとその他オススメ本

読書感想文・用紙と字数のルール その他の詳細
原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
文字数については下記のとおりです。
小学校高学年の部(5,6年生)本文1,200字以内…400字詰め原稿用紙3枚 
※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

  
  
2019年第65回 青少年読書感想文全国コンクール
~小学校高学年の全課題図書~


【ぼくとニケ/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント
(講談社)
著者:片川優子・著
本体価格:1,400円
ISBN978-4-06-513512-9

 

【かべのむこうになにがある?/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント
(BL出版)
著者:ブリッタ・テッケントラップ・作 風木一人・訳
本体価格:1,600円
ISBN978-4-7764-0816-1


【マンザナの風にのせて/あらすじ・ネタバレ】読書感想文の書き方のコツ・ポイント
(文研出版)  
著者:ロイス・セパバーン・作 若林千鶴・訳 ひだかのり子・絵
本体価格:1,500円
ISBN978-4-580-82335-8

読書感想文の裏ワザ

今年の5,6年生の課題図書は癖のある作品ばかりで、4冊中2冊が、なぜか小学生に政治的思想を植え付けようとする意図を感じるのでハッキリ言うと良い本ではありません。

課題図書の中から選ぶなら「ぼくとニケ」か「かべのむこう…」でしょう。「マンザナ…」も偏った政治的思想の影響を受けそうなのでおすすめしません。
どうしても簡単に感想文を終わらせたい場合は、昨年の課題図書の本がオススメです。前年の課題図書はすでに感想文を書いている人がいるので参考にできるからです。

【読書感想文2018課題図書】小学校5,6年高学年の簡単に書ける本

ちなみに2018年の課題図書は以下の通り
「奮闘するたすく」…文章のテンポが良いので読みやすさはNO.1
「こんぴら狗」…感動本、勢いで読書感想文が書きやすいNO.1
「ぼくとベルさん:友だちは発明王」…自分を変える勇気をもらえるかも? 
「クニマスは生きていた!」…魚好きにはおすすめ

作品的にも昨年の本の方が読みやすく、感想も書きやすかったです。特に「奮闘するたすく」と「こんぴら狗」はだれでも共感しやすく、物語にもハマりやすい楽しいお話でおすすめです。

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