「風の神送れよ」読書感想文あらすじ・ネタバレ・感想文書き方の例文と大ヒント
風の神送れよ
発売日:2021年10月25日頃
著者/編集:熊谷千世子, くまおり純
出版社:小峰書店
発行形態:全集・双書
ページ数:193p
ISBN:9784338308076
内容紹介:長野県南部、天竜川上流域を中心に伝わり、国の無形文化財にも指定されている「コト八日行事」。優斗たちが暮らす地区では、二日間にわたるコト八日行事のすべてが子どもたちの手にまかされ、行われるのだ。コロナ禍で行事の開催自体があやぶまれる中、はたして優斗と仲間たちは、家々にすくう疫病神を祓い、無事地区境まで送ることができるのか? さまざまな困難に立ち向かい、自らの責任を懸命に果たそうとする子どもたちの姿を鮮やかに描く。
こちらでは
2022年の「第67回 青少年読書感想文全国コンクール」小学校高学年の部(5,6年生)の課題図書「風の神送れよ」の「あらすじ・ネタバレ」と読書感想文の書き方のの大ヒントと例文をご紹介いたします。
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『風の神送れよ』あらすじ・ネタバレ・こんな人にオススメ
『風の神送れよ』読書感想文の書き方の大ヒント
『風の神送れよ』読書感想文・例文とみんなの感想
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『風の神送れよ』あらすじ・ネタバレ・こんな人にオススメ
感想文の書きやすさ ★★★
こんな人にオススメ
・地域の行事やイベント、サークルなどに参加している
・大人から期待されて複雑な気持ちを経験したことがある
・グループの班長やリーダーをやることに抵抗がある
・コロナで行事が中止になって悔しい思いをしたことがある
・どうしようもない理由で、転校や引越などしたことがある
コロナに関係のない人は、いませんのでみんないろんな思いや考えはあるでしょう。
この物語は「コト八日行事」という400年も続く伝統行事を、大変な思いや悩みを抱えながらも、子どもたちだけでそれに取り組む彼らが、ちょっぴり成長できる物語です。
「責任を果たした時、どんな気持ちなるか?」を知れるかもしれません。
【風の神送れよ 登場人物】
杉浦優斗(すぎうらゆうと)
6年生。めんどくさがり屋で逃げ癖があり、デリカシーに欠けるが思いやりのある子。
コトの神送りが嫌いで3年連続休んでいる。集団登校も地区長だったり、なにかと責任ある立場に追い込まれる。
幼なじみ——————————————-
土屋柚月(つちやゆづき)
母さん同士がママ友で5年生。しっかり者で優斗の幼馴染。お父さんが5年前に事故で亡くなっている
土屋淳之助(つちやじゅんのすけ)
柚月のおじいちゃん(68)。山で事故に遭い入院中。昔は寺社総代をやっていて、高橋さんとも知り合い
コト八日行事の仲間———————————
東谷凌(ひがしたにりょう)
今年のコト八日の頭取。中1でサッカー部でもうレギュラーで頭も顔もいいヒーロー的存在。
波留(はる)
4年生。つまらないちゃちゃを入れたり、悪さばかりする。オシャレのつもりでニワトリみたいな髪型をしている
佳奈(かな)
4年生。おとなしい子。会計の手伝いになる。
航と芽衣
3年生。コト八日初参加の新兵。航はガマン強く、芽衣はまだ甘えん坊
優斗の家族—————————————–
杉浦柊(しゅう)
3年生の悠斗の弟。コト八日初参加の新兵。マジメで時間にきっちりしていて優斗と真逆の性格
お父さん
焼酎好き。お父さんも子供時代にコト八日で頭取をしたことがあり応援してくれる
お母さん
優斗を𠮟咤激励しながら、コト八日行事の手伝いもしてくれる。
地元の大人—————————————–
白木屋さん
自治会長でコト八日の見守りをしてくれている
笹原先生
優斗の担任の先生
ナゾの転校生—————————————
小林宇希(こばやしうき)
5年生。夏休み明けに神奈川から来た転校生。栗色の長めの髪に痩せて色白で無口。なんか感じ悪い。
高橋雄三
はなれた集落で一人で住む、怖くて具合の悪そうな老人。柚月のおじいさんと知り合いで・・・。
『風の神送れよ』あらすじ・ネタバレ
一 疫病神
優斗たちが暮らす長野県南部、卯野原地区では毎年2月「コト八日」という年中行事がある。
「コトの神様」=「風の神」とも呼ばれ、病気や火事など良くないことを起こす疫病神のこと。
1日目の夕方から22時ごろまで念仏を唱えながら各家の“コトの神”を集める「コト念仏」
2日目、5時半から“コトの神”を村の外に送り出すのが「コトの神送り」
村中の疫病神を小学校3年生から中1までの子どもだけで行われるのだ。
最年長が頭取、優斗は6年なので補佐。でも来年は頭取なので憂鬱だった。
おだちんをもらえても、2月は一番寒いし夜は遅いし朝は早い。…だから優斗は3年から5年まで2日目の神送りはなぜが具合が悪くなり休み続けてきたので、家族から仮病だと責められる。
そもそも子供に丸投げの行事を「大人の陰謀だ!」と優斗は転校したいと思うほど嫌っていた。
母さんも父さんも「コトの神様おくらなかったから疫病神がとりついた」と言われたが、たしかに今年はコロナで学校行事の中止の他にも新学期にインフルにかかったり、病気やけがの多い年だった。優斗は罰かどうか?半信半疑で布団の中にもぐった。
二 忍者屋敷のおかしなやつ
集団登校日で6年の優斗は地区長。でも都会からの5年の転校生「宇希くん」がまだ来ない。
独特な雰囲気に「こういうのが都会っ子なのかな?」と見ていたら、ネコみたいに威嚇する感じ悪いヤツで、仕方なく学校に行くと彼はもう来ていた。しかも「こんな田舎で何のためにやるのさ」とまで言われてイラついた。
幼なじみで5年の柚月いわく「いつもつまらなそうだけどテストは満点、家は飲食チェーン経営のお金持ち」という。中心部の大きな忍者屋敷にお母さんと越してきたらしい。
優斗は関わらないつもりだったのに、笹原先生に適当にやった宿題やりなおしの居残りさせられて、帰りに宇希くんの家に茶封筒を届けてくれという。
忍者屋敷からは、ずんぐりした女の人が出て来て「母親は体調崩して休んでるけど、宇希が学校で元気にやってるか?」聞いてきた。とりあえずうなずいておくと安心して笑みを浮かべた。中から女の人せき込む声が聞こえた。
翌朝、宇希が昇降口のガラスケースの「コト八日行事」の写真を見ていたので説明してやると、また生意気なことを言うのでカチンときて「この土地で四百年続く神様の儀式だぞ!」というと「本当に神様がいるなら、コロナで辛い思いする人たちがいるなんて、おかしいだろ」と言い返された。
思わず「すげえな、おまえ、そんなこと考えてんの?」とほめたつもりなのに、更ににらまれた。
イライラして家に帰り母さんに宇希のことを話すと「コロナで家の商売が大変なことになって越してきたのでは?」と言う。このあたりではコロナは“よそのこと”。だけど宇希には関係しているとしたら「迷信だよな、めんどくさいだけだ」って素直に言えなかったことを後悔した。
母さんは「コト八日行事」優斗にがんばってもらいたいというが、それでみんな守られるのか?浮かぶのは宇希のつまらなそうな顔だけだ。
三 神様の視線
年明け一月十五日の小正月過ぎに、本格的なコト八日の練習が始まる。
波留は「凌さんが頭取だから安心」という凌さんはカッコよくて神々しい優斗も男ぼれする地元のヒーロだ。
凌さんが代々の頭取が行事のやり方やルールを書いた『コト念仏記録』片手にみんなの役割を決め、優斗が補佐、柚月が会計、宇希が鉦(かね)になった。
初参加の3年生柊、航、芽衣は「新兵」。4年生の佳奈は会計手伝いになった。
波留は「宇希は転校生で初参加なのに?」というと「なら、おまえやれば」宇希が言い返すので凌さんが「ここに住んでるならみんな同じだ」とシメた。
自治会長の白木屋さんは、コロナの事情が事情だけに「コロナ退散を願って、こんな時こそ必要なこと」と子供たちに向かって頭を下げた。優斗は大人に頭を下げられて複雑な気分だったけど、凌さんの「おれたちの力が試されるんだ」とか円陣を組んでスポーツ感覚の気合い入れに新鮮でどきどきした。
凌さんは優斗に「次回のためにかついでみるか?」と頭取が背負う太鼓を持たせてくれたけど、思ったより重くて自信がない。でも背負ってみて「神様の視線感じないか?」と言われるとその瞬間からゾクっと緊張した。神様って、もしかして…いる?と。
図書館で神様を調べてみると疫病神が図入りで乗ってて“やっかいごとを起こす人物や物事を、疫病神とよぶこともがある”と書かれていた。
四 はじめての神頼み
疫病神がちらついて、柊より先に学校に行くといつも早い柚月が来ていない。
波留が「柚月ちゃんのおじいさん山で一人で木を切ってて挟まれて危険な状態」という。
優斗も頭がフリーズし、気持が沈んで柴犬のフウをつれて柚月の家に向かうとちょうどおばさんの運転で柚月が帰って来た。
「まだ意識が戻らない」というが優斗は「大丈夫だって!」にもやつれた様子で「ありがと」という柚月。
柚月を力づける言葉のひとつも言えず落ち込んだ優斗にお父さんは焼酎片手に「柚月のおじいさんは、神坂田の寺社総代を務めた神様を祀ってきた人だから、今頃神様総出で守っているはずだ」という。
そして「この世には、人知をもって計ることのできない力はたしかにある。それが神様じゃないかな」と子供が多い時代に頭取に選ばれて名誉だったし、柚月おじいさんに世話になったとも言う。
父さんも神様を信じているし、今ごろ神様たちがおじいさんに力を吹き込んでくれているかもと思うと、大丈夫な気がしてきた。そして通学路の地元の神様の3か所ある道祖神におじいさんのこと願って、生まれて初めて神頼みした。
すると1週間後おじいさんが目を覚ました!と柚月が報告してくれた。優斗はあらためて民家の一件いっけんに、お堂や祠、道ばたの意思や古い桜の木ひとつひとつに神様はいるのかもしれなくて、災いから守ってくれているのかもしれないと思い、柚月のおじいさんのお礼と今までの失礼な態度をあやまって、コト八日行事をがんばります、と大声で叫んだ。
五 謎の住人
2週間後の行事にむけて練習で凌さんは感染対策にも敏感になっていたし、3年生もわかるように念仏を黒板にひらがなで書いてくれるけど、ふざけるとピシッと言う。
神送りに使う大旗と小旗作りは最低3日かかるし、持って歩くのもけっこうキツイ。ただ神送りの日は休憩するとき「頭たたき」というドッジボールのようなゲームをするのは楽しい。
それに各家にあわせた願い事の情報も集めないといけない。『おだちん』ももらうのでその家の“願い事”も言わないと気が引ける。でも今年は特別な家だけやることにしてみんなで分担して情報収集することになった。
優斗は山向こうの「もう住んでる人いないんじゃ?」と言われる地域のおばけ屋敷みたいな家をたずねた。人のいる気配がない…と思ったら突然目ばかり大きい具合悪そうなおじいさんが出て来て「おまえは泥棒か!?」とギロリとにらまれ「わたしはひとりだし、送る神もないから、ほっといてくれていい」と戸を閉められた。
優斗は不健康そうで疫病神にとりつかれてそうなのに?と凌さんにおじいさんのことを話してみると、柚月が「おじいさんの知り合いで高橋雄三さんらしい」と聞いてきて”なんでもできて頼りになるいい人だった”という。柚月は「会ってみたいな、その人に」というので2人は聞き込みと称して行くことにした。
六 幻の道祖伸
柚月はためらいなく、高橋さんの玄関を訪ねて「わたし、土屋淳之助の孫です。おじいちゃんが入院中ですが、高橋さんに会いたがってました」と臆することなく言った。
高橋さんは驚き、柚月とおじいさんがソックリだとよろこび、そして入院したことを心配した。高橋さんは奥さんが亡くなってから、人生の最後は故郷で過ごしたいと都会から帰ってきたそうだ。柚月のおじいさんとはライバルで親友だったようだ。
柚月は「神様は本当にいるんですか?神様を大切に祀れば、幸せになれるんですか?」とひと息に言った。
「ちょうど、おまえさんたちと同じくらいのとき、淳之介と一緒にいっぺんだけ、甲野山で神様に出会ったことがある」
高橋さんは柚月のおじいさんと、当時流行っていたバードウォッチングに夢中になり、獣道に入って迷ってしまった。その時、淳之介が「山の神様が守ってくれる」と2人で大声でコト申した。
ナンマイダー ナンマイダー 山の神様、こんにちコト申します。
勝手に山に入ってすみません。
もうこんな勝手はしませんから、許してください。
ぼくらをふもとに帰してください。
ナンマイダー ナンマイダー 山の神様、お願いします。
すると、黒い切れ長の目のまっ白で美しい犬が現れて、ついて来いと言うかのように甲野山の登り口に案内してくれたという。お礼を言おうとしたら、そこには犬に似た小さな道祖神があった。
「世の中は、苦しいことも思うようにならんこともいっぱいだ…それでもな、信心を持ってがんばろうと誠実に努力する人間のことは、けっして見捨てはしないと思っとる。コト八日行事は、そんな神様とふれあえる、大切な習わしだな」でもその道祖神はそもそもなくて、山の神様の化身だったようだという。
優斗は今までなんとなくコト八日をやってきたことに罰が当たるかも、と背筋がひやりとした。
高橋さんは「淳之介は信心の塊のようなやつだから、すぐ良くなるから心配ないぞ、雄三も元気だと伝えてくれ」と優しい笑顔で言った。人は見かけによらないし、神様の話を教えてもらえた。2人ははやる心で練習場に走って行った。
七 降ってわいた災難
本番の三日前「凌が部活で右足を骨折した」と、白木屋さんの顔が引きつっていた。
2番目の年長者は優斗しかいないけど400年の重みも、コロナ退散もぼくにはデカすぎる。でもギブスをした凌さんが泣きそうな目で深々と頭を下げ優斗に代わりをたのまれた。
凌さんは車で移動になるが山の道は優斗が指示出ししなきゃいけない。
不安しかない優斗は『コト八日が取りやめになれば…』とかいつもの逃げクセが出る。つい優斗は高橋さんの家に向かい、お墓の掃除をしていた高橋さんに事情を話した。
高橋さんは凌さんは悔しがっているだろうと言うが、優斗は自分の不安を話すとにらみつつ「コト八日行事の由来」を話し出した。
高橋家は昔はここいらの地主でお墓の石碑は『高橋家之墓』の横に墓誌という7代前からのご先祖様の名前があったが、子供の名前もあった。
昔はまじない的なもので流行病の神の侵入を防ごうとしたのも「神に祈るしかなすすべがなかったから」で世界的に蔓延したスペイン風邪は高橋さんのおじいさんを産んだ母親が死んでしまったり、一家全員死んでしまう家もあった。…コト八日行事はそんななかから人々が生みだしてきたものだ、という。
その時、うしろに菊の花束を持った宇希が現れた。宇希は高橋さんの孫だったのだ。
心労で体調を崩した娘さんと孫の宇希が静養で越してきて、高橋さんは宇希のお父さんとの仕事が終わると一人この家に住み、高橋さんの妹が娘の様子を見てくれているという。宇希は「聞かれなかったから」話さなかったし、疲れたから今日は練習休むというので力づくで連れて行った。
夜、優斗は『スペイン風邪』をパソコンで調べてみて、父さんにも知ってるか聞くと分厚い本の小さな新聞記事を見せてくれた。そこには「一家全員死亡」とか「葬儀をしないで穴に埋めて、地中で息を吹き返す人もいた」とホラー映画さながらの内容にクラクラした。
生きようとする必死な思いから、コト八日行事は生まれてきた昔の人々の姿が今に重なっていく。
父さんは焼酎を飲みながら、凌さんの件と「優斗はやりたくないか?」気持をたずねた。
コト八日行事に大人たちの間でも“子どもたちの命の心配”もしたが“こんなときだからこそ必要”と迷いがあった。だから白木屋さんたちが親たちに許しをもらいに歩いたという。
「優斗にとっては降ってわいた災難でも、逃げたらだめだ、踏みとどまってがんばれば、必ず道は見えてくる…仲間を信じて全力でやれば、まわりの景色もちがって見えるときがくる」
優斗はぼくらの力でコトの神もコロナも、絶対撤退させなくちゃ、と強く思った。
八 こんにちコト申します
コト八日当日。
ビニールでおおったショイコを背負った優斗。左に柚月、右に鉦を持った宇希。寒さか緊張か?震えも止まらない。
凌さんは「ウラを見てしまったら、コトの神にとりつかれる。絶対ウラを見てはいけない」場所について厳しく言う。でも脚の痛みを我慢しているのがわかった。
4時にスタートし「こんにちコト申します」と念仏を唱え集落のすべてをまわり、願い事がある家はそれを唱え、コトの神が憑く幣束(へいそく)という紙を集めて、2日目にコトの神をほうげん坂の先の谷に捨てる。この重要任務を子どもだけで寒さをこらえてやるのだ。
最初の願い事をうけた80歳ひとり暮らしの篠原さん家では「お年寄りが長生きいたしますよう。こんにちコト申します」と神棚に向けて唱えた。終わると「おだちん」として2千円頂いた。
みぞれが降って来たころ宇希がウラを向いたのに悪びれず「決まり決まりっておかしいんじゃないの。ウラを向くたびに疫病神が憑いてたらみんなとっくに病気になっている」と怒っている。理由はどうあれウラを向いたら後ろ向きのまま坂の上まで引き返さないといけないし、険悪な雰囲気になった。
でも忍者屋敷に行くと凌さんが予定外に「商売繫盛、またコロナ前の元の生活に戻りますように。家族みんな一緒に、元気で暮らせますように」口上を言った。宇希は目を丸くし、宇希のお母さんはエプロンの端を目に当て何度も頭を下げた。
センターに戻り着替えして、お母さんたちが作ったごちそうを食べても柊は寒さで震えていて、宇希は幣束をじっと見ていた。
残り1件になり、芽衣が靴ずれの豆がつぶれて皮がむけ「もう歩けない」と泣き出した。緊張の糸が解けてしまった波留や弱音を吐かない航も半べそをかき「優ちゃん、何か言って!頭取代理でしょ!」と柚月が叫んだ。
頭がまっ白だったけど、突然父さんに言われた言葉、凌さんからまかされた責任を裏切っちゃいけないと思い出した。
「よく見ろ、地域の人たちからたくされたコトの神を、ちゃんとほうげん坂まで送らないと、それがぼくらの役目なんだから。宇野原から疫病神もコロナも全部集めて、ぼくたちが捨てるんだ。」
優斗自身胸が熱くなり、芽衣たちも気持ちを持ち直し、柊は芽衣の水筒を持つという。でも靴下が血だらけの芽衣はやはり辛そうで「バンソウコウ持ってくれば良かった」と言うと、宇希が「じいちゃんが『役に立つから』と持たされた」と言ってドロップの空き缶に入れた湿布や包帯、バンソウコウを取り出し「ぼくじゃないから」とすまし顔で歩き出した。
最後の家を終えて、センターに帰る時はみんなつらい気持ちを忘れ、凌さん目指して走って帰った。分けたおだちんはお年玉より多くて、夜の景色がちがって見えて明日の五時半集合にも気持ちが弾んだ。
九 風の神送り
今年も柊にすごい剣幕で起こされたが、優斗は責任感で勢いよく起きた。母さんが作ってくれた大きなおにぎりをほおばりながら、まだ夜明けない空の下、センターに向かった。
今日は3,4年生が大幡と小旗をかつぎ、次に太鼓、鉦の順に列になり“送り神の歌”を歌いながら幣束を集め“ほうげん坂”の先の谷に幣束を捨てに行く。
休憩の時は「頭たたき」をして、地区の真ん中の雑貨店で凌さんと合流し一緒に出発した。
でも坂の登り口で雪が降りだし、凌さんは足場の悪い坂道を松葉杖では登れず倒れてしまった。
「なんでこんなときに怪我なんかしたんだ!」とうなり声をあげる姿に優斗も泣きそうになった。
すると宇希が「このタオル貸して」と凌さんがいつも首に巻いているトレードマークの青いタオルを木の枝に結び付け「優斗君がこれをかざして歩いてくれたら、凌さんも一緒って気がする」と応援旗みたいにパタパタ振った。「凌さんはいつでも僕らの司令塔の頭取です」に凌さんは赤い目と鼻で「あとはまかせた」と見送ってくれた。
宇野原に暮らすみんなも400年前から、病気や苦しみと戦ってきた。
でも人間は、神様を祀り、守り守られながら、知恵を出し合い助け合って生きてきた。
ぼくらはそんな人々の思いにつながっている。
誇らしいような、違う世界を漂っているような、不思議な気分だ。
コトの神を捨てる谷で念仏と歌をセットで7回唱えて、旗と幣束、太鼓と鉦のバチを捨てた。終わった。コトの神はみんな、この谷に投げ捨てた!だからもう苦しいことも辛い事もきっとなくなるんだ。
「神様、お願いします。柚月のおじいさんと、凌さんの怪我が早く治りますように!」思わず空に向かって優斗が叫びみんなポカンとしたが、柚月も「宇希君の家族が、また一緒に暮らせますように!」と叫んだ。
宇希は優斗の横に歩み寄って来て、引きつった顔で「コロナのばかやろう、早く消えてなくなっちまえ!」と顔を真っ赤にしてさけんで、「ああ、すっきりした」とにっと笑って見せた。
そこからみんなでウラを向かずに走って帰った。うしろからコトの神が手を伸ばしてくるような気配も感じる。ほうげん坂まで来ると坂の下の凌さんが見えて、コトの神たちもこれ以上来れなくてじたんだ踏んでいる気がした。
みんなで叫びながら振り返らずにセンターまで走り帰り、みんな晴れやかな気分になった。「コトの神送れば、コロナ前の元の生活、きっと戻ってくるよな」と宇希は力強く言ったが「できれば、ここで家族で暮らせたらなぁ」と照れながら言った。
凌さんは「来年は優斗、本物の頭取だな。っていうか、もうりっぱな頭取だ」と言ってくれるが、一人だったら絶対無理だったというと「それはだれでも同じさ、でもな、何でもはじめからできる奴なんて、いないんじゃないか?」と吹っ切れたみたいに、いつものあこがれの凌さんの笑顔だった。ぼくも凌さんみたい、いてくれるだけで安心する、そんな人になりたい。
地域の厄をすべて飲みこんできたほうげん坂の林が、ザワザワ鳴った。
『風の神送れよ』読書感想文の書き方の大ヒント
・高学年の部 本文 1200字以内
(作文用紙400字×3枚)
読書感想文コンクールの入賞した子は原稿用紙3枚1200字きっちりに書きます。起承転結でつづられるなら300文字ずつなどと目安をつけると書きやすくなります。
読書感想文の書き方
発達段階(学年にふさわしい)に応じた適切な本
・課題図書もしくは同等レベルの本を選びます。過去の学年に応じた課題図書もおすすめです。
読書のよろこび、楽しみが感じとれるか
物語の内容への
・驚きや発見、感動など明るい感想
・優斗と同じ立場だった時の自分の気もちを比べる
広い視野から作品を評価しているか
・「コト八日行事」という伝統行事の重要性
登場人物の心情や、作品の語っているものを的確にとらえているか
・優斗や子供たちの心の成長(責任感について)
・宇希の悲しさや悔しさとそれを乗り越えた気持
著者の論旨を的確にとらえているか
・子供だけで乗り越える伝統行事を絶やしてはいけない想い
事実と著者の意見とを区別してとらえているか
・伝統行事を無くさないために、どうしたらいいか?
自分の意見・感想を率直に述べているか
・自分が優斗の立場だったら、どうチャレンジするか
・「似たような経験」の自己開示 → 高得点ポイントです
自分のことばで表現しているか
・感想文をパクらない
発達段階に応じた考え方が表現されているか
・今の自分なりの気持を表現する
規定の文字数を十分に生かし、自己の思いを表現しているか
・起承転結で気持ちを書く
読書によって得た自己の変革がみられるか
・この物語から自分がどうなりたいと気付けたか?
・本を読んで何を感じ、今後にどう生かすか?
規定の文字数を十分に生かし、自己の思いを表現しているか
・文字数を計算して書く
その他
・この本を選んだきっかけ
・簡単なあらすじ
・感想、疑問点(特に面白かったところ、感情が動いたところ)
・自分の意見、似たような経験談
・本を読んでの意見(本を読んで学んだこと、自分の意見、今後の生活に生かしていく。など)
読書感想文の大ヒント~作者のねらい
文部省 伊那谷のコト八日行事
作者のあとがき
作者の熊谷千世子さんは、何気なく目にした深部近似で「コト八日行事」と出会い心ひかれました。この子たちをもっと知りたいと取材許可を得て、頭取中心にきびきびと練習に励み、本番を迎える姿にただ驚かされます。
大人たちが陰になって見守るなかで、子どもたちは話し合い、ルールーを作り、試行錯誤を重ねていく。その関りのなかで、ひとりひとりが自分の役割を果たし、課せられた責任の大きさに気付き、地域の一員としての自覚を育てて行くことになるのです。やがて迎えた当日、黙々と行事をこなしていく子どもたちは実にたくましく、その一心に取り組む姿に胸が熱くなりました。・・・時代を超えるこの行事の価値と意味を、そしてなにより、子供たちが行事に関わる賢明な姿を多くの人々に知ってもらいたい、そう強く願ったのです。
小学校3年生から中1までの子供たちだけに任されるのは、「重大責任と同時に大人に任され信頼される誇らしさ」もあるはずです。
ところがコロナになり2021年の行事は子どもの命を守るため、行事自体が中止になり、悔しい思いを抱いた子もいたかもしれません。だから「物語のなかだけでも伸びのび羽ばたかせたかった」と熊谷さんは語ります。
100年前のスペイン風邪で日本でも大きな被害が出た時代、ウィルスの存在すら知らない当時は神にすがり、生きる道を模索する以外になす術はなかった事でしょう。まさに今の私たちも、コロナ収束に向けて神にも祈りたい気持ちは同じかもしれません。…400年の歴史の中で行事ができない年月が続いたと史実も記されています。さらに今現在は、過疎化や人口減少などの問題もあり、行事として現在の形を伝承することは難しくなってきているもの事実です。しかしながら、人々は直面する様々な問題をたくましく乗り越え、再び行事を今につなげて来ているのです
熊谷さんは願いをこめて『この素晴らしい行事が伝承されていくことでしょう』とあります。
「コト八日行事」は文化庁の平成二六年度・変容の危機にある無形の民俗文化財の記録にも記されています。
・子供だけで行う神事が400年も続いているのがスゴイ
・子供たちの責任感と成長に感動
・コロナ禍において、行事が中止されるのが残念
・人間は無力だけど、祈るなどなんとかして問題を乗り越えるたくましさがある
・この伝統行事が続きますように
と、伝えたいのだと思います。課題図書として多くの方に「コト八日行事」の存在が広く知れ渡るといいと思いました。
『風の神送れよ』読書感想文・例文とみんなの感想
読書感想文・例文
「困った時の神頼み」と言いますが、何かにつけて人は神社やスピリチュアルな場所に行って気軽に神頼みしてしまいます。
ですがこの『風の神送れよ』では、400年も昔から、思春期にも満たない子どもに真冬の厄払い行事を完全に任せるという過酷な伝統行事を行い、それにより子供たちも成長できるという物語です。
だからと言っての伊那谷の地域の神様は優しくなどありません。
「…いいか、相手は神様だから、ごめんなさい許してくださいなんて言っても、笑ってすましてくれないからな」頭取の凌の言う神は容赦しない厳しい神で礼節を忘れない事をメンバーの子供たちに指導します。高橋さんは道祖神に真剣に謝り助けられ、疫病神に命が脅かされてきた歴史があります。
神様は祈りや願いなどはそう簡単に叶えてくれないと思います。ただ人は神様にすがりたい、寄り添ってもらいたいだけなのかもしれません。それでも昔から子どもだけで一番寒い季節の深夜までと明け方から「コト八日行事」を行うのは、もしかして生贄的要素や口減らしの意味もあったのかも?と思いました。
なぜなら人間には「祈ることしか」できなかったからです。
でも集落の期待と祈りは、純粋な子どもたちが成し遂げた時、通過儀礼となり「1つ大人になれた」という晴れやかな気持となって自信を身に着けることができます。それは高橋さんの言うように「人によっちゃ名誉なことも、災難と感じることもあるわなあ」というように、儀式だけでなくそれぞれが乗り越えるべき壁を越えることもできるからです。
優斗にとって「コト八日行事」はそもそも辛い苦行で、頭取は重圧でしたが責任感を学ぶための試練だったのかもしれません。
凌には名誉職の頭取を果たせない事はプライドが傷つくことで、無力感を乗り越え、人に託すことを学ぶのが試練。そして宇希にはコロナにより、やり場のないコロナへの恨みを手放し、変わってしまった人生を前向きに受け入れるのが試練だったのかもしれません。
だからといって400年も続く行事を体験した地域の大人が、子供に丸投げしているわけではないと思います。なぜならばこの地域の大人たちもこれで成長した経験があるからです。
子どもを成長させるのは責任感を持たせる教育だと思います。ですが同時に大人も責任を取る覚悟で「信頼感」「期待」という課題を子どもに与えつつ、肝心なところは高橋さんの「ドロップの缶」のように見守る。それが伊那谷の教育なのだと思いました。
今度「成人」は18歳からになりましたが、今の時代こそ年代を超越して1つの目標に向かって何かを成し遂げるこういう行事が日本にも世界にも必要だと強く思いました。
また、最後に『うしろからコトの神が手を伸ばしてくるような気配』とか『地域の厄をすべて飲みこんできたほうげん坂の林が、ザワザワ鳴った。』という表現に作者から「いつでも油断してはいけない」と警告されているような気がしました。凌は「前だけ見るんだ、うしろは見ない」との言葉は、こんな時代になってしまいみんないろんなものを無くし変わってしまったけど、やはり人間の何とか生きる力で乗り越えていかなければいけない、ただし注意を怠るなということかもしれません。そして大人はこの行事のように子供の力をもっと信じて、子ども扱いしすぎないほうがいいと思いました。私たちの社会を守るのは引き継がれてきた大切な思いを守りつつ、未来を踏み出す力だと思います。【文字数1406字】
伊那谷の民俗行事「コト八日」を取り上げた『風の神送れよ』(熊谷千世子さん・作、くまおり純さん・絵、小峰書店)。行事に乗り気ではない小5の優が突然リーダー役を引き受けることに。最初はいやがった優も集落の人達と先祖の願いを知り、変わっていく。過去・現在・未来、変わらない人々の想い。
面倒くさがりの優斗は内心気が進まない「コト八日」コロナ感染拡大下でもあり、大変だ。そこに頼りの凌先輩が大けがをし、優斗が頭取になる。厳しい冬の自然の中、それぞれ悩みや事情を抱えた子どもたちだが、励まし合い懸命に責任を果たそうと立ち向かう。やる気のなかった優斗も変わり頭取として子ども達をまとめ、遂に行事をやり遂げた。
2021年現実には、この行事は子どもたちを守るために断念された。「子供たちはいったいどんな思いだったろう」作者は「せめて物語のなかだけでもと伸び伸びと羽ばたかせた」と語る。また「人々は直面する様々な問題を乗り越え、行事を今につなげてきた」「この素晴らしい行事は伝承されていく事であろう」と願いを添えている
信州伊那谷地方の伝統行事の一つ、コト八日行事を題材にしたものがたり。子どもたちが執り行い、疫病退散を含む安全を願う行事。これによって、子どもたちが地域の一員としての役割を担い、成長していく。そんなものがたりが、登場人物のこころの変化や、お互いの関係性の変化や、大人たちとの関りのなかで綴られている。同じ地域社会の一員としての子どもたちと、それを見守り育む風土は、大切にしたい。
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入賞作品集(過去の入賞作品まとめ一覧)
読書感想文は正解があります
読書感想文は、まじめで真剣に本のテーマを考えている「とても正しい優等生な意見」が良い評価をもらえます。
「読書したうえでの学習効果が感じられるか?」と先生方は判断するからです。
第67回上位入賞者一覧
内閣総理大臣賞 <小学校高学年の部>
◆泉奏花 千葉県 国府台女子学院小学部5年
「人生をより豊かにするために」・・・「15歳の日本語上達法」(講談社)より
文部科学大臣賞<小学校高学年の部>
◆北村優季 奈良県 近畿大付属小6年
「幸せに生きることと心の在り方」・・・「はてしない物語 上・下」(岩波書店)より
読書感想文の書き方がよくわからない人や、むずかしい本の時は、前年の課題図書の読書感想文全国コンクールの入賞作品を参考にすると書き方のコツが身につきます。