【円弧 アーク】あらすじネタバレ・ヤバい裏話と映画『Arc アーク』の違いと配役


SF短編「円弧 アーク」はSF作家ケン・リュウの傑作短編小説「円弧」を実写映画化です。原作自体は短編なので「もののあはれ」「紙の動物園」に掲載されています。

私は世界に触れる――人類初、永遠の命を得た女性の物語
舞台は、そう遠くない未来。放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)は、師となるエマと出会い、彼女の下で〈ボディワークス〉という仕事に就きます。それは最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事でした。エマの弟・天音はこの技術を発展させ、遂に「不老不死」を完成させます。リナは不老不死の技術を受けた世界初の女性となり、30歳の姿のまま永遠の人生を生きていくことになりますが……。

原作/ケン・リュウ「円弧(アーク)」(ハヤカワ文庫刊 「もののあはれ─ケン・リュウ短編傑作集2」より)
脚本/石川慶、澤井香織
音楽/世武裕子
監督・編集/石川慶   
出演/芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫
製作/映画『Arc』製作委員会 
製作プロダクション/バンダイナムコアーツ
2021年/日本/127分/スコープサイズ/5.1ch
公式サイト

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【円弧 アーク】原作のあらすじ・ネタバレ
映画『Arc アーク』の違いと配役
【円弧 アーク】ヤバい裏話と感想

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【円弧 アーク】原作のあらすじ・ネタバレ

ニュースのネタに困った時、記者たちはリーナの元を訪れ、遠慮がちに老いた姿を見つめるので「苦しみはないの」と彼らを安心させる。
質問はいつも「後悔はないのか?」「決心を変えるつもりはないのか?」そして記事のつかみに『リーサ・オージーンの最年長の息子は16歳の時に生まれた。百年後、リーナーは一番下の娘を産んだ』
だけど、本当に興味深い話はごっそり欠けている。

15歳のリーナは、恋人チャドとの子どもを宿しましたが優秀なチャドは「俺はイエール大に合格したんだ」とリーナを見捨て、両親からは出産を反対されます。
チャドは大学進学で街を出た頃、息子のチャーリーを出産。チャーリーを「愚かしい」としか思えないリーナに父から18歳まで金を毎月よこすと追い出され、チャーリーと二人の生活が始まりました。
孤独と不安にさいなまれている時、悪そうなジェイムズと出会いチャーリーを両親の家の前に置き去りにして、ジェイムズと車で放浪生活をします。ですが4年後、安ホステルで目を覚ますと『ベイビー 人は誰かを所有したりしないんだ、おまえとおれはいつだって自由だぜ』ジェイムズはいなくなっていて、リーナは捨てられていまいます。

生きる希望を失い、路頭に迷うリーナ。ジェイムスと暮らした教訓は、自由だけでは充分でなく、愛だけでも充分でないということでした。
ある建物の前の人だかりに差し掛かると『考える人』のようなポーズで、内臓が薄くスライスされ、脳もさらされている男性が座っていた。それは『ボディ=ワークス』という会社の求人広告で、リーナはそこに足を踏み入れます。


その会社では『プラスティネーション』という死体の水分と脂肪をアセトンに置き換え、ポリマー風呂につけて空気を抜いて、筋肉や血管神経に合成樹脂を浸み込ませてから、ポージングをとらせて固め、立体像にする作業をしていました。製作した作品のなかには、美術館向けのものもありリーナは仕事の感が良く、死体に触れるのも平気で才覚があり、チーフのエマはリーナをを気に入っていました。

最初の数年は、死体の彼らは死ぬ前は何者だったのだろう?なぜ彼らと家族はこの埋葬が正しいと考えたのだろう?法律がたいした意味を持たない国から来たのだろうか?科学のためにボディワークス自ら進んで検体したと言われたものの、その説明は空虚に響きます。
エマは「ほとんどの疑問は無駄だよ。答えが返ってきても、噓か、信じたくないものかのどちらかさ」「いずれ乗り越えるさ。そうしなきゃならない。あたしの場合、いちばん厄介だったのは顔だけど、そのうち『顔』の線だけを、影だけを、色の階調だけを見るようになった。あたしたちは皮膚を使って形使っているんだ」「死は避けがたいもの。あたしたちの仕事はそのことに嘘をつき、死者を生きているかのように見せること。あたしは噓をつくのに疲れたんだ」そう言ってエマは引退し、私はチーフに昇格した。
ジェイムスに捨てられて15年。私は35歳になっていました。

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生まれた日に亡くなった子どもを「プラスティネーション」して欲しいという母親から依頼が舞い込みます。ですが子どもの遺体を前にして、リーナは16歳の記憶がよみがえり、施術できなくなってしまいます。

リーナーは仕事を辞めてしまいますが、『ボディ=ワークス』社の2代目オーナー、ジョン・ウォラーが現れ、彼は毎日リーナの元に通うようになり、交際を求められますが、年下で優秀で裕福な家柄のジョンに自分を卑下し子供を捨てたことも話します。そこでジョンは年齢差は気にする必要が無いと新たな事業のことを話しました。
「父は腐敗を止めることに興味があった。…ほくは、老齢と死を克服したい」生きている人間肉体を健康で若いまま止める、いわば不老不死を可能にする医療でした。ジョン自身、熱心に語るおとぎ話のような医療を信じ込んでいて、リーナはそれを受け入れることにします。

リーナは、38歳にしてスタンフォード大学に通い始め、不老不死の処置を受け30歳の肉体を手に入れました。大学を卒業するころジョンと結婚し、「ボディ=ワークス」は“不老の泉”の事業の二本柱を行っていました。
世間は“不老の泉”の事業を「独裁者の命を伸ばすこと」に批判的ですが、ジョンは「差別はしません政治信条に基づいておうこうすることはありません。」と対抗します。
数多くの死体を見てきたリーナには健康管理は権利ではなく特権だと、死体からも生前の健康管理が判別でき、平等であった死からも金持ちは逃れようとしているように見えるので、人々が怒るのも不思議ではないと感じました。
リーナはジョンの妻という立場から過去の作品に高評価をうけますが偽善的に思え、アーティストとして頭打ち感や、幸福なのに停滞感があり、ジョンのおかげで新しい脳は好奇心が尽きないので永遠の学生として学校にもどります。

ジョンはリーナとの子どもを望みますが、時間のあるリーナは急がなくて良いと思っていました。
ところがジョンには遺伝子異常があり、若返りの処置によって逆に数か月で数十年分老化を加速し、「これは天罰だと思いますか?」とおびえながらインタビューする記者は20年以上前に施術を受けた若いままの大学同級生の女性もいました。あっという間にジョンは亡くなってしまい、リーナは彼の遺体を「プラスティネーション」し、新たな人生をはじめることにします。
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ジョンの冷凍保存した精子を使って、リーナは71歳で妊娠。平穏さを求めて海辺のバーへやってきた彼女に、50代半ばの男性が声をかけます。ナンパだと思い追い払ったが彼の手はチャドがよくしていたポーズを取っていました。彼はリーナが幼い日に捨ててきた、息子のチャーリーだったのです。
リーナの両親に育てられたチャーリーは「母親は死んだ」と聞かされていたが、12歳の修学旅行で『ボディ=ワークス』社でリーナを見かけ、家にも写真があったことから母だと確信したチャーリー。
「大切な仕事があるから出ていったのだ…いつか探しに来てくれる」と自分を納得させたが、いつまで経ってもリーナが迎えに来る気配もなく、有名な旦那の側で永遠の若さを手に入れても母はむかえに来ることはなく、祖母が死んだ時あんたは戻らないとわかり、祖父が死んだ時、自分がバカだった、自分の人生を築き、母を忘れ、自分を哀むのをやめるため漁師の仕事を始めたと言います。

ですがジョンの訃報を聞き、今ならリーナのことを許せるかもしれないと思い、会いにきたと語りました。56歳年下の妹キャシーのことを、チャーリーは上手くあやし可愛がります。チャーリーはリーナにまた恋をするようアドバイスし、若返りの処置を拒み、老いて亡くなりました。チャーリーの体からは人生に充された香りを感じました。
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姉妹のよう見えるキャシーにも入念にアンチエイジング処置を施し、同業他社が安価でエイジングするので年を取らないのがあたりまえになった。でも愛する人の喪失にうんざりしていたし、若返り処置をしても心は年老い過ぎていたかもしれないと思いましたが、100歳近くになって、リーナはふたたび恋をします。

デイヴィッドは不老不死を否定している青年で「死を意識することで、行動することができる」と語りました。
リーナはジョンと過ごした日々で時間があると思うばかりに、何もしてこないで人生を浪費し覚えている日が少ない事に気が付きます。自分の人生をプラスティネーションしてしまっていた、人々も成長をやめ、結婚は永遠じゃなく退屈なものになり、永遠の人生が人々を幸せにしたわけではなかった。

ディヴィッドとともに老い死んでいくことを選び、一番下の娘セーラを産み処置をやめる決断をします。やりたいこと、見たい事、知るべき事より一人の女性として充分すぎる経験をして死ぬ。私の人生は、はじまりと終わりのある、円弧になる。
「わたしたちはたがいを所有しているわけじゃない。だけど、お互いの為にそこにいたいの」デイヴィッド、特にキャシーは「死のない人生=変化のない人生」ではないと反対しますがが、リーナの意思は揺らぎません。「すべての恋愛と結婚に、友情と出会いに、円弧があるの。始まりと終わりが。寿命が。死が。もしあなたの求めているものが喪失なら、あなたがすればいいのは、待つだけ」
私に死ぬ決断をさせたのは時間から自由になりたいという願望。何度もはじめなければならならないことから自由になりたかった。

リーナはボデイー=ワークスの協力でその老化を詳細に記録し、人体の死の形をもっとも完全な形で残すことになるだろう。皺だらけになった手で、同じく皺だらけのディヴィッドの手を握りました。

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映画『Arc アーク』の違いと配役


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リナ:芳根京子→主人公
エマ:寺島しのぶ
黒田天音:岡田将生→エマの弟で「プラスティネーション」の技術応用で老化防止の技術を開発する天才科学者
カナコ・ナナ:清水くるみ→リナの職場の同僚カナコとその娘ナナの2役

?:井之脇海→同じ会社の人、弁護士?
中川翼
中村ゆり

(老いたリナ?):倍賞千恵子

フミ:風吹ジュン→不老化処置を受けずにリナの経営の施設で最後をむかえるためにきた老夫婦の妻
リヒト:小林薫→フミの夫、リナに影響を与えるキーパーソン
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どうやら映画の登場人物設定は原作とは全然違うようです。
まずリナの恋人役がおそらく岡田将生さん演じる黒田天音というエマの弟になっていて、リナと結婚はするようですが天音の死後、子供を作るのかどうか?疑問を感じます。なぜならば同僚演じるの清水くるみさんは2役で娘役も演じるので、娘は産まなない設定なのか?と感じられるからです。
また、原作では最初に産み捨てた息子がリナを改心させるのですがそれが小林薫さん演じるリヒトがキーパーソンということで、実の息子も出てこない?という感じです。あれ?
配役を公表していない井之脇海さんですが、最後の恋人役か?と思いましたが岡田将生さんと一緒に記者会見の場にいますので、恋人役ではなさそうな感じ?将来の有望株の若手俳優さんですのでそこそこ重要な役どころと思われます。

【円弧 アーク】ヤバい裏話と感想

原作を読んでちょっとびっくりしたのですが、「プラスティネーション」とは中国で実際に行われている技術で、その展示会として日本でも1996年から1998年ころまで各地で「人体の不思議展」が開催されました。
従来は人体標本と言えば、ホルマリン液漬けや剥製のようなものでしたが、この展示会では公には「検体されたご遺体」をプラスティネーションした技術で人体標本にしたものとして、毛細血管だけの人体、リンパ管だけの人体などあまりに詳細に実物標本となっているので「画期的」と大評判でした。

ですが、次第に深刻な人権侵害を引き起こしていると指摘され問題視されるようになりました・・・「このご遺体たち、本当に検体なの?」


大紀元』によると、展示されている人体は、主として中国において人間の死体を加工、標本化したものであり、それらの死体は非人道的な手法で調達されているという]。
主催者である「人体の不思議展実行委員会」は「死体の提供は同意を得ている」などと表示するなどしているが、それに関する証拠は提示されることもなく、また疑念を抱いた人々やグループから死体標本の献体証明書の開示を求められても拒否するばかりで開示していない。
2018年10月、スイスのローザンヌ市当局は同市で開催されている展覧会で『中国で拷問され処刑された受刑者らの遺体が含まれている可能性がある』として展覧会の中止を発表した。拷問に反対するキリスト教徒行動によると、拷問死した法輪功のメンバーである可能性が高いとされています。

原作者のケン・リュウ氏は1976年、中華人民共和国の蘭州に生まれますが、8歳(11歳という説あり)の時、両親とともにアメリカ合衆国に渡り、以後はカリフォルニア州のパロアルトで育ったのでほぼ心はアメリカンだとは思います。
原作発表が2011年ごろですが、2009年ごろからフランスで裁判所が、パリで開かれている人体展の中止を命ずる判決を出したり、日本地方都市で各地医師会などが開催中止を求めてイザコザが沸き起こっていました。
ケン・リュウ氏は「円弧」のテーマとして不死の有無を読者に問いています。
物語の中でジョンは
「現代の世界は、死からあまりにも遠く離れている。…われわれの死の恐怖を死と共に生きるよう仕向けることで取り除きたかった」
「健康管理は権利であったことは一度もなく、むしろ特権だった。」

数多くの死体を見てきたリーナには最初は若さは可能性であり、無限に挑戦し続けられる喜びがありましたが、肉体は若いのにジョン、チャーリーとの死別はリーナの心を成熟させます。最後の恋人ディヴィッドと共に普通の女としての人生を生き、始まりと終わりのある円弧のように終わることがベストだと判断します。

うーん、たしかに現実の世界でも金持ちほど、ありとあらゆる手を使って長生きしたがりますよね…;

映画の中ではもちろん、プラスティネーションされた遺体役は俳優さんたちが全身タイツを着て演じていますが、原作小説のヒントがなんといってもエグいので複雑な気持ちになります。受け止め方は様々ですが、永遠ってそうイイものでもないというのが、感じ取れる作品です。

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