【シュナの旅】あらすじ・ネタバレと感想・考察「アニメ化はある?」宮崎駿の不条理な世界観⁉

「シュナの旅」

内容紹介
谷あいの貧しい小国の後継者シュナは、旅人からもらった実りの種をたずさえ、はるか西方にあるという豊饒の地を目指す……。宮崎駿がチベットの民話「犬になった王子」を題材に、徳間書店のアニメージュ文庫から出したファンタジー絵物語である。全ページカラーの文庫サイズ作品、1983年6月初版。2022年出版の英訳版タイトルは『Shuna’s Journey』

ジプリファンとしては、宮崎駿さんの作品なら一通り知っておきたい!と思われることでしょう。
この作品もそんな風潮から少しずつ知名度が上がってきたお話です。

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【シュナの旅】あらすじ・ネタバレ 
【シュナの旅】感想・考察「アニメ化はある?」宮崎駿の不条理な世界観⁉ 
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【シュナの旅】あらすじ・ネタバレ

「シュナの旅」は1987年5月2日にNHK-FMのラジオ番組「FMシアター」で60分のラジオドラマ版が全国放送されました。
原作は状況解説が多くセリフは少なめなのですが、ラジオドラマ版は原作にプラスされた登場人物のセリフにより、より原作の理解度が高まるようなストーリーとなっています。

【スタッフ】
製作:NHK
脚色:宮田雪
音楽:AKIRA(伊藤詳)
技術:鈴木清人
効果:上田光生
演出:保科義久
【キャスト】
シュナ:松田洋治
テア:藤代美奈子
旅人:下元勉
奴隷商人:松山照夫
老婆:北城真記子
古老:戸浦六宏
ナレーション:佐々木功

 
シュナが「ナウシカ」のアスベルや「もののけ姫」のアシタカも演じた松田洋治さんなのがうれしいですし、テア役の藤代美奈子の声が心なしか「ナウシカ」の島本須美の声に似ています。

【シュナの旅】あらすじ・ネタバレ 

谷の底の貧しく小さな王国の王子、「シュナ」という青年の物語である。チベット民話「犬になった王子」(文:君島久子、絵:後藤仁 / 岩波書店)が元となっている[3]。麦を求めて王子が旅をするという民話で、『シュナの旅』も基本的に同じ構成ではあるが、登場人物・キャラクター等は宮崎独自のもの。

旅立ち
貧しく乾いた土地の王子シュナは、ある日異国の死にかけた年老いたの旅人を見つけます。
力尽きる前に聞くと、彼は貧しい東の国の王子で、若き日に旅人からもらった西の彼方にある、黄金に輝く「穀物の種」を求めて旅をしてきたという。
死の床でシュナにくれた種はすでに死んでいるが、国を豊かにしたいシュナは長老たちを説き伏せ種を求めて旅立つことにした。

西へ
ヤックルと旅に出てひと月、木と石でできた大きな船をみつけ一晩の宿と食物を頼むが、そこはグール(人喰い)の一族だった。
襲撃者を撃退し、食料も尽き、飢えに苦しみながら旅を続けていると、駄獣の引く大きな車に人間が押し込められ運ばれているのに衝撃を受ける。

都城にて
ついた先は奴隷が売買されていた都城だった。
そこでは脱穀された「黄金の穀物」も売っていたが「人買いが人と交換に持ってくる」という。
疲れたシュナはテアという奴隷の少女と彼女の妹に出会い、銃と引き換えに買い取ろうとするがテアに「武器を手放せばあなたも狩られてしまう」と止めに入り、シュナは無力な自分に泣きながらその場を去った。
夜半、旅の卑しい老人に食料をふるまうと「黄金の種は神人の土地にある…だがもどった者はいない」と教わる。

襲撃
シュナは都城にもどり、人買いに買われたテア姉妹の車を襲撃し2人を救い出した。「北の大地で待ち続けます」というテアをヤックルで逃がし、シュナは追手を撃退した。その時夜空に、天に輝く巨大な顔が彼方へと飛んで行った。神人の土地に行くのだと確信した。

神人の土地へ
垂直の崖を降りやっと着いた谷底の渚でシュナは疲れ切り眠り込むが、目を覚ますとそこは滅びたはずの生物で満ち、豊かな食物と穏やかで満たされた世界だった。
だが現れたみどり色の巨人は「死に行くため」空地に行き、小動物たちに骨も残さず食べつくされた。そして耕地の真ん中の奇怪な「生きている建物」の上に、輝く巨大な顔が飛んできて人間を建造物のクチに注がれ、次に建造物から緑の巨人が出てきて、口から金色の種を地面にまき始めた。
翌日の夕方には麦が実った様子に「時間の進み方が違う」ことに気づいたシュナは穂をむしり取り、心の中に響く「やめろ」の声と全身の痛みを振り切り、暗い海に飛び込んだ。

テア
テアと妹が北の貧しい村に逃れて1年。意地悪な老婆の世話になり、ひもじさに耐え懸命に働きながらシュナをまった。
胸騒ぎがした夜、ヤックルと村の入り口まで飛び出すと、記憶も言葉も感情もなくした幽鬼のようなシュナが戻り「自分がシュナを助ける番だ」とかくまい寝食を割いて働き、シュナの金色の種をまくのはシュナの意思に任せた。
シュナが種をまき芽吹いたころテアは老婆から「働き手を得るためにムコを取れ」と言われ、断れないテアは「ヤックルを乗りこなせる者」と条件を付けた。するとシュナが現れヤックルを乗りこなした。
夏が来たが、急に天候があれ大粒の雹からテアとシュナは小さな麦畑を守りとおし、嵐が過ぎた時シュナは言葉を取り戻し2人は抱き合い激しく泣いた。
作物が実るころシュナもすっかり元に戻り、麦を刈り取ってきた。だがこのときも月が天空を駆け巡った。
それから1年、人狩りの来襲とも戦い、村に麦の畑を広げ半分は残しシュナとテアと妹は遠いシュナの国へ帰っていった。
シュナの旅は終わらない。

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【シュナの旅】感想・考察「アニメ化はある?」宮崎駿の不条理な世界観⁉

チベットの民話「犬になった王子」が元になっています。
この世界の基本ベースが「土地が貧しく、作物が取れない」「生きていくために奴隷の売買が横行する」「ひどい場所では人喰いに襲われる」
生産ができず、消費や強奪することでしか人間が生きていけない世界。
そして気が付かず人間も食物連鎖の一部として、神に食われ巨人へ変換され、作物を作り、脱穀して実らない種を人間へ供給する生き物に作り替えられています。

旅で行き会った卑しい老人は「黄金の種は神人の土地にある…だがもどった者はいない」と教えますが、神人とはなんなのか?食物連鎖の頂点?神人を起点に循環している世界なのか?シュナとテア、世界の安寧は訪れるのか?モヤモヤする物語です。
 


世界の成り立ち
シュナは貧しい小国の王子ですが、次期王として現状打破したいと偶然出会った旅人より「黄金の種」を手に入れます。
それまで知りえなかった世界の成り立ちを旅で知ることになります。テアという伴侶を得て無事麦を手に入れ国に帰りますが、原作の終わりに『シュナの旅はまだ終わらない 谷への道は遠く 困難はつづくにちがいない』とあります。
農地を持つ≒戦闘的になることです。無事国にたどり着いても、これからは麦の資源を狙ってやってくる輩との闘い、もしくは別の生存をかけた戦いが永遠に続くことになると言いたいのかもしれません。
 

農業に適した環境で生活する人々は、様々な作物を育て収穫し食べます。その食生活は狩猟採集と比較すると安定的ですから、飢え死にする確率が低くなるでしょう。そうすると、農耕民族の人口は増えていくはずです。増えた人口を飢え死にさせないためには、さらに土地を開墾し農作物を収穫する必要があります。そして、また人口が増え、今までよりも開墾に力を入れる必要があります。

農耕民族は、最初は農業に適した環境の中で農作物を育ててきたことでしょう。しかし、増え続ける人口を餓死させないためにやがて自然に与えられた環境だけでは間に合わなくなり、環境を破壊してでも農業を行うようになったはずです。そして、自分たちが住んでいる地域の土地だけでは一族を食わしていけなくなった時、他の地域へと進出し、そこに住む人々から土地を奪い取るのです。

 
一見ナチュラリストで温和なイメージのある農耕民族。ですが安定した食料という資源による人口増加により、好戦的になると言われます。「シュナの旅」での世界観は循環社会。神人か宇宙人か未来人か?人間を増価させないシステムに思えます。
 
この世界はだれが作ったのか?数々の謎
「シュナの旅」はSF的と言われます。
木と石でできた朽ち果てかけた大きな船はいつの時代のものか?卑しい老人曰く「人はかつて金色の種をもっていた 自ら収穫し 自ら種をまき みずからをいかしたものだった…」それがいつから神人しか持たないものになったのか?
輝く巨大な顔とはなんなのか?生きた巨大な建造物は機会なのか生物なのか?これらはなぜ、人間を緑の巨人に変えるのか?
宮崎駿の考えるこの物語の世界は細かい説明はなく謎ばかりです。ですが圧倒的不条理により作られた世界観に救いのなさを感じます。


これは未来の話?
「シュナの旅」は1983年に出版された作品です。
「風の谷のナウシカ(1982年)」の荒廃した世界観にも似ているのですが、ナウシカは人間同士の理由のある戦と核戦争により生態系の崩れた世界(「腐海」「蟲」)など、未来は暗くとも人間の業による未来世界が描かれています。
原作がチベット民話「犬になった王子」 という歴史と符合した話ですが、本作は過去の話というより宮崎駿の未来への警告に思えます。
「あとがき」では『(宮崎駿)十数年前、はじめて(犬になった王子)読んで以来、この民話のアニメーション化がひとつの夢だったのですが、現在の日本の状況では、このような地味な企画は通るはずもありません。』とどうも反省というより警告したい内容のようなコメントに思えます。
出版から40年たった2020年から世界はがらりと変わりました。
おそらく今ほど、「シュナの旅」に込められた宮崎駿のメッセージが届く時代はないと思います。

「シュナの旅」みんなの感想

人間の天敵は人間。
既に終わった人間社会で、人間だけは取り敢えず生かす為に人間が作ったシステム、と考えると面白いと思います。他の惑星の知的生命体が作ったと解釈してしまうと‘救済’となってしまうのでいただけない。
SFでは人間が人間の食料になる、と言うネタは「ソイレントグリーン」で作られているのでパクリっぽいと評価されるかもしれません。このネタはその後どこにも作られた形跡がありません。もしかしたら宗教的にアウトなのかも?
だとしたら欧米に持ち込んでも作ってもらえないかもしれません。
あの時のSFは今、その年を迎えてしまった様です。2022年人口爆発により地球の許容する容量を超えて、食料危機は現実となりました。戦争が起き、人間の命がハイパーインフレを起こしています。
「人間がいっぱい」なこの時代に人口調整の時期が来たようです。悲しい時代を迎えてしまった様です(T_T)

満足度:★★★★★ 宮崎駿・ジブリの世界が全て詰まったような文庫本サイズの絵本。厳しくも美しい、世界と人間の生き様を淡々としたナレーション(のように心に響く文章)と絵で描いた物語。コロナで塞ぎこむ日々、人間の無力さ、社会や他人に感じる無情さや違和感、そんな感覚がこの物語には前提としてあります。その中でどうやって希望を見つけ、大切な人を守るか、今僕たちに必要なのがそれなんだと気付かされるとても素敵な本でした。出会えて本当によかった。

「風の谷…」の原点。ここには全てが詰まっている。人間の性の全てが。▼だが、宮崎はただ一つのことしか言っていないような気もする。人間は生きていることが罪なのだと。腹を満たさんとすることが罪だと。欲することが罪だと。息をすることすら罪なのだと。原罪意識? ▼いや、それは私のうがった見方なのだろう。宮崎はそんなことは言っていない。だが、腹を満たすために殺し、愛する者を守るために殺す。それは正義と言えるのか。▼テアは「あなたにだって買われたくない」と言ったが、剣なら良いのか?「風の谷…」に答えはあるのだろうか?

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